2012年 07月 03日
「愛の残像」
フランソワに「ドリーマーズ/2003」「美しいひと/2008」のルイ・ガレル。
キャロルに「石の微笑/2004」「ゼロ時間の謎/2007」のローラ・スメット。
エヴに「マリー・アントワネット/2006」のクレマンティーヌ・ポワダッツ。
監督、脚本は「夜風の匂い/1999」「恋人たちの失われた革命/2005」のフィリップ・ガレル。
映画はモノクローム。衝撃的なラストはこれぞフランス映画という終わり方で、キャロルとフランソワには“退廃的”という言葉がとても似合う。そして究極の“愛と死”のドラマは白黒映像でさらに美しさに拍車がかかる。
ドラマの時代設定は間違いなく21世紀のパリ。キャロルの墓に刻まれた日付がそれを記している。しかしキャロルもフランソワも携帯を持っていなくて、互いに手紙を書くのだ。おまけにフランソワのカメラはデジタルじゃなくてフィルム式。ちょっと思ったのは、キャロルの夫が携帯を持っていれば、帰って来ることを妻に連絡し、間男のフランソワは慌てふためいてアパルトマンから逃げ出さなくともすんだはずだ。あえて古くさく描いたのはフィリップ・ガレルの狙いなのだろう。
パリに住むキャロルは女優でフランソワは若き写真家。ある日二人は仕事で出会い激しい恋に落ちる。しかしキャロルは人妻。日々逢瀬を重ねる二人。しかしある日、アメリカでの仕事を終えたキャロルの夫がパリのアパルトマンに戻って来る。それが二人の間にぎくしゃくとした関係をもたらし始める。そして奔放な性格のキャロルは自宅パーティの席でもフランソワを無視して他の男と戯れるのだ。嫉妬のまなざしでキャロルを見つめるフランソワ(ルイ)の目がコワいほど妖しい。
やがてフランソワとの関係が終わってしまったキャロルは精神に異常をきたし病院に収容されるが、退院後自殺してしまう。
一方でキャロルと別れた後美しいエヴと出会ったフランソワは幸せな日々を過ごすようになる。しかし鏡の中にキャロルの姿(亡霊)が見え始める。キャロルは鏡の向こうからフランソワに”愛しているならわたしの所に来て!”と訴える。エヴが妊娠したため結婚を決心したフランソワの前にキャロルの亡霊が幾度も現れる。白昼夢に出現するキャロルを消すことができないフランソワは動揺し始める。
原タイトルは“夜明けの境界”境界とはフランソワが見つめる鏡?
本作カラーだったらどうだろう?と想像してみた。キャロルとフランソワのシーンはアップが多い。アパルトマンの部屋で一人嘆き苦しむキャロル…精神科の病院に収容されたキャロルの姿がカラーだと強烈過ぎて目を背けたくなったかも知れない。
ローラ・スメットはジョニー・アリディとナタリー・バイの娘。先月wowowでクロード・シャブロルの映画を何作か放映していた。その際、ヒロインがナタリー・バイの未公開映画「悪の華/2003」を観た。娘のローラ・スメットは母親に良く似ている。
ルイ・ガレルは監督フィリップ・ガレルの息子。
ガレル親子の次作「灼熱の肌/2011」は7/21公開予定。
渋谷 シアター・イメージフォーラムにて