カテゴリ:ドイツ( 68 )

「帰ってきたヒトラー」

「Er ist wieder da」…aka「Look Who's Back」2015 ドイツ
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1945年に自殺したはずのアドルフ・ヒトラーが2014年のベルリンの街に現れる。キオスクの店主からヒトラーそっくりの人物がいるという話を聞いたファビアン・ザヴァツキは首を言い渡されたばかりのTV番組のフリーランスのディレクター。ザヴァツキは元上司であるTVディレクター、クリストフ・ゼンゼンブリンクを訪ね、アドルフ・ヒトラーのそっくりさんを物まね芸人として売り出そうと持ちかける...

アドルフ・ヒトラーにオリヴァー・マスッチ。
ファビアン・ザヴァツキにファビアン・ブッシュ。
クリストフ・ゼンゼンブリンクにクリストフ・マリア・ヘルプスト。
カッチャ・ベリーニにカッチャ・リーマン。
クロマイヤー嬢にフランツィスカ・ヴルフ。
監督、脚本はダーヴィト・ヴネント。

風刺の効いたブラック・コメディはティムール・ヴェルメシュが2012年に発表した風刺小説で、ドイツではベストセラーになったそう。

TVに物まね芸人として登場したアドルフ・ヒトラーのそっくりさんは瞬く間に視聴者を虜にしてしまう。
ドイツの現首相メルケルをデブのおばさん呼ばわりしたり、若者は役立たずばかりだ!と言い放ち、自らのプロパガンダを力説するヒトラーのそっくりさん。しかし彼を一目見ようとブランデンブルク門には人だかりができる。そう彼の人気はうなぎ登りに上昇していく!

TV局に勤めるクロマイヤー嬢の祖母がユダヤ人で、彼女以外の家族は全てナチスによって虐殺されていた。そんな彼女はヒトラーを一目見て、“彼は物まね芸人なんかじゃない!”と激怒するシーンがあり興味深い。

ファビアン・ザヴァツキは1945年に自殺したヒトラーが、正にその場所から現れたことを知り、2014年のベルリンの街に本当にタイムスリップしたと確信する。しかし誰も彼の話を信じず精神を病む病院に隔離されてしまう、あのオチは強烈だった。
相反してヒトラーを利用して大もうけに成功した元TV製作会社副社長カッチャ・ベリーニが、ヒトラーと共にオープンカーに乗ってベルリンの壁の側を悠然と走るラスト・シーンは圧倒的。

こんな映画作って良いのか?と思ったりもしたが、ヒトラーをちゃかした「わが教え子、ヒトラー/2007」というブラック・コメディもあるくらいだから、ドイツ人の懐の深さには脱帽する。
アドルフ・ヒトラーを演じた俳優オリヴァー・マスッチの素顔はヒトラーに似てないらしいが、身振りや話し方はかなりイケてる。

TOHOシネマズ・シャンテにて
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by margot2005 | 2016-07-14 01:02 | ドイツ | Trackback(3) | Comments(2)

「君がくれたグッドライフ」

「Hin und weg」…aka「Tour de Force」2014 ドイツ
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ALS(筋萎縮性側索硬化症)を宣告された男性が、仲間と共に自転車でベルギーを目指すロード・ムービー。

ハンネスに「ヴィンセントは海へ行きたい/2010」のフロリアン・デヴィッド・フィッツ。
キキにユリア・コーシッツ。
ミヒャエルに「THE WAVE ウェイヴ/2008」「ドッペルゲンガー 凍てつく分/2014」のユルゲン・フォーゲル。
フィンに「バーダー・マインホフ 理想の果てに/2008」「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~」「詩人、愛の告白/2012」のフォルカー・ブルッフ。
ドミに「ヴィンセントは海へ行きたい」のヨハネス・アルマイヤー。
マライケにヴィクトリア・マイヤー。
ザビーネに「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~/2010」「バチカンで逢いましょう/2012」のミリアム・シュタイン。
イレーネにハンネローレ・エルスナー。
監督はクリスティアン・ツバート。

フランクフルトに住むハンネスとキキ夫婦は、仲間との毎年恒例の自転車旅行の行き先をベルギーに決めるが、仲間たちは見所のないベルギーに不満を漏らす。しかし夫婦がベルギーを選んだのには重大なる目的があった。
ハンネスとキキ、弟のフィンに友人のミヒャエル、そしてドミとマライケ夫婦が集合し自転車の旅は始まるのだった。

旅の途中ハンネスの実家に寄ることになる。夕食後、母親のイレーネも加わり、ハンネスは自らがALSに冒されていていることを告白する。実はハンネスの父親もALSで亡くなっていた。そして、その時の家族の苦労を知っているからこそ、介護を受ける前に尊厳死を選んだと宣言する。やがてフィンは呆然となって席を立ち、友人たちもショックで言葉を失ってしまう。

告白の翌朝、母親の車でベルギーへ向かうと告げる間もなく、仲間は自転車に乗って出かける準備をしていた。しかしフィンの姿が見えずハンネスは気がかりでならない。やがて追いついてくる姿を見て彼の胸に熱いものがよぎる。
旅の途中ミヒャエルが偶然出会ったザビーネを仲間に加える辺りはドイツ人(ヨーロッパ人)らしい。さすがに最終目的地までは行かなかったけど...。

ベネディクト・カンバーバッチの「僕が星になるまえに/2010」と、フランス映画「母の身終い/2012」を合わせたかのようなドラマは、見終わってやはり“尊厳死”について考えさせられた。
「母の身終い」は尊厳死を問う辛口ドラマだったが、本作は和やかなシーンが多く描かれている。あのように愛する人に囲まれて死んで行く人は幸せに違いない。
最後の、最後に“こんなことには耐えられない!”と言う妻のキキ。そして尊厳死を選んだハンネスの“自分はまだ36歳なのに…”という台詞が胸に迫る。

テーマは重くて苦しいが、バックに流れる音楽が賑やかで、仲間がふざけるシーンもいっぱいあって悲しいドラマがちょっと和らぐようにも思えた。

ハンネスを演じたフロリアン・デヴィッド・フィッツはwowowで見た「ヴィンセントは海へ行きたい」でも病気の役だった。精神的な病ではあったが…その時にちょっと気になったドイツ人俳優。
ミヒャエル役のユルゲン・フォーゲルがいいな。

ヒューマントラストシネマズ有楽町にて
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by margot2005 | 2016-06-07 00:25 | ドイツ | Trackback(1) | Comments(0)

「消えた声が、その名を呼ぶ」

「The Cut」2014 ドイツ/フランス/イタリア/ロシア/ポーランド/カナダ/トルコ/ヨルダン
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1915年オスマン・トルコのマルディン。アルメニア人の鍛冶職人ナザレットは美しい妻ラケルと可愛い双子の娘たちと愛に満ちあふれた日々を送っている。キリスト教徒である彼は教会で祈りを捧げる善き人。しかしある夜、いきなり押し掛けてきた憲兵に、同居していた兄弟と一緒に強制連行されてしまう。
以後ナザレットは強制連行された男たちと共に灼熱の砂漠の中、毎日奴隷のように働かされる。ある日、ナザレットはアルメニア人の老人、女性、そして子供たちが疲れ果てた姿で列をなし歩く姿を目の当たりにする。ぐずぐずする者に容赦なく馬上からムチをふるう憲兵。彼らはどこへ向かっているのか?行き先には何が待ち受けているのだろうか?と自らも不安になる。やがてナザレットたちは手足を縄でつながれ行進させられ行き着いた所は谷底だった。そしてアルメニア人の男たちに処刑が言い渡される...

ナザレット・マヌギアンに「予言者/2009」「第九軍団のワシ/2010」「ある過去の行方/2013」「サンバ/2014」のタハール・ラヒム。
ナザレットの妻ラケルにヒンディ・ザーラ。
ナザレットの親友クリコルに「007/カジノ・ロワイヤル/2006」「WEAPONS/シークレット・ディフェンス/2008」「ゼロ・ダーク・サーティ/2012」のシモン・アブカリアン。
ナザレットを助ける石鹸工場のオーナー、オマル・ナスレディンに「シリアの花嫁/2004」「ミュンヘン/2005」のマクラム・フーリ。
ナザレットのアメリカの親戚ナカシアンに「96時間/リベンジ/2012」「エクソダス:神と王/2014」のケヴォルク・マリキャン。
ナカシアン夫人に「アララトの聖母/2002」のアルシネ・カンジアン。
孤児院院長に「未来を生きる君たちへ/2010」「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮/2012」「愛さえあれば/2012」「ピエロがお前を嘲笑う/2014」のトリーヌ・ディルホム。
縫製工場のピーター・エデルマンに「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~/2010」「ガーディアン/2012」のモーリッツ・ブライブトロイ。
監督、脚本、製作は「太陽に恋して/2000」「愛より強く/2004」「そして、私たちは愛に帰る/2007」「ニューヨーク、アイラヴユー/2008」「ソウル・キッチン(SOUL KITCHEN)/2009」のファティ・アキン。

ファティ・アキン監督、タハール・ラヒム主演で楽しみにしていた一作。
鑑賞したのは昨年12月末。今年一番のレビューにしたかった一作でもある。
本作を見てすぐにイタリア映画祭で見た「ひばり農園/2007」を思い出した。第一次世界大戦下のトルコに住むアルメニア人家族を描くことで始まるドラマは「ひばり農園」と全く同じ。しかし本作はトルコにおけるアルメニア人虐殺が本筋ではなく、一人のアルメニア人の家族探しの旅が大きなテーマとなっていて、トルコの砂漠からレバノン、キューバ、フロリダ、そしてノースダコタへと続く主人公の過酷な旅のエンディングに感動する。
ドラマの中、娘探しをするナザレットがチャーリー・チャプリンのサイレント映画「The Kid/キッド/1921」を見て涙を流すシーンにも心打たれた。
「そして、私たちは愛に帰る」は“愛と死”をテーマに描いた素晴らしいヒューマン・ドラマだったが、本作でもやはり“愛と死”が描かれる。
ファティ・アキンって「ソウル・キッチン(SOUL KITCHEN)」のようなふざけた映画を作るかと思えば、「そして、私たちは愛に帰る」や本作のような超真面目な映画も作る...やっぱり彼は鬼才なのか?!

ナザレットを演じるタハール・ラヒムはほぼ全編に出演し大熱演している。
フランス映画祭2010で見た「予言者」の主人公マリックの面影はもはやなく、多種多様な役柄が似合う俳優だ。wowowで見たジル・ルルーシュと共演のサスペンス「ジブラルタルの罠/2013」ではフランス税関の捜査官役でとても似合っていたのを思い出す。「サンバ」はもちろん最高だったし、タハールは素晴らしいフランス人俳優。
レア・セドゥと共演のロマンス・ドラマ「グランド・セントラル/2013」が見てみたい。

モーリッツ・ブライブトロイは「ひばり農園」でトルコ軍兵士役で出演している。クレジットにしっかりと入っているモーリッツの出演はワンシーンのみ、それもロング・ショットで…。トリーヌ・ディルホムの出演も少ない。
エンドクレジットでファティ・アキン監督が敬愛するマーティン・スコセッシ監督に本作を捧げている。
邦題はかなり陳腐。原タイトル「The Cut」は主人公が鍛冶職人ということもあり意味深い。

角川シネマ有楽町にて
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by margot2005 | 2016-01-07 23:00 | ドイツ | Trackback(5) | Comments(0)

「23年の沈黙」

「Das letzte Schweigen」…aka「The Sielende」2010 ドイツ
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ドイツの田舎町。ある日、13歳の少女が疾走し、後に死体となって発見されるが事件は迷宮入りしてしまう。そして23年後、以前と全く同じ麦畑で一人の少女が疾走する事件が起きる…

ピアに「ある愛の風景/2004」「未来を生きる君たちへ/2010」「真夜中のゆりかご/2014」のウルリク・トムセン。
ティモに「es [エス]/2002」「SOUL KITCHENソウル・キッチン/2009」「ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀/2001」「ピエロがお前を嘲笑う/2014」のヴォータン・ヴィルケ・メーリング。
エレナに「グッバイ、レーニン!/2003」「陽だまりハウスでマラソンを/2013」のカトリーン・ザース。
ダーヴィトに「バーダー・マインホフ 理想の果てに/2008」「血の伯爵夫人/2009」のゼバスティアン・ブロンベルク。
クリシャンに「白いリボン/2009」「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~/2010」「コッホ先生と僕らの革命/2011」「パリよ、永遠に/2014」「ヒトラー暗殺、13分の誤算/2015」のブルクハルト・クラウスナー。
監督、脚本は「ピエロがお前を嘲笑う/2014」のバラン・ボー・オダー。

23年前に起きた事件は未解決に終わり、その事件のせいで妻と別れることになった元警官のクリシャン。一方で、警官のダーヴィトは妻を亡くしたばかりで情緒不安定に陥っている。クリシャンは今回起きた事件は23年前と同じ犯人だと考え独自に捜査を開始する。

夫とも別れ一人で暮らすエレナは23年前の事件で亡くなった少女の母親。とても酷似した事件が起き戸惑いを隠せない。そんなある日、クリシャンが訪ねて来る。やがて共に配偶者がいない二人は急接近して行く。

成功した建築家のティモは妻子に囲まれ幸せな日々を送っている。そんなある日、麦畑で疾走した少女の事件がTVから流れるのを見て愕然となる。彼は大学生の時にピアと言う一風変わった男と出会い親交を深めていた。そして二人は人には言えない共通の性癖を持っていた。やがてティモは名前を変え、過去を完全に封印して今の生活を得る。妻には知られてはならない性癖をひたすら隠して生きてきたティモは過去に引き戻され茫然自失に陥る。

過去と現在が何度か行ったり来たりする。ピア役のウルリク・トムセンはヘアー・スタイルを変え老けて見せているが、ティモを演じるヴォータン・ヴィルケ・メーリングの容貌が23年前とあまり変わらなく、ほぼ同じ時代の人間に見えて困った。
ウルリク・トムセンはドイツに移住してきたデンマーク人ピアを演じている。彼は善い人役が多いのでこういった役柄は初めて見たが、癖のあるキャラも似合っている。

クリシャンとエレナの急接近と、妻を亡くしたダーヴィトの滑稽なまでの嘆きぶりが、重いサスペンスの中でちょっと一息つける。
面白いサスペンスだったが映画のラストにすっきりしなかった。原タイトルは“最後の沈黙”で、結末はあれで良いのか?と思ったりもしたが、一番すっきりしなかったのは警官のダーヴィトに違いない。犯人は一人ではないと確信し上司に直訴するが聞き入れてもらえず事件解決と納めてしまったのだから...。

「ピエロがお前を嘲笑う/2014」が大ヒットしているのに多分便乗して1週間限定のレイトショー(だれでもワンコイン500円で鑑賞できる)で公開された(既に上映終了)。映画はDVDで上映なので画質は悪い。

新宿 シネマカリテにて
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by margot2005 | 2015-10-31 00:49 | ドイツ | Trackback | Comments(0)

「ヒトラー暗殺、13分の誤算」

「Elser」…aka「13 Minutes」2015 ドイツ
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1939年11月8日、ミュンヘン。恒例のミュンヘン一揆記念演説を行っていたアドルフ・ヒトラーは、その日の悪天候によりいつもより早く演説を切り上げる。やがて人々が会場から去った後仕掛けられた時限爆弾が爆発する。それはヒトラーの演説が終わった13分後だった...

ゲオルク・エルザーに「白いリボン/2009」のクリスティアン・フリーデル。
エルザに「コーヒーをめぐる冒険/2012」のカタリーナ・シュットラー。
アルトゥール・ネーベ大佐に「白いリボン」「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~/2010」「コッホ先生と僕らの革命/2011」「パリよ、永遠に/2014」のブルクハルト・クラウスナー。
ハインリヒ・ミュラーに「顔のないヒトラーたち/2014」のヨハン・フォン・ビューロー。
監督は「es [エス]/2001」「ヒトラー ~最期の12日間~/2004」「ダイアナ/2013」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。

家具職人ゲオルク・エルザーはスパイなどではなくたった一人でヒトラー暗殺を実行した。自身の暗殺を知ったヒトラーは容疑者に対し徹底的な尋問を命じる。命を受けたナチスの親衛隊ネーベとゲシュタポ局長ミュラーは、“暗殺の背後に誰がいる?”と問いつめエルザー単独犯を決して信じようとしない。やがて尋問は拷問に至るがエルザーの答えは変わらない。いや変えられないのだ。単独犯なのだから…。口を割らないエルザーに業を煮やしたゲシュタポはエルザーの恋人エルザを連行してくる。

ドラマは過去に戻る…美しい湖のほとりで友人たちと音楽やダンスに興じるゲオルク・エルザー。ゲオルクは音楽を愛し、平和を愛する家具職人。ある夜、酒場で人妻エルザと出会い魅了される。エルザは暴力をふるう夫に悩まされているが子供を持つ身で別れることもできない。しかし互いに惹かれ合う二人は逢瀬を重ねて行く。
一方でナチスに対する不満を募らせるゲオルクは、ユダヤ人の友人が連行され過酷な労働を強いられていることを知りますますナチスに対して反感を抱くようになる。そこで彼は行動にでるのだ。
たった一人で組み立てた時限爆弾を森に持ち込み爆発の実験を行う。ゲシュタポも認めたように彼の作った時限爆弾はかなりの優れもの。職人のゲオルクは器用な人だったに違いない。巧妙に計画をたて実行に移したものの爆発時間がズレさぞかし悔しかったことだろう。

拷問のシーンなどとてもリアルで目を背けるシーンが多くちょっとツライ映画。でも又一つナチスが起こした悲惨な史実を知った。
原タイトルは主人公の名前。エンディングにゲオルク・エルザー本人の写真が登場する。
反ヒトラーに転じたネーベが殺されてもエルザーは殺されず、ナチスの収容所で生かされたまま1945年4月9日、ヒトラーの死の少し前に処刑された。
エンディングにゲオルク・エルザーの私生活はフィクションであると記される。そう確かに彼の私生活はドラマティックだった。

BSの旅番組で見たヒトラー演説の場所として有名なミュンヘンのビアホール“ホフブロイハウス”。そこで撮影されたのだろうか?あのシーンはスゴく臨場感があった。
トム・クルーズ主演の「ワルキューレ/2008」でもアドルフ・ヒトラー暗殺が描かれている。ヒトラー暗殺は40回以上行われたにも関わらず一度も成功しなかったと言う。暗殺においてはヒトラーはとてつもない強運の持ち主だったに違いない。

TOHOシネマズシャンテにて
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by margot2005 | 2015-10-26 23:33 | ドイツ | Trackback(5) | Comments(0)

「顔のないヒトラーたち」

「Im Labyrinth des Schweigens」…aka「Labyrinth of Lies」2014 ドイツ
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1958年、西ドイツのフランクフルト。戦後から10数年が経過し、国民の間ではナチスによるユダヤ人虐殺の事実は面倒な歴史として忘れ去られようとしていた。そんな折、ジャーナリストのトーマス・グニルカは元SS隊員の男が小学校の教師をしている事実を突き止める。やがて彼は検察庁に談判に行くが誰も彼も黙りを決め込むばかり。そんな中で一人の駆け出し検事が興味を示し、共に調査を進めて行く…

ヨハン・ラドマンに「イングロリアス・バスターズ/2009」「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~/2010」「陰謀のスプレマシー/2012」のアレクサンダー・フェーリング。
ジャーナリスト、トーマス・グニルカにアンドレ・シマンスキ。
マレーネに「愛を読むひと/2008」「ハンナ・アーレント/2012」のフリーデリーケ・ベヒト。
ユダヤ人シモンに「360/2011」のヨハネス・クリシュ。
秘書エリカ・シュミットに「嵐の中で輝いて/1992」のハンジ・ヨフマン。
検事オット・ハラーにヨハン・フォン・ビューロー。
検事総長フリッツ・バウアーにゲアト・フォス。
監督、脚本はジュリオ・リッチャレッリ。

シアターで何度も予告編を見て公開を待っていた一作。
映画を見終わって元ナチスの親衛隊アド ルフ・アイヒマンの裁判の様子を描いた「ハンナ・アーレント/2012」を思い出した。

本作は1963年に“アウシュヴィッツ裁判”が行われることになったいきさつを描いた、実話が基の社会派ドラマ。
ある時、ジャーナリストのトーマスが一人の若い女性に“アウシュヴィッツって知ってる?”と聞くと“知らない!”と言う答えが返ってくる。アウシュヴィッツを知らないドイツ人ているのだろうか?と少々疑問に思った。でもそれは敗戦国の宿命として皆忘れたがっていると言う。

原タイトルは“沈黙の迷宮”。膨大なる資料からアウシュヴィッツに関わったSS隊員(容疑者8000人)を探しだす様は見ていて気が遠くなりそうになった。
忘れ去られようとしている悲惨な過去をほじくりだすことに執念を燃やす新米検事のヨハン。しかし市民からの抵抗と妨害、そして上司から圧力をかけられ、恋人のマレーネにまで非難される。そんなヨハンも一度は断念するものの、やはり最後まで“消された罪”を暴くことをあきらめなかった。
ヨハンが探し当てた容疑者を一人、又一人と追いつめて行く様は見応えがある。
終戦後、アウシュヴィッツに関わった元ナチスのメンバーたちは権力で守られていたというから驚く。

マレーネに非難されたのは、彼女の親族が元ナチスだったという事実を知りそれを伝えたから...善良な市民がナチス党員になった事実に衝撃を受ける。
一時、無理なことだとあきらめ、検事局を去るヨハンにハラーとエリカが冷たい目を送る。あのシーン良かった。

ヨハンはポーランド南部にあるアウシュヴィッツ収容所を見るためシモンを誘う。しかしその地から生還したユダヤ人シモンにとっては二度と足を踏み入れたくない場所だった。
草木が茂るアウシュヴィッツに立つヨハンとトーマスの姿が胸を打つ。
ヨハンを演じるアレクサンダー・フェーリングがナイス・キャスティング。

ヒューマントラストシネマ有楽町にて
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by margot2005 | 2015-10-12 23:13 | ドイツ | Trackback(3) | Comments(2)

「ぼくらの家路」

「Jack」 2014 ドイツ
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ベルリンの街。シングルマザーのザナはボーイフレンドのフィリップを自宅に連れ込み、子供たちのことなど忘れている様子。夜中にお腹がすいて目を覚ましたジャックは知らない男が家にいることに不満を募らせる。ジャックは10歳。6歳の弟マヌエルに朝ご飯を食べさせ学校へと急ぐ…

ジャックにイヴォ・ピッツカー。
マヌエルにゲオルク・アルムス。
ザナにルイーゼ・ハイヤー。
ベッキ(共同脚本)にネレ・ミュラー=シュテーフェン。
フィリップに「THE WAVE ウェイヴ/2008」のヤコブ・マッチェンツ。
監督、脚本はエドワード・ベルガー。

母親のボーイフレンドの衣類を窓から放り投げるジャック。それは彼の嫉妬に他ならない。
二人の息子がいるにも関わらず自分の欲求を満たすことしか頭にない母親。なんという残酷な母親だろうとあきれ果てる。ジャックとマヌエルはただただ一心に母の愛を求めているのに...。母親も息子たちを愛してはいるのだが、自身の欲求を優先してしまうのだ。

ある日、ザナには子供を育てる能力がないと判断され、まだ幼いマヌエルは母親のもとに残されるがジャックは施設に送られる。施設のベッキは優しく接してくれるが、馴染めず友達はできず虐めに合う始末。
やがて夏休みがやって来る。ジャックは母親に会えると驚喜するが彼女は迎えに来なかった。しかし母親に会いたい!家に帰りたい!一心で施設を抜け出し、夜通し歩き続けてアパートにたどり着く。でもドアには鍵がかかり誰もいない。途方に暮れるジャックは母親の友人を訪ねるが、マヌエルを置き去りにしてどこかへ行ってしまっていた。

ベルリンの夜の町。母親を捜して彷徨う2人の姿が切な過ぎる。
ラスト近く、ジャックとマヌエルがさんざん探し回っても見つからなかった母親が家に戻っていた。子供を放って遊び回っていた彼女ながら、全く悪びれもせず“会いたかったわ!お腹空いてる?”なんて問いかけるシーンにぞっとした。

ラストのジャックの判断…あの時彼は10歳にして大人になったのだろう。
主人公ジャックを演じるイヴォ・ピッツカーが素晴らしい。弟を守り面倒を見る健気な姿に胸打たれる。
映画はフィクションながら、こういった家族てきっといるんだろうと想像しますます悲しくなった。

ヒューマントラストシネマ有楽町にて
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by margot2005 | 2015-10-07 22:22 | ドイツ | Trackback | Comments(2)

「ピエロがお前を嘲笑う」

「Who Am I - Kein System ist sicher」2014 ドイツ
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ある日、国際使命手配されている天才ハッカー、ベンヤミンが警察に出頭してくる。やがて彼はユーロポール(欧州刑事警察機関)の捜査官ハンネに語り始める…

ベンヤミンに「ルートヴィヒ/2012」「コーヒーをめぐる冒険/2012」のトム・シリング。
マックスに「THE WAVE ウェイヴ/2008」のエリアス・ムバレク。
シュテファンに「es [エス]/2002」「SOUL KITCHENソウル・キッチン/2009」「ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀/2001」のヴォータン・ヴィルケ・メーリング。
ポールに「es [エス]」「ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀」のアントニオ・モノー・Jr。
マリに「4分間のピアニスト/2006」「バーダー・マインホフ 理想の果てに/2008」「ルートヴィヒ」のハンナー・ヘルツシュプルンク。
ハンネに「未来を生きる君たちへ/2010」「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮/2012」「愛さえあれば/2012」のトリーヌ・ディルホム。
監督、脚本は「23年の沈黙/2013」のバラン・ボー・オダー。

シアターで何度か予告を観てこれは面白そう!とスゴく期待していた。シアターであまり見ることが叶わないドイツ映画だし…。で、初日(土曜日)の最終回にシアターに行ったら“満席で立ち見です!”と言われあきらめた。広い方のシアターなのにと、気を取り直し平日の昼間に行ったところ前二列しか空いてなくてほぼ満席。しかしながらドイツ発のサーバー・マフィア、ドラマは最高に面白かった。

本作の醍醐味は次から次へと攻め立てるスピード感。それは現実なのか?仮想なのか?と考えている間に次の場面に移行する。そして映像もミュージックも大迫力なのだ。
ドイツ映画は時代が古い設定のドラマが多く公開されるような気がするが(日本人に受けるのかも?)、現在が舞台のドイツ映画はスゴくスタイリッシュで面白くて素晴らしい!
捜査官ハンネはベンヤミンに翻弄されまくりながらも...ラスト良かったな。
ぜひMY BESTに入れたいと思う。

主演のトム・シリングは、シアターで見れなくてwowowで見た「コーヒーをめぐる冒険」の主人公ニコ役や、本作のキャラもそうだけど、オタクっぽいイメージがぴったりハマる俳優。
映画宣伝に“この映画のトリックは100%見破れない!”とあるようにどんでん返しのあのラストには唖然!!

新宿 武蔵野館にて
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by margot2005 | 2015-09-25 23:12 | ドイツ | Trackback(7) | Comments(2)

「あの日のように抱きしめて」

「Phoenix」2014 ドイツ/ポーランド
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1945年、6月、ベルリン。アウシュヴィッツ強制収容所から奇跡的に生還したネリーは、同じくユダヤ人の親友レネと暮らし始める。レネはネリー共にパレスチナで新しい生活を夢見ていた...

ネリーに「イェラ/2007」「東ベルリンから来た女/2012」「誰よりも狙われた男/2013」のニーナ・ホス。
ジョニーに「東ベルリンから来た女」のロナルト・ツェアフェルト。
レネにニーナ・クンツェンドルフ。
監督、脚本に「イェラ」「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペッツォルト。

アウシュヴィッツから奇跡的に生還したネリーは顔に銃の傷を受け酷いありさまだった。やがて整形手術を受けることになったネリーは自分の元の顔に固執する。それは愛する夫ジョニーの元へ戻りたかったから…手術に成功し、傷も癒えたネリーはレネの反対を押し切ってジョニー探しを始める。ある夜、“Phoenix”と言うバーでジョニーを見つけ出すが、彼はもはやピアニストではなくバーで働く労働者だった。思いきって声をかけるが容貌の変わったネリーに気づかない。再びバーを訪れたネリーはジョニーと対面する。すると彼は“君は亡くなった妻に似ている。”と言い、ある事を持ちかける。それは妻のフリをしてくれれば遺産が手に入るので、二人で山分けしようではないか…と言うものだった。今でも夫を心から愛するネリーは迷いながらもこの奇妙な提案を受けることにする。
夫は本当に裏切ったのだろうか?それとも執拗なSSの追求に屈して妻を差し出したのだろうか?

このドラマは少々切なさ過ぎる。
夫は妻の声がわからなかったのだろうか?容貌が変わったといえ声は変わらない。遺産手続きに必要な書類にサインする筆跡もネリーと同じなのに全く疑わない。
やはり彼はユダヤ人である妻をSSに引き渡し、愛情もなくし、遺産のことしか考えていなかったのだろうか?とどのつまりジョニーはネリーに対する良心の呵責から逃れたい一心だったのかも知れない。

「ふたつの名前を持つ少年」と同じくナチスから生き延びたユダヤ人が主人公。都内では2作品とも公開が同じ日。
衝撃で凍りついたジョニーの顔と、してやったり顔のネリーが対照的なラストは唖然だった。
二人で乗る自転車が「東ベルリンから来た女」と被る。
監督ロナルト・ツェアフェルトはニーナ・ホスが好きらしい。
ちょっと太めでブレンダン・フレーザーに似たロナルト・ツェアフェルトが素敵だ。

Bunkamura ル・シネマにて
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by margot2005 | 2015-08-24 22:57 | ドイツ | Trackback(6) | Comments(0)

「ふたつの名前を持つ少年」

「Lauf Junge laugh」…aka「Run Boy Run」2013ドイツ/フランス/ポーランド
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1942年、ポーランドのワルシャワ。父親から“自分の名前を捨てて生きのびるんだ!”と言われたことを胸に、8歳の少年スルリックはたった一人でゲットーから逃げ出し森へと逃げ込む...

スルリック/ユレクにアンジェイ&カミル・トカチ。
マグダ・ヤンチック夫人にエリザベス・デューダ。
農園の女主人ヘルマン夫人に「愛を読むひと/2008」「ヴィクトリア女王 世紀の愛/2009」のジャネット・ハイン。
SS将校に「白いリボン/2009」「東ベルリンから来た女/2012」「パッション/2012」のライナー・ボック。
モシェ・フレンケルにイタイ・ティラン。
監督はペペ・ダンカート。

森に逃げ込んだスルリックは疲れ果て一軒の家の前で倒れてしまう。その家の主はパルチザンでマグダと名のるヤンチック夫人が一人で住んでいた。彼女は少年を温かく迎え入れ衣服、食事、ベッドをを与える。ヤンチック夫人はスルリックにユダヤ人の名前を捨てポーランドの孤児に成りすまして生きた方が良いと説得する。そしてカトリックの祈りを教え、孤児にふさわしい身の上話も作り上げる。父親からユダヤ人であることを忘れてはならないと諭されていたスルリックながら、生きていくためにポーランド人孤児ユレクと名のる決心する。しばしの平和な日常も長くは続かず、いつSS(ナチス親衛隊)がやってくるとも知れず、スルリックはヤンチック夫人の家を出て行かざるを得なかった。その後過酷な逃亡生活の後終戦を迎える。

実話を基に描かれたドラマは前評判が良いのかシアターはかなり混雑していた。
映画のタイトルにあるように、少年は走って、走って生き延びることができた。戦争が集結し、少年を最後に保護した鍛冶屋の家に、ある日一人の男がやってくる。モシェ・フレンケルと名のる彼にはユダヤ人の孤児を家族のもとへ返す任務があった。少年は頑に自分はユダヤ人でないと主張するが、フレンケルの説得で折れ、かつて暮らしたゲットーへ足を運ぶ。しかしゲットーに家族は誰もいなかった。やがてフレンケルは少年に鍛冶屋の元へ戻るか新天地イスラエルへ旅立つか重大な決断を求める。

ホロコーストを生き延びたヨーロッパのユダヤ人が多数パレスチナに移民し、アラブ人やイギリス軍と戦ってイスラエル建国を迎える、監督、製作オットー・プレミンジャー、ポール・ニューマン主演のアメリカ映画「栄光への脱出(Exodus)/1960」を思い出した。

スルリックはなぜ自分は捕えられなければならないのか?と疑問に思うほどの余裕もなく、助けを求めるも、時には門前払いされたり、SSに突き出されたりしつつ、ヘルマン夫人の農園で片腕まで失ったが生き延びたのだ。しかしただユダヤ人と言うだけで手術を拒否された少年の辛さは如何ばかりだったろう?戦争の酷さをひしひしと感じるシーンだった。

映画のラストにイスラエルで妻子や孫に囲まれてサッカーに興じる本人(ヨラム・フリードマン)が映し出される。
主人公を演じるのはアンジェイ&カミル・トカチの双子の兄弟。オーディションで選ばれたという彼らが素晴らしい演技を見せてくれる。

ヒューマントラストシネマ有楽町にて
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by margot2005 | 2015-08-23 20:11 | ドイツ | Trackback(1) | Comments(0)