2019年 07月 28日
「Girl/ガール」
「Girl」2018 ベルギー/オランダ
ベルギーに住む15歳のララの夢はバレリーナになること。しかしララはトランスジェンダーで、自分の男の身体に強いコンプレックスを抱いている。理解ある父に支えられ難関のバレエ学校への入学が決まり、待望のホルモン療法も始まったが、薬の成果が感じられなくてララは焦りを募らせる…
ララを演じるヴィクトール・ポルスターの生顔写真を見てちょっと驚き。まぁ彼はGirlではなくBoyなのだから当然なのだけど…。
映画の中で幼い弟ミロに接する姿はGirそのもの。光り輝くラストシーンの姿は妖艶な雰囲気すら漂わせていて、プロのメイクってスゴく変わるものだと納得する。エンディング前のあの衝撃的なシーンには鳥肌がたった。
学校ではララがトランスジェンダーということが知られているがバレエ・スクールではそうではない。ララはGirlとしてレッスンを受けているのだ。
学校では同級の女の子からの嫌がらせを受け、バレエ・スクールでは仲間の間で囁かれる噂や嫉妬に苦しめられている。しかし絶対にバレリーナになるという夢のため、足を血だらけにしてレッスンするララの姿は感動を呼ぶ。
ララのために全力でサポートするシングル・ファーザーの父が、とてつもなく理解があって感心しきりだった。
バレエ・ダンサーでありながら映画初出演で演技もできる新星ヴィクトール・ポルスターが素晴らしい!
長編デビューとなるベルギーの新鋭ルーカス・ドン監督が第71回カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を受賞。ルーカス・ドンの今後に非常に期待したい。
ララにヴィクトール・ポルスター。
マティアスに「エタニティ 永遠の花たちへ/2016」のアリエ・ワルトアルテ。
ミロにオリヴィエ・ボダール。
ルイスにタイメン・ホーファーツ。
ドクター・ナートにカテライネ・ダーメン。
ドクター・パスカルにヴァレンタイン・ダーネンス。
クリスティーヌにマガリ・エラリ。
ロイスにアリス・ドゥ・ブロックヴィール。
アランにアラン・オノレ。
監督、脚本はルーカス・ドン。
新宿武蔵野館にて
2019年 07月 25日
「サマーフィーリング」
「This Summer Feeling」2015 フランス/ドイツ
ベルリンに暮らすライターのローレンスとアーティストのサシャは恋人同士。夏真っ盛りのある日、サシャは仕事から帰る途中道で突然倒れ、30歳の若さで亡くなってしまう…
サシャの死により出会うことになったローレンスとゾエ。ローレンスは恋人を亡くし、ゾエは姉を亡くしたのだ。互いに喪失感に苛まれる二人が度々会う機会が巡ってくる。
ローレンスはサシャを思い出させる風貌のゾエに会うのが辛かったのだろうか?
ローレンスは姉ジューンととても仲が良い。それは早くに亡くなった両親に代わって面倒を見てくれたから。
ゾエには夫ダヴィドと一人息子がいるがダヴィドとは別居中。
ローレンスとゾエを軸に、ゾエのフランス人の両親や息子、そしてローレンスの姉ジューンやアメリカの友人トマスの姿が描かれる。
ゾエの両親が暮らすアヌシー湖畔の景色が美しい。
本作は”愛と再生”の物語。ラストでローレンスとゾエの未来が見え、穏やかで優しい余韻を残すエンディングが素敵だった。
そして「アマンダと僕」のエンディングを思い起こす。
ジュディット・シュムラのイメージが違っている。「女の一生/2016」の1年前の作品なのだけど、スゴく若く見える。それは時代物と現代物の違いでそう感じるのかも知れない。
繊細な雰囲気を醸しだすアンデルシュ・ダニエルセン・リーはノルウェー人。
クリステン・スチュワートの「パーソナル・ショッパー」やヴァンサン・ランドンの「ロダン カミーユと永遠のアトリエ/2017」で見ているがどうも記憶に残っていない。でも本作で確実に記憶に残った。
この映画を鑑賞することになったのはひとえに「アマンダと僕」の監督作品だから。シアターもきっと便乗上映したに違いない。
渋谷にはミニシアター(ここ10年位の間に閉鎖されたものも多数)がたくさんあるが、私的に究極のミニシアターと思えるのがシアターイメージフォーラム。久しぶりに見に行くことになったこの映画館もとうとうNetでチケットが買えるようになった。
たまたま鑑賞した月曜日は割引デーということもありだが、上映作品によっては数人の時もあるこちらの映画館も「アマンダと僕」を鑑賞した観客が集まった感じで賑わっていた。
ローレンスに「パーソナル・ショッパー/2016」「ロダン カミーユと永遠のアトリエ/2017」のアンデルシュ・ダニエルセン・リー。
ゾエに「 セラヴィ!/2017」のジュディット・シュムラ。
アデレードに「ぼくを葬る/2005」のマリー・リヴィエール。
ウラジミールに「タイピスト!/2012」のフェオドール・アトキン。
サシャにステファニー・デール。
ダヴィドに「若き人妻の秘密/2011」「パーフェクトマン 完全犯罪/2015」のティボー・ヴァンソン。
ジューンにラナ・クーパー。
トマスにジョシュア・サフディ。
監督、脚本は「アマンダと僕/2018」のミカエル・アース。
シアターイメージフォーラムにて(7/26迄)
2019年 07月 23日
「ペトラは静かに対峙する」
「Petra」2018 スペイン/フランス/デンマーク
スペインのカタルーニャ地方ジローナ。ある日、彫刻家であり資産家ジャウメのアトリエにペトラと名のる女性がやって来る。彼女はジャウメの妻マリサに”しばらくの間ジャウメとここで作品制作をする”と告げるが、ペトラの本当の目的はジャウメが実の父親かどうか確かめることだった…
ペトラはマリサやジャウメの息子ルカス、そして一家の家政婦テレサたちと親交を深めていく。
映画解説に”逃れられない悲劇の連鎖”とあるように、まるで”死”がテーマかと思えるくらい次々と人が亡くなっていく。でもラストで未来が見えてほっとした。
”人間の闇や業をえぐる怪作”とも書かれているが、そのものズバリの一作。
ジャウメを演じるジョアン・ボテイは本作が初演技ながらジャウメを怪演していてスゴい。バルバラ・レニーもヨーロッパ映画賞最優秀女優賞にノミネートされただけあってペトラを好演している。
ドラマは時系列に描かれていなくて少々ややこしかった。時を経ても俳優たちの容姿が変化しないからかも知れない。
ダークなスペイン映画は結構強烈なものがある。本作は心に潜むダークな世界を描いていて、見ていて少々気持ちが重くなった。
邦題につけられた”対峙する”って言葉は普段あまり使わない気がする。普通”直面する”が多く使われると思うが、本作を語るにあたっては”対峙する”がマッチしている。ヒドい邦題が多い中これはイケてる。
ペトラに「誰もがそれを知っている/2018」のバルバラ・レニー。
ルカスに「愛を綴る女/2016」のアレックス・ブレンデミュール。
ジャウメにジョアン・ボテイ。
マリサに「皇帝と公爵/2012」のマリサ・パレデス。
テレサにカルメ・プラ。
ペトラの母フリアにペトラ・マルティネス。
監督、脚本はハイメ・ロサレス。
新宿武蔵野館にて(7/26迄)
2019年 07月 22日
「パピヨン」
「Papillon」2017 チェコ/スペイン/USA
”1931年、パリ。胸に彫られた蝶の刺青から“パピヨン”と呼ばれた男は、身に覚えのない殺人の罪で終身刑を言い渡され、フランス領ギアナにある史上最悪の流刑地“悪魔(デビルズ)島”に送られる。”
ちょっと気になるチャーリー・ハナムの出演と、スティーヴ・マックィーン&ダスティン・ホフマン映画のリメイクということで気になりポイントで鑑賞。もと映画は見ているけどほとんど記憶に残っていない。そして本作かなり見応えあった。スキニーなチャーリーはヒース・レジャーに似てる!
ラミ・マレックは「Bond 25/2020」でワル役を演じるらしい。公開が楽しみ!
オープニングでパピヨンと恋人ネネットのエピソードが描かれる。もと映画にこのようなシーンがあったのだろうか?何となくなかったような気もする。機会があればスティーヴ・マックィーン&ダスティン・ホフマン版を今一度見てみたい。
少々ネタバレ…
揺るがない男の友情ドラマのラスト…ルイ・ドガは島に留まることを選ぶが、パピヨンは無実の罪を晴らすため海に飛び込む。何ともはや、パピヨンという男はマジで不屈の精神の持ち主。そういえばマックィーンが海に飛び込むシーンだけ記憶にある。あのシーンは「パピヨン」の最高の見せ場だから…。
チャーリー&ラミはナイスキャスティング。
パピヨンに「キング・アーサー/2017」のチャーリー・ハナム。
ルイ・ドガに「セインツ -約束の果て/2013」「ボヘミアン・ラプソディ/2018」のラミ・マレック。
ネネットに「おとなの恋には嘘がある/2013」のイヴ・ヒューソン。
セリエに「ヒトラーの忘れもの/2015」のローランド・ムーラー。
刺青の男に「ブレイブハート/1995」のトミー・フラナガン。
刑務所長に「ドラゴン・タトゥーの女/2011」のヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン。
監督はマイケル・ノアー。
TOHOシネマズシャンテにて(既に上映終了/シネマート新宿で期間、時間限定上映中)
2019年 07月 21日
「アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲」
「Iron Sky 2」2019 フィンランド/ドイツ/ベルギー
人類は月面ナチスとの戦いに勝利したが、核戦争の勃発で地球は荒廃。わずかの人々が地球を脱出して月面基地で生き延びていた。しかしエネルギーも尽き果て今や人類滅亡の危機を迎えようとしている...
前作同様スター・ウォーズがかなり入っている。ロシア人サーシャが乗ってきたのはハン・ソロ&チューバッカのミレニアム・ファルコンにそっくり。そして今回はジュラシックパークが入って恐竜との戦い勃発!
秘密結社ヴリル協会のメンバーは大統領&アドルフ・ヒトラーを筆頭にプーチン、ローマ法皇、アミン、キム・ジョンウンetc.そして時代がめちゃくちゃでマーガレット・サッチャーにビン・ラーディン、スターリンに混ざって今注目の人マーク・ザッカーバーグまで揃うあの場所は正にダ・ヴィンチの”最後の晩餐”。
教会で説教するのはスティーブ・ジョブズの子孫…と相変わらずむちゃくちゃ。
ワシントンとレナーテの娘の名前がオビって…オビ=ワン・ケノービからきているに違いない。
前作が猛烈に面白かったので本作も楽しみにしていた。前作はミニシアターでの公開だったが、今回はなんとシネコンで上映。でも思ったより入っていなかった。
おバカシーン満載の「Iron Sky1」にはかなわなかった。その代わりCGがスゴかった。馬の代わりに恐竜を使うシーンは大いに笑える。そしてウド・キア頑張ってる。
オビに「素敵なウソの恋まじない/2015」のララ・ロッシ。
サーシャにウラジミール・ブルラコフ。
マルコムにキット・デイル。
レナーテ・リヒターに「アイアン・スカイ」のユリア・ディーツェ。
ドナルドにトム・グリーン。
ウォルフガング・コーツフライシュ/アドルフ・ヒトラーに「アイアン・スカイ」「アメリカン・アニマルズ/2018」のウド・キア。
大統領に「アイアン・スカイ」のステファニー・ポール。
監督、脚本は「アイアン・スカイ/2012」のティモ・ヴオレンソラ。
TOHOシネマズ日比谷にて