2016年 01月 07日
「消えた声が、その名を呼ぶ」







1915年オスマン・トルコのマルディン。アルメニア人の鍛冶職人ナザレットは美しい妻ラケルと可愛い双子の娘たちと愛に満ちあふれた日々を送っている。キリスト教徒である彼は教会で祈りを捧げる善き人。しかしある夜、いきなり押し掛けてきた憲兵に、同居していた兄弟と一緒に強制連行されてしまう。
以後ナザレットは強制連行された男たちと共に灼熱の砂漠の中、毎日奴隷のように働かされる。ある日、ナザレットはアルメニア人の老人、女性、そして子供たちが疲れ果てた姿で列をなし歩く姿を目の当たりにする。ぐずぐずする者に容赦なく馬上からムチをふるう憲兵。彼らはどこへ向かっているのか?行き先には何が待ち受けているのだろうか?と自らも不安になる。やがてナザレットたちは手足を縄でつながれ行進させられ行き着いた所は谷底だった。そしてアルメニア人の男たちに処刑が言い渡される...
ナザレット・マヌギアンに「予言者/2009」「第九軍団のワシ/2010」「ある過去の行方/2013」「サンバ/2014」のタハール・ラヒム。
ナザレットの妻ラケルにヒンディ・ザーラ。
ナザレットの親友クリコルに「007/カジノ・ロワイヤル/2006」「WEAPONS/シークレット・ディフェンス/2008」「ゼロ・ダーク・サーティ/2012」のシモン・アブカリアン。
ナザレットを助ける石鹸工場のオーナー、オマル・ナスレディンに「シリアの花嫁/2004」「ミュンヘン/2005」のマクラム・フーリ。
ナザレットのアメリカの親戚ナカシアンに「96時間/リベンジ/2012」「エクソダス:神と王/2014」のケヴォルク・マリキャン。
ナカシアン夫人に「アララトの聖母/2002」のアルシネ・カンジアン。
孤児院院長に「未来を生きる君たちへ/2010」「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮/2012」「愛さえあれば/2012」「ピエロがお前を嘲笑う/2014」のトリーヌ・ディルホム。
縫製工場のピーター・エデルマンに「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~/2010」「ガーディアン/2012」のモーリッツ・ブライブトロイ。
監督、脚本、製作は「太陽に恋して/2000」「愛より強く/2004」「そして、私たちは愛に帰る/2007」「ニューヨーク、アイラヴユー/2008」「ソウル・キッチン(SOUL KITCHEN)/2009」のファティ・アキン。
ファティ・アキン監督、タハール・ラヒム主演で楽しみにしていた一作。
鑑賞したのは昨年12月末。今年一番のレビューにしたかった一作でもある。
本作を見てすぐにイタリア映画祭で見た「ひばり農園/2007」を思い出した。第一次世界大戦下のトルコに住むアルメニア人家族を描くことで始まるドラマは「ひばり農園」と全く同じ。しかし本作はトルコにおけるアルメニア人虐殺が本筋ではなく、一人のアルメニア人の家族探しの旅が大きなテーマとなっていて、トルコの砂漠からレバノン、キューバ、フロリダ、そしてノースダコタへと続く主人公の過酷な旅のエンディングに感動する。
ドラマの中、娘探しをするナザレットがチャーリー・チャプリンのサイレント映画「The Kid/キッド/1921」を見て涙を流すシーンにも心打たれた。
「そして、私たちは愛に帰る」は“愛と死”をテーマに描いた素晴らしいヒューマン・ドラマだったが、本作でもやはり“愛と死”が描かれる。
ファティ・アキンって「ソウル・キッチン(SOUL KITCHEN)」のようなふざけた映画を作るかと思えば、「そして、私たちは愛に帰る」や本作のような超真面目な映画も作る...やっぱり彼は鬼才なのか?!
ナザレットを演じるタハール・ラヒムはほぼ全編に出演し大熱演している。
フランス映画祭2010で見た「予言者」の主人公マリックの面影はもはやなく、多種多様な役柄が似合う俳優だ。wowowで見たジル・ルルーシュと共演のサスペンス「ジブラルタルの罠/2013」ではフランス税関の捜査官役でとても似合っていたのを思い出す。「サンバ」はもちろん最高だったし、タハールは素晴らしいフランス人俳優。
レア・セドゥと共演のロマンス・ドラマ「グランド・セントラル/2013」が見てみたい。
モーリッツ・ブライブトロイは「ひばり農園」でトルコ軍兵士役で出演している。クレジットにしっかりと入っているモーリッツの出演はワンシーンのみ、それもロング・ショットで…。トリーヌ・ディルホムの出演も少ない。
エンドクレジットでファティ・アキン監督が敬愛するマーティン・スコセッシ監督に本作を捧げている。
邦題はかなり陳腐。原タイトル「The Cut」は主人公が鍛冶職人ということもあり意味深い。
角川シネマ有楽町にて

