2015年 11月 13日
「裁かれるは善人のみ」

自動車修理工のコーリャは荒涼としたロシアの小さな港町に、若くて美しい妻リリアと一人息子のロマと共に貧しいながらも平和に暮らしている。ロマの母親は既に亡くなり、コーリャはリリアと再婚していた。しかしロマは若い継母に懐かず反撥ばかりで父親の頭を悩ませている。そんなある日、コーリャの友人で弁護士のディーマがモスクワからやって来る。町に開発計画が持ち上がり、ヴァディム市長はコーリャの土地を強引に買収しようと目論んでいたが、祖父の代から住んでいる土地を離れたくないコーリャはそれに反撥し裁判沙汰になっている。ディーマの努力にも関わらず、市とコーリャの間で行われた訴訟の結果はコーリャの敗北だった…
コーリャ(ニコライ)・セルゲーエフにアレクセイ・セレブリャコフ。
リリアに「エレナの惑い/2011」のエレナ・リャドワ。
ディーマ(ドミトリー)・セレズニョフに「360/2011」のヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ。
ヴァディム市長に「12人の怒れる男/2007」のロマン・マディアノフ。
コーリャの息子ロマにセルゲイ・ポホダーエフ。
リリアの友人アンジェラにアンナ・ウコロワ。
アンジェラの夫パーシャに「エレナの惑い」アレクセイ・ロズィン。
監督、脚本は「父、帰る/2003」「ヴェラの祈り/2007」「エレナの惑い」のアンドレイ・ズビャギンツェフ。
憎々しげな悪徳市長ヴァディムの法を犯した行動に唖然とする。
中盤前くらいにリリアとディーマが不倫の関係にあることが描かれる。リリアを愛してやまないコーリャはどうしようもないながらも二人の関係を許すことになる。
かつては親友だった弁護士のディーマは卑怯にも逃げ出してしまった。心から妻子を愛する“善人”のコーリャが気の毒でならない。
コーリャは町中で出会った神父に“神はどこにいるのか?”と聞く。次から次へと不幸に見舞われるコーリャにとって神の存在など信じられなかったに違いない。
リリアの死に市長はからんでいたのだろうか?と想像逞しくなるが、ドラマの中で結果は明かされない。
ラスト、ヴァディム市長たちが祈りを捧げるロシア正教会のシーンを見て、彼らにとっての宗教の重さをしみじみと感じる。
原タイトルは“リヴァイアサン/巨大なもの”。スクリーンにコーリャ一家が住む近くの浜辺に白骨化し波に洗われる“リヴァイアサン”が何度か現れる。それはドラマを象徴するかのように、悲しげに映る。寒々とした海辺の町の映像が美しい。
上映時間は2:20。でもドラマに引き込まれていたので長さは全く感じなかった。
邦題は意味深い。
昨年の12月に「ヴェラの祈り」と「エレナの惑い」が公開された時に見たかったが叶わなかった。機会があれば見てみたい。
新宿武蔵野館にて

