2012年 06月 24日
「ファウスト」

ハインリヒ・ファウストにヨハネス・ツァイラー。
高利貸(悪魔)のマウリツィウス・ミュラーにアントン・アダシンスキー。
マルガレーテにイゾルダ・ディシャウク。
ワーグナー(ファウストの助手で彼を慕う学者)に「アイガー北壁/2008」「ミケランジェロの暗号/2010」のゲオルク・フリードリヒ。
高利貸の妻に「そして、私たちは愛に帰る/2007」のハンナ・シグラ。
監督、脚本は「チェチェンへ アレクサンドラの旅/2007」「ボヴァリー夫人/2009」のアレクサンドル・ソクーロフ。


ロシアの監督アレクサンドル・ソクーロフが文豪“ゲーテのファウスト”を初めて映画化した幻想的かつ壮大なるドラマ。舞台はドイツで、台詞もドイツ語。very哲学的ながらveryファンタスティックでもある。
ファウストが美しい娘マルガレーテを得るため高利貸ミュラー(悪魔)と取引をする。悪魔と自らの魂の取引…それはとてもキリスト教的でピンと来ないが映像の美しさに圧倒される。当然のことながらバックに流れるクラシカルなmusicも素晴らしかった。しかし上映時間は140分と少々長い。途中で睡魔が襲ってきたが何とか持ちこたえた。
金曜日の割引ディ(土曜日(6/2)公開の次の週)の最終回に観に行ったため女性たちでいっぱい。こんな哲学的なロシア製作の映画にたくさんの人が集まるとは思ってもいなかったのでちょっとした驚きだった。
19世紀初頭のドイツの町。町とはいえ1800年代なので、町は森の中にあり、人々の暮す家や酒場、そして教会などがとてもとても幻想的なのだ。
ファウストがマルガレーテを伴って行動する深い森のシーンと湖のシーンはスゴく印象的。
ラスト近くに登場する湧き出る温泉…あれはどこだろう?と想像していたら、ロケはチェコ・リパブリックとアイスランドで行われたそう。
アレクサンドル・ソクーロフ作品を過去に観たのは上に書いた2本のみ。ソクーロフ版「ボヴァリー夫人」は決して美しくはない普通のobasanがヒロインを演じ、エロスの世界が少々クドかった。一方で、レビューにはまるでドキュメンタリーのような反戦映画と書いた「チェチェンへ アレクサンドラの旅」は中々良かった。
本作はアレクサンドル・ソクーロフ映画の中で一番心に残る作品であることは間違いない。
シネスイッチ銀座にて

