「Barbara」2012/ドイツ
![]() バルバラに「イェラ/2007」のニーナ・ホス。 アンドレにロナルト・ツェアフェルト。 秘密警察のシュッツに「白いリボン/2009」「ミケランジェロの暗号/2010」「アンノウン/2011」「戦火の馬/2011」のライナー・ボック。 少女ステラにヤスナ・フリッツィー・バゥアー。 バルバラの恋人ヨルクに「ブッデンブローク家の人々/2009」のマルク・ヴァシュケ。 監督、脚本はクリスティアン・ペツォールト。 ![]() 少々能天気なバルバラの恋人ヨルクと誠実な医師アンドレが対照的。ラスト、アンドレを選ぶバルバラに同じ思いを抱いた。 ヨルクとバルバラが森の中や、外国人専用ホテルで逢瀬を重ねる。ほぼ自分のことしか考えてなさそうに見えるヨルクはバルバラに早く西へ来て欲しいというばかり。 一方で心優しいアンドレは秘密警察のシュッツの妻が病魔に冒され往診したりもする。医師としての誇りを持つバルバラとアンドレが惹かれ合うのは当然のことと思えた。 往診のお礼にもらった野菜で“ラタトゥイユを作るから食べにこない?”とバルバラを誘うアンドレ。キッチンに立つアンドレと、そわそわ落ち着かないバルバラがなぜかスゴく新鮮で、素敵なシーンだった。 1980年夏、東ドイツ。都会の大病院で活躍する優秀な医師バルバラが西側への移住申請を却下され片田舎の小さな病院に左遷される。誰もが敵に映るバルバラは誰とも話さず一人心を閉ざしている。そんなバルバラに声をかける同僚医師のアンドレ。家まで車で送るというアンドレのオファーにただ一度承諾したバルバラだったが、以後又自身のカラに閉じこもってしまい、来ないバスをあきらめ自転車通勤を始める。そしてバルバラと共に自転車通勤を始めるアンドレ。“海の側を通ると近道だよ…”というアンドレに“海はキライ。”と答えたバルバラは一人立ち去ってしまう。その海とはバルト海のこと。ヨルクの手引きによってバルバラの西側への脱出はバルト海を渡ることだった。きっとバルバラは海を見たら飛び込んでしまいたいくらいの気持ちを抱いていたのだろう。だからまだ今は海を見たくなかったに違いない。 秘密警察の存在におびえるバルバラ。本作を観た人は誰もが「善き人のためのソナタ/2006」を思い出すはず。 とても、とても地味な映画でストーリーは淡々と進んで行く。盛り上がりも何もない。睡魔に襲われるか…なんて思いながら見ていたが、医師として献身的に身を捧げるバルバラとアンドレの姿に目が離せなかった。 一方で、強制収容所から脱走してきた少女ステラはバルバラに全幅の信頼を寄せ、バラバラもそれに答える。自分の代わりにステラを西側へ送るバルバラの心境は?静かに、ひたすら静かに人の心に訴える良い作品だった。 “外国人専用ホテル”の存在がとても興味深かったが、今はもうないだろうな? ヒロイン、バルバラを演じたニーナ・ホスは凛とした雰囲気が有能な医師役にぴったり。そしてアンドレに惹かれてはいるが、そのアンドレをも疑う気持ちを捨てられない孤独なバルバラ役がパーフェクト。 ニーナ・ホスを観たのは「イェラ」以来5年ぶり。ちょっと老けた感じで、役柄も全く違っているので、後で調べて彼女だとわかった。 アンドレ役のロナルト・ツェアフェルトは初めて観たドイツ人俳優。誠実で温厚な役が似合っている。 渋谷Bunkamura ル・シネマにて
by margot2005
| 2013-02-06 00:37
| ドイツ
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Comments(4)
東西ドイツの時代ならではの作品でしたね。
『善きソナ』とはまた違った角度からの視点。なかなか私は好きです。
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はじめまして
アンドレ役の方は東ドイツというには柔和なイメージでした でも彼が細身の厳しそうな俳優だったら作品がギスギスしてしまいますね(笑) 意外に多くを語ろうとしていない作品で気に入りました またお邪魔します
colさん、こんばんは。
見に来ていただいて嬉しいです。 さてアンドレはナイスな役柄でした。そういや西ドイツぽかったですかね? そう彼の明るさというな柔和な姿が映画を優しくしていたように思われます。 気に入られました?地味ながら素敵な映画でしたね。
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