2011年 08月 28日
「ミラル」

ヒンドゥ・フセイニに「シリアの花嫁/2004」「ミュンヘン/2005」「マリア/2006」「画家と庭師とカンパーニュ/2007」「扉をたたく人/2007」「リミッツ・オブ・コントロール/2009」のヒアム・アッバス。
ミラルに「スラムドッグ$ミリオネア/2008」のフリーダ・ピント。
ジャマールに「シリアナ/2005」「マリア/2006」のアレクサンダー・シディク。
ハーニに「ミュンヘン」のオマー・マトワリー。
ナディアに「キャラメル/2007」のヤスミン・アル・マスリー。
ファーティマにルバ・ブラル。
エディに「インサイド・マン/2006」「パリ、ジュテーム/2006」「フェアウェル/哀しみのスパイ/2009」「アンチクライスト/2009」のウイレム・デフォー。
ベルタに「上海の伯爵夫人/2005」「いつか眠りにつく前に/2007」「つぐない/2007」「ジュリエットからの手紙/2010」のヴァネッサ・レッドグレーヴ。
監督は「潜水服は蝶の夢を見る/2007」のジュリアン・シュナーベル。


“パレスチナ問題”を描いてはいるが、軸はイスラエルに生きるヒンドゥ、ミラル、ナディア、ファーティマのパレスチナ人女性4人。これは人間ドラマであり、実話である。1994年に亡くなったヒンドゥの葬儀から始まり、その後は回想の形で進行する。
1948年、イスラエル建国宣言の1ヶ月前のエルサレムの路上にはユダヤ民兵組織により親を殺され、孤児となった55人の子供たちがいた。ヒンドゥ・フセイニは泣き叫ぶ彼らを保護し、自らの資産を投じて孤児を収容する施設を創設する。その学校はダール・エッティフル(子供の家)と命名される。
義父に犯され耐えきれなくなったナディアは家を飛び出す。そして小さな事件を起こした彼女は刑務所に収監され、そこで元看護士だったファーティマと出会う。後にナディアは彼女の兄ジャマールと結婚する。ナディアにはミラルという一人娘がいたが、心身共に絶望した彼女は入水自殺する。
母を亡くし、7歳になったミラルは父ジャマールに伴われ“ダール・エッティフル”の門をくぐる。そしてヒンドゥは彼女を優しく迎え入れる。やがて17歳に成長したミラルが子供たちに勉強を教えるため難民キャンプへと向かう。そこで彼女が目にしたこと…住民たちの家を破壊しにやって来たイスラエル軍。しかし住民たちは何もせずただ耐えているだけ。ヒンドゥに訴えても返って来る答えは同じ“耐えなさい。”だった。やがて若き活動家ハーニと出会い、彼が掲げる理想に共感したミラルはイスラエルに敵対心を抱くようになる。そしてそれは恩師ヒンドゥや父ジャマールの願いを裏切ることだった。
過酷な運命に翻弄されながらも強く生きたミラルは後に世界的なジャーナリストとなる。この女性の意志の強さ、逞しさは尊敬に値する。
イスラエル、ナザレ生まれのInternational女優ヒアム・アッバスにはうってつけの役柄。ミラルを演じたフリーダ・ピントに関しては「スラムドッグ$ミリオネア」のイメージが抜けなくて…特にラストのダンス・シーンとか…なのでアラブ人役は少々違和感あった。
チラシに“ラストシーンは、観る者の心を揺さぶってやまない。”と記されているが、観終わって“パレスチナ問題”についてもうちょっと知識があれば良かったなと痛切に感じたことと、ポール・ニューマン主演の名作「栄光への脱出/1960」を思い出した。
お気に入りの個性派俳優ウイレム・デフォーは、ヴァネッサ・レッドグレーヴ演じるベルタの甥エディ役。ヒンドゥにほのかな想いを寄せる軍人役で、数シーンにしか登場しないが、相変わらずこの方存在感あり。
渋谷 ユーロスペースにて

