2018年 04月 12日
「ハッピーエンド」
「Happy End」2017 フランス/オーストリア/ドイツ
杖がないと歩けないジョルジュはどうすれば死ねるか?ということばかり考える日々。実際お抱えの理容師に”銃を用意してくれないか?”と持ちかけ断られている。父親ジョルジュから家業を継いだ長女アンヌはエネルギッシュに仕事を切り盛りしているが、専務職につく彼女の息子ピエールはビジネスマンとしてナイーブ過ぎる性格で仕事が上手くいかない。そして長男トマは医師で若い妻アナイスと再婚しているが、前妻が亡くなり13歳の娘エヴを引き取ることになる…
オープニングはスマートフォンで撮影した映像で、一時スマートフォンからの映像が映し出される。ラストでそれはSNSに取り憑かれたエヴが撮影していたことが明らかになる。エヴはオープニングで母親、ラストでは祖父を撮影している。
エヴの父親トマがネット上でワイセツな会話をエスカレートしている様が強烈。
疎遠だった祖父と孫娘...ある時、祖父が打ち明けた妻の死にまつわるとんでもない話。秘密ができた二人の間に妙な絆が芽生え、ラストへと繋がっていって興味深い。
本作は「愛、アムール」の後日談っぽいストーリー。
カレーに住むブルジョワ一家のメンバーはそれぞれに問題を抱えている。
死にたいと願いつつも死ねないジョルジュ。離婚歴があり、生まれたばかりの子供の父親であるトマはほぼニンフォマニア。そしてピエールは情けない男。男たちは皆実に情けない。反面女性たちは皆それぞれに問題を抱えてはいるが気丈夫である。
アンヌがいなければこの一家は崩壊してしまうのではないか?と思うくらい彼女の存在感は大きいなぁと思った。
「愛、アムール」のレビューに”今迄観たハネケ映画の中では私的に一番好きな作品となった。”と書いている。なぜ?好きな…と書いてしまったのか?それはひとえに愛情深いドラマだったから…。本作も愛情深いドラマである。それはラストにもしっかりと描かれている。
ポスターの家族の写真とタイトルはマッチしている。しかしながら、「ハッピーエンド」とつけたタイトルはドラマにふさわしいのだろうか?そしてスマートフォンを操作する悪魔のようなエヴが面白い。
アンヌ・ロランに「愛、アムール/2012」「未来よ こんにちは/2016」「エル ELLE/2016」のイザベル・ユペール。
ジョルジュ・ロランに「愛、アムール」のジャン=ルイ・トランティニャン。
トマ・ロランに「クリムゾン・リバー/2000:監督、脚本」「ミュンヘン/2005」「エージェント・マロリー/2011」「裏切りのスナイパー/2012」のマチュー・カソヴィッツ。
エヴに「少女ファニーと運命の旅/2016」のファンティーヌ・アルデュアン。
ピエール・ロランに「ヴィクトリア/2015」のフランツ・ロゴフスキ。
アナイスに「神様メール/2015」のローラ・ファーリンデン。
アンヌのフィアンセ、ローレンスに「ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦/2016」のトビー・ジョーンズ。
監督、脚本は「愛、アムール」のミヒャエル・ハネケ。
角川シネマ有楽町にて(既に上映終了/新宿武蔵野館にて上映中)