2018年 03月 25日
「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」
「The Killing of a Sacred Deer」2017 UK/アイルランド/USA
心臓外科医のスティーブンは美しい眼科医の妻アナと二人の子供と共に郊外の豪邸に住んでいる。満たされた日常を送っているように見えるが、本当は家族に言えない悩みを抱えていた…
<”彼”は4つの悲劇を用意した--->ギリシャの奇才ヨルゴス・ランティモスが描くサイコスリラー。
映画のオープニングはとてもリアルな心臓手術のシーン。やがて手術が終わり血の付いた手袋を脱ぎ捨てる心臓外科医スティーブンが映し出される。シーンは変わってスティーブンが少年マーティンに高価な腕時計をプレゼントしている。喜んだマーティンは”ハグして良い?”と聞き抱きしめるが、スティーブンはどこかぎこちない。
別の日、マーティンがスティーブンの病院に姿を表す。麻酔科医マシューと鉢合わせしたスティーブンは”彼は娘キムと同じ学校に通う高校生でドクターを目指している”と紹介する。しかしそれは嘘で、突然思いついた言いわけだった。
映画のタイトル「聖なる鹿殺し」はギリシャ悲劇「アウリスのイピゲネイア」をモチーフとしている。女神アルテミスキムの逆鱗に触れたトロイアのアガメムノーンが長女イピゲネイアを生贄にささげなくてはならない事態に陥るという物語。ドラマの生贄はスティーブンの妻子。キムが学校で「イピゲネイア」のエッセイを書く件も用意されている。
ミヒャエル・ハネケの「ファニーゲーム/1997」のような展開になるのか?と想像していたが、そうではなく父親を殺された息子のリベンジ・ドラマだった。
”ギリシャの奇才と言われる監督ヨルゴス・ランティモスの頭の中はどのようになっている?”と「ロブスター」のレビューに書いた。”奇想天外さは前作よりましかも知れない。”とも書いている。前作とは「籠の中の乙女/2009」のこと。でもやはり本作も奇想天外で強烈。
「ロブスター」に続き主演はコリン・ファレル。コリンは大好きな俳優なので、今月は「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」と本作を続けて見ることができて大満足。
コリン映画は「タイガーランド/2000」以来ほぼ全て見ていて、中でも一押しは「フォーン・ブース/2002」かな?
映画を見ていて逆立ちしてもコリンが心臓外科医に見えないで困ったのは事実。まぁアル中の心臓外科医ではあったけど…。
「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」に続いて共演はニコール・キッドマン。二人は夫婦役で、実際にはニコールの方が年上だからか?コリンはあごひげを生やしてかなり老け顔になっている。
異常者を演じるバリー・コーガンがぞっとするほどハマっていて、彼の存在がドラマを文句なしに盛り上げている。そして懐かしのアリシア・シルヴァーストーンの出演に驚き!
オフィシャルサイトに”心理的に追いつめていく音楽”とあるように、独特のMusicが恐怖心を一層盛り上げる。そう確かに恐怖心を盛り上げてはいるのだけど、あまりにも理不尽な”4つの悲劇”が恐怖心を通り越して笑いを誘ってしまう。
ラスト近く、マーティンの”呪い”をストップさせることができないと知ったスティーブンが自暴自棄になり泣き出すシーンにも笑ってしまった。
完璧なまでに白けた雰囲気が漂うレストランでのラスト・シーン…奇才には申しわけないけどやはり笑うしかなかった。
サイコスリラーって見ようによっては笑える?
スティーブンに「The beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ/2017」のコリン・ファレル。
アナに「The beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」のニコール・キッドマン。
マーティンに「ベルファスト71/2014」「ダンケルク/2017」のバリー・コーガン。
娘キムに「トゥモローランド/2015」のラフィー・キャシディ。
息子ボブにサニー・スリッチ。
マーティンの母に「タイムトラベラー/きのうから来た恋人/1999」「恋の骨折り損/1999」のアリシア・シルヴァーストーン。
マシューに「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)/2014」のビル・キャンプ。
監督、脚本、製作は「籠の中の乙女/2009」「ロブスター/2015」のヨルゴス・ランティモス。
新宿シネマカリテにて
面白かったんですけどね(笑)
コリン・ファレルは『ビガイルド』の時とうって変わって
思いっきり下っ腹がでてましたね。
これも富を築いた医者のキャラなんでしょうか^^;
こんばんは。
キルステン・ダンストですか?最近のキルステンは
おばさん化してきてますが、マーティンの母親はちょっと気の毒かな?
コリンの下っ腹は心臓外科医の貫禄でつけたのでしょうね。
それに髭もすごかったし、実際の年齢より老け役でメイクしたのでしょうね。
「ロブスター」の時、彼太鼓腹だったのでびっくりしました。