「そして、私たちは愛に帰る」

「Auf der anderen Seite」...aka「On the Other Side /The Edge of Heaven」 2007 ドイツ/トルコ/イタリア

トルコとドイツを舞台に“愛と死”をテーマに、三組の親子が織りなすヒューマン・ドラマ。
カンヌ映画祭最優秀脚本賞/全キリスト教会賞受賞作品。
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ネジャットにバーキ・ダヴラク。
ネジャットの父親アリにトゥンジェル・クルティズ。
アイテンにヌルギュル・イェシルチャイ。
アイテンの母親イェテルにヌルセル・キョセ。
スザンヌに「愛と死の間(あいだ)で/1991」のハンナ・シグラ。
スザンヌの娘ロッテにパトリシア・ジオクロースカ。
監督、脚本に「愛より強く/2004」「太陽に恋して/2000」のファティ・アキン。


ドイツ、ブレーメンに住むアリは、ある日出会った娼婦イェテルを気に入り、一緒に住まないか?と持ちかける。ハンブルグの大学で講師をしている息子ネジャットは娼婦を家に連れ込んだ父親に嫌悪感を抱くが、稼いだお金をトルコに住む娘アイテンに送金しているイェテルに好感を抱く。やがて酔ったアリがイェテルに手をかけ死なせてしまう。
一方で政治活動に身を投じたアイテンはドイツに不法入国し母親探しを始める。お金がなく途方に暮れるアイテンに援助の手を差し伸べたのはドイツ人学生ロッテだった...
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ファティ・アキン映画は「太陽に恋して」「愛より強く」共に素晴らしいユーモアが楽しめる。しかしこの作品は全く違う。一組の父親と息子、二組の母親と娘の愛情をひたすら真面目に描いている。
三組の親子には密接な繋がりがあるが、それぞれが全くもってすれ違ってばかりで哀しい。
ネジャットがトルコに向かったのは、亡きイェテルの娘アイテンを探し学費の援助をしようとする事から始まる。しかしラストの、ラスト迄ネジャットはアイテンに逢えないまま。母親イェテルは娘に高等教育を受けさせるべく、娼婦にまで身を落として稼いだお金を送金していた。彼女は娘の現実の姿を知らないまま亡くなったので、逢えなかったネジャットもアイテンの実際の姿を知る事はなかった。映画を観ていて、ネジャットとアイテンが中々逢えない事にイライラする。が、しかし、観終わってこのドラマの中で二人は逢えないで良かったと思った。
トルコ、イスタンブールの空港で、ドイツからトルコに戻って来た一つの棺と、トルコからドイツに戻って行く一つの棺のシーン、そして、レストランで食事をするネジャットとスザンヌが“死”に乾杯するシーンはとても印象的。
トルコ移民が多いドイツ。ドイツ人学生ロッテは食べるものを買うお金もないアイテンに出会い彼女を助ける。やがて不法入国で本国に送還されたアイテンを追って自らトルコへと旅立つ。その娘の行動を母親スザンヌは理解出来ず批判するばかり。しかしラストでは全てを許し受け入れる彼女の姿に感動する。ちょっとウルウル来た。
父親を軽蔑していた息子ネジャットもラストでは彼を訪ねるべく車を走らす。それはスザンヌとの出会いにより、亡き母親の代わりに男手一人で育ててくれた父親の愛情を再認識したからに他ならない。
エンディング、ビーチにたたずみ、父親を待つ息子の背中に希望が見えるように思えた。
全キリスト協会賞を受賞しただけあって、“隣人愛”というのだろうか?人種を越え、宗教を越えた“愛”が描かれ素晴らしい!作品となっている。
俳優たちも皆素晴らしい!
例によって何度も、何度も予告を観て来たが、予告以上に素晴らしく、またまたマイベスト入りしそう。
シネスイッチ銀座にて...
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by margot2005 | 2009-01-10 20:47 | ドイツ | Trackback(14) | Comments(8)
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Tracked from かえるぴょこぴょこ CI.. at 2009-01-13 19:55
タイトル : 『そして、私たちは愛に帰る』 Auf der Ander..
これこそは愛。 ハンブルクの大学で教鞭をとるトルコ系移民二世のネジャットの老父アリは、ブレーメンで一人暮らしをしていたがある日同郷の娼婦イェテルと暮らし始めた。 そして、ドイツとトルコを舞台に三組の親子の物語が絡み合う。お待ちかねのファティ・アキン監督の新作。私の新年1本目の鑑賞作はこれ。そのセレクトは、記念すべき新年1本目に好きな監督の期待作を観たい、ただ単に年の初めには確実によい映画を観たいという理由によるものだったのだけど。年末年始にちょっと帰省をして久しぶりに両親に会って来たばかりの私...... more
Tracked from Cartouche at 2009-01-16 12:44
タイトル : *そして、私たちは愛に帰る*
{{{   ***STORY*** ハンブルクに住む大学教授のネジャットの老父アリはブレーメンで一人暮らしだったが、同郷の娼婦イェテルと暮らし始める。ところが、アリは誤ってイェテルを死なせてしまう。ネジャットはイェテルが故郷トルコに残してきた娘アイテンに会うためにイスタンブールに向かう。そのアイテンは反政府活動家として警察に追われ、出稼ぎでドイツへ渡った母を頼って偽造パスポートで出国し、ドイツ人学生ロッテと知りあう。                         gooより}}} ...... more
Tracked from ポコアポコヤ 映画倉庫 at 2009-01-19 15:03
タイトル : 「THE EDGE OF HEAVEN」 そして私たちは..
トルコ系ドイツ人であるファティ・アキン監督の、2007年のカンヌ国際映画祭で脚本受賞映画。 全く飽きさせず、どうなるんだ??と、最後まで引き込まれて見ました。 ... more
Tracked from まてぃの徒然映画+雑記 at 2009-01-19 22:27
タイトル : そして、私たちは愛に帰る AUFDERANDERENSE..
2007年カンヌ映画祭で最優秀脚本賞を受賞した作品。「イェテリの死」「ロッテの死」「天国のほとりで」の3部構成で、アリとネジャット、イェテリとアイテン、ロッテとスザンヌの3組の親子の物語をドイツとトルコの2ヶ国にわたって繰り広げる。さすが脚本賞!の素晴らしい...... more
Tracked from 真紅のthinkingd.. at 2009-01-27 09:19
タイトル : 天国のほとりで〜『そして、私たちは愛に帰る』
 AUF DER ANDEREN SEITE  THE EDGE OF HEAVEN  ハンブルグの大学で教鞭を取る、トルコ系ドイツ人のネジャット(バーキ・ダヴラ ク)。彼はブレーメンに住む年金生活者の父アリ(トゥンジェル・...... more
Tracked from 銅版画制作の日々 at 2009-03-19 09:55
タイトル : そして、私たちは愛に帰る 原題:AUF DER ANDE..
 消息のわからない娘に、母のことのことを知らせるために、作ったチラシは、娘に届くのか? 3月13日、京都みなみ会館にて鑑賞。 ドイツーーーートルコ。2000キロの距離を越えて、3組の親子がさすらう再生と希望の旅路 親子の絆は何ものにも変えられないほど、深くて強いものだ。この物語は3組の親子の話が軸となっているが、それぞれ皆心や距離が遠く離れてしまっているのだ。しかし離れているものの、人一倍その絆の深さを凄く感じる。そして忘れ去られた他人同士の繋がり、その大事さを教えてくれる。昨今そんな人間の繋が...... more
Tracked from 再出発日記 at 2009-03-27 00:29
タイトル : 「そして、私たちは愛に帰る」あるいは「天国のほとりで」
「そして、私たちは愛に帰る」この題名はよくないと思う。また、宣伝用のあおり文句もよくないと思う。こんな文句だ。「幸せと不幸せは、背中合わせ。だから人生はいつだってやり直せる」「ドイツ・ハンブルグ、トルコ・イスタンブール。2000キロにわたってすれ違う、3組...... more
Tracked from 映画と出会う・世界が変わる at 2009-04-05 08:42
タイトル : そして、私たちは愛に帰る■素晴らしいラストシーン!
大学講師の息子と、その息子を男手ひとつで育てあげ、余生を娼婦と過ごそうとする父。トルコからドイツに出稼ぎに来て娼婦として暮らす母と、反政府活動家としてトルコを追われたその娘。その彼女を救うためイスタンブールに旅立つ女子大生と、彼女の身を案じながらも素直...... more
Tracked from 映画と出会う・世界が変わる at 2009-04-10 09:29
タイトル : そして、私たちは愛に帰る■最後はトルコで
映画が始まり、スクリーンにプロダクションなどの紹介字幕を映し出しながらさざ波の音が聞こえる。これはラストでネジャットが父親のアリを待っているときの海辺のシーンにつながっていく。ネジャットが父親に渡した本は何というタイトルなのだろうか?ドイツで渡された本...... more
Tracked from 俺の明日はどっちだ at 2009-04-16 11:35
タイトル : 「ラースと、その彼女」 LARS AND THE REA..
リアルドールに恋する青年とそれを見守る心優しき街の人々が織り成すファンタジーヒューマンドラマ。 最初ビアンカと名付けられた“リアルドール”(という言葉今回はじめて知りました)が主人公ラースとともに登場してきたときには、正直言って兄夫婦同様、相当に引いてしまったのだけど、パトリシア・クラークソン扮する女医さんの忠告を聞きながら周りの人間が彼ら二人に暖かく接する姿を見るにつけ、街の人たち同様ビアンカがどんどん受け入られる普通の存在に見えてきて、ビアンカを想うラースの姿にすっかり感情移入。 物語が進...... more
Tracked from しぇんて的風来坊ブログ at 2009-08-16 10:47
タイトル : そして、私たちは愛に帰る
これはドイツ=トルコ合作映画としての製作だが便宜上(当ブログのカテゴリーのタグ)、ドイツ映画にさせていただいた。トルコ移民二世のドイツの監督作品で、この映画はその監督のルーツという意味もあるように、ドイツとトルコを交差していく。この映画におけるトルコは中東のうちの単なる一国というより、中東国であるが欧州と隣接しており、かつEU(ヨーロッパ連合、欧州連合)加盟を目指す側面と国内の(政府&民衆一部価値観も含め)の人権問題などの問題、そしてそれについての欧州側の家族と個人の対応をも含んである。作中、あっけな...... more
Tracked from サムソン・マスラーオの映.. at 2009-11-07 23:44
タイトル : そして、私たちは愛に帰る
   = 『そして、私たちは愛に帰る』  (2007) = 一人暮らしの老人アリ(トゥンジェル・クルティズ)は、トルコ人娼婦のイェテル(ヌルセル・キョセ)と一緒に暮らし始める。 彼女はアリの息子ネジャット(バーキ・ダヴラク)に、娼婦になった理由やトルコに残した一人娘のことを話すが、ある日、アリとの口論から死んでしまう。 トルコへ渡ったネジャットは、イェテルの娘(ヌルギュル・イェシルチャイ)を捜すことにするが・・。 {{{: 製作国/ドイツ : トルコ  AUF...... more
Tracked from 心の栄養♪映画と英語のジ.. at 2010-01-08 09:33
タイトル : 「そして、私たちは愛に帰る」
人間、究極は愛と包容力なのかもしれない・・と思いました... more
Tracked from シネマな時間に考察を。 at 2010-11-10 13:49
タイトル : 『そして、私たちは愛に帰る』
国境を超えてすれ違う運命の悪戯。 死が次なる出会いの糸を紡ぎ、 やがてそこには愛が宿る。神をも超える、赦しの愛が。 『そして、私たちは愛に帰る』 The Edge of Heaven 2007年/ドイツ・トルコ/122min 監督・脚本:ファティ・アキン 出演:バーキ・ダヴラク、ハ... more
Commented by JT at 2009-01-11 23:54 x
margotさん、こんにちは。ごぶさたしてました。
この映画、わたし好みのようで、記事を読んで是非みたくなりました。
この手の映画は見逃したくないです。

阿久悠さんの残した言葉に、

夢は砕けて夢と知り
愛は破れて愛と知り
時は流れて時と知り
友は別れて友と知る

というのがありますが、最近こんな言葉が身にしみるようになりました。歳をとったということでしょうね(笑)

そういえばmargotさんのBLOG、ウインドウズのインターネットエスクプローラでみるとスタイルが崩れてしまっているみたいです(本文とサイドが重なってるようです)。わたしのBLOGは逆にサファリや最新のブラウザでみると崩れてしまう時があるのですが・・・やっかいですね(^。^;;

そうそう、ご挨拶遅くなりました。
ことしもよろしくです!
Commented by margot2005 at 2009-01-12 01:31
JTさん、お久しぶりでございます!
復活されて良かったです。
そうこの作品きっと、きっとJTさん好みだと思います!
銀座へ是非お出かけくださいまし。

阿久悠さんの言葉素敵ですね。JTさんが歳を取ったなんておっしゃったら私はこれ以上歳を取れなくなってしまいますね。

私はサファリでしか見ないんです。見ようと思えばインターネットエスクプローラでも見る事ができるのですが、それと当方macですが相性が合わないブログってあるのですね。これから他の見方も試してみます。
さてさて、ご挨拶感謝です。こちらこそ今年もよろしくでございます。
Commented by CaeRu_noix at 2009-01-13 20:09
margot さん、 今年もよろしくお願いしまーす。
期待に違わない素晴らしい作品でしたねぇ。

>全キリスト協会賞受賞

この賞のことはずっと気になっていたのですが、鑑賞して大いに納得。
そうなんですよ。"家族愛"の物語と思いきや、“隣人愛”というべきものを描いていたことにとても感動しちゃいましたわ。
スザンヌの決断にはぐわーんとやられました。
ハンナ・シグラ、すばらしいですよねぇ。
ビロル・ユーネルは元気かなぁ?
Commented by margot2005 at 2009-01-15 00:26
かえるさん、こちらこそよろしく!
どの俳優も良かったですが、スザンヌを演じたハンナ・シグラはやはりの演技でしたね。
キリスト協会賞=人類愛でしょうか?
ネジャットとアイテンが出会うスザンヌの描き方がとても素晴らしかったと感じましたわ。
ビロル・ユーネル映画も観たいなぁ!
Commented by michi at 2009-01-21 08:39 x
こんにちは。
何度かTBに挑戦したのですが、不調のようでして。。。
コメントのみで失礼いたします。

3組の親子のうち、イェテルとアイテンだけがお互いに本当の姿を知らないままでしたが、
そのほうが良いこともあるなぁと、観終わってから思いました。
ロッテが撃たれたシーンは衝撃的でしたが、あれがトルコの現状なのでしょうか。
観光パンフレットの美しい景色しか見ていない私には、少年の行動がショクでした。

Commented by margot2005 at 2009-01-22 23:11
michiさん、こんばんは!
コメントありがとうございます!TBダメですか?残念です。

さて私もイェテルが娘の実際の姿を知らないまま亡くなったのは良かったと思います。
刑務所でアイテンが“I'm sorry!”と言い“I know!”とスザンヌが答えるシーンにウルウル来ました。
映画の中でも語られていましたが、貧困が犯罪を呼ぶのですよね?
“魅惑のトルコ”と銘打った海外旅行のパンフに目を奪われ、一度トルコに行ってみたいと思っていますが、そこに住む人々の生活には厳しいものがあるのでしょう。
Commented by 真紅 at 2009-01-27 09:24 x
margor2005さん、こんにちは。まとめてTBしてごめんなさいね。
この作品、と~ってもよかったですね! 私もベストに入れたいです、忘れずに。
ウルウル、きましたね。
でも、なんか粗筋と感想が書きにくいというか。。自分の受けた感動がうまく言葉にできなくて残念です。
そんなダメダメ記事ですが、TBさせていただきました!
ではでは、また来ます~。
Commented by margot2005 at 2009-01-28 00:59
真紅さん、こんばんは!
まとめTB気にしないでください。嬉しいです。私もまとめは得意です。
さてほんと、と~ってもよかったですね!
互いに忘れずにベストに入れましょう!
映画ってそれぞれに感じ方が違うので、それぞれが、それぞれに感じた感動を書くブログっていいですね。
ではではまたお起こしくださいませね。
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