「幻滅」

「Illusions perdues」…aka「Lost Illusions」2021 フランス／ベルギー

19世紀前半のフランス。アングレームの薬屋シャルドンの息子リュシアンは才能ある若き詩人で母方は伯爵家のド・リュバンプレ。リュシアンは田舎の社交界で文芸サロンを運営するルイーズに恋をする。そしてルイーズの支援で社交界への進出を目論むリュシアンはパリへと向かう。都会では金とコネクションが成功の鍵だった。世間知らずの彼は笑いものにされながらも新聞記者ルストーとの出会いにより野党系新聞社の編集部への道が開かれる。しかし、金のためなら嘘も書く、私利私欲にまみれた同僚たちの姿にリュシアンは戸惑いを覚える…

田舎から都会に出た青年が、目的を忘れ虚飾と快楽に溺れて行く。やがて王党派と自由派の対立に巻き込まれた挙句身を滅ぼしてしまう。ちなみにナポレオンは1821年に死去。

オノレ・ド・バルザックの「幻滅　メディア戦記」を1820年代のパリを舞台に、華麗にスピーディに描かれるドラマは見事でとても見応えがあった。

フランソワ・オゾンの「Summer of 85」で印象的だったバンジャマン・ヴォワザンを主演に、セシル、ヴァンサン、グザヴィエ、ジャンヌ、そしてジェラールと著名俳優が多数出演。

バンジャマンは19世紀の衣装が似合う。セシル・ドゥ・フランスも貴族のマダムがピッタリ。セシルは「令嬢ジョンキエールー愛と復讐の果てにー／2019」でも侯爵の未亡人を演じていて似合っていた。

バンジャマン・ヴォワザンはもちろん大熱演。そしてヴァンサン・ラコストが熱きジャーナリストを演じ素晴らしい。

昨年のフランス映画は私的に不作だったけど今年は満足できる作品が多々ありで嬉しい。これから公開されるフランス映画にも期待したい。

リュシアン・ド・リュバンプレに「Summer of 85／2020」のバンジャマン・ヴォワザン。　

ルイーズ・ド・バルジュトンに「少女ファニーと運命の旅／2016」「エージェント物語／2015〜2020」のセシル・ドゥ・フランス。

エティエンヌ・ルストーに「今宵、212号室で／2019」のヴァンサン・ラコスト。

ナタンに「マティアス＆マキシム／2019」のグザヴィエ・ドラン。

コラリーにサロメ・ドゥウェールズ。

デスパール侯爵夫人に「レ・ミゼラブル／2019」のジャンヌ・バリバール。

ドリアに「メグレと若い女の死／2022」のジェラール・ドパルデュー。

デュ・シャトレ男爵に「パリに見出されたピアニスト／2018」のアンドレ・マルコン。

アンドッシュ・フィノに「ザ・ダンサー／2016」のルイ＝ド・ドゥ・ランクザン。

サンガリに「リミッツ・オブ・コントロール／2009」のジャン＝フランソワ・ステヴナン。

監督、脚本は「情痴アヴァンチュール／2005」「偉大なるマルグリット／2015」のグザヴィエ・ジャノリ。

新宿ピカデリー