2019年 03月 15日
「ともしび」
「Hannah」2017 イタリア/フランス/ベルギー
ベルギーの小さな地方都市。穏やかな生活を送るアンナと夫は、今夜も小さなダイニングでいつものように無言で夕食をとっている。長年連れそった老夫婦には信頼があるはずだった。しかしある疑惑を受けた夫はアンナと共に警察に出頭し、夫はその場で収監されてしまう…
アンナの夫はなぜ投獄されたのか?全く何も語られないまま物語は進んで行く。でも途中で何度かヒントがある。
近隣からの罵声/息子の無視/証拠の写真(映像は映らない)…ラスト、地下鉄のシーンにはドキドキした。浜辺に横たわる死んだクジラを見つめるアンナのシーンも意味深い。
台詞が極端に少ない。相反してアンナが通う演劇クラスでの発声練習は騒々しい。
アンナは豪邸に暮らすエレーヌの家の家政婦をしている。エレーヌの幼い息子は目が不自由。”本を読んで”とせがむ男の子に”今忙しいから…”と言いながらも望みをかなえてやる。
孫の誕生日にケーキを焼いて息子の家を訪ねる。しかしアンナは玄関で追い返されてしまうのだ。帰りの地下鉄のトイレで号泣するアンナ。
ある日、仕事を早めに切り上げ孫の学校へ赴く。門の陰から校庭で遊ぶ孫をじっと見つめるアンナ。アンナは孫を抱きしめられないぶん、思い切りエレーヌの幼い息子を抱きしめているように見えてとても哀れだ。
シャーロット・ランプリングはこの作品で第74回ヴェネチア国際映画祭の女優賞に輝いた。
突然起こった夫の刑務所入り。しかし、これまでと変わらない生活を続けようと必死になるアンナの表情は真に迫る。
台詞が少ないためアンナの表情が多くを語る。演じるランプリングはさすがの演技。男優なら”燻し銀の演技”と言いたいところ。
「まぼろし/2001」「さざなみ/2015」ときて、今回の邦題は「ともしび」。日本語のタイトルはどれもドラマに合っている?
アンナに「ベロニカとの記憶/2017」「レッド・スパロー/2018」のシャーロット・ランプリング。
アンナの夫に「ル・アーヴルの靴みがき/2011」のアンドレ・ウィルム。
エレーヌにステファニー・ヴァン・ヴィヴェ。
演劇クラスの教師にファトゥー・トラレ。
アンナの息子ニコラスにシモン・ビショップ。
監督、脚本はアンドレア・パラオロ。
シネスイッチ銀座にて