「蜂蜜」

「Bal(Honey)」 2010 トルコ/ドイツ
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監督、脚本にセミフ・カプランオール。
少年ユスフにボラ・アルタシュ。
父親ヤクプにエルダル・ベシクチオール。
母親ゼーラにトゥリン・オゼン。
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オープニングからしばらくしてヤクプが愛馬を伴って森に入るシーンが現れる。ヤクプはハチ箱を据え付けるため木に登りを始める。これが想像以上に高い木なのだ。ハチ箱(養蜂)についての知識は全くないが、あのような高い木の枝にハチ箱を設置するなんて知らなかった。しかしそれが災いとなる。登るため木にかけた命綱のロープはヤクプの重みに耐えられなく、宙つり状態になってしまう。やがて、ヤクプは人がほとんど入り込まない深い森に一人取り残されてしまう。

ある日、父親が忽然と姿を消してしまい戸惑う母と息子。父親の不在から吃音を持つユスフは話さなくなってしまう。ヤクプが森で木に宙つり状態になったのは息子ユスフの夢なのか?それともやはり現実?観るものも夢か現実か分からなくなってしまう。

ユスフは父親が森へ行く時、“ぼくも一緒に行っていい?”と尋ねる。しかし父親は”家(母親)は誰が守る?”と答える。たった6歳の少年でも“家(母親)を守って!”と言い残した父親の言葉を理解し忘れなかった。食事の度テーブルに置かれたミルクを飲むのが嫌だったユスフ。いつも父親がユスフの代わりに飲んでくれたのだ。しかし父親がいなくなった今、テーブルに置かれたミルクを一気に飲みほす。父親の代わりに“ぼくが母を守らなきゃ…”と肝に命じたユスフの心が見えるようだった。

父親が事故にあった森に入ったユスフが大きな木の根元に身を置くところでエンディングで迎える。その木は父親が登った木だったかも知れない。大きく広がる木の根は、それに身を変えた父親が息子を優しく抱きしめるようにも見え、ユスフに対してどこまでも愛情深く、心優しいヤクプを思い浮かべた。

ヤクプを演じるエルダル・ベシクチオールが素晴らしい。でもそれ以上にユスフを演じるボラ・アルタシュがとんでもなく素晴らしいのだ。6歳の小学生役の彼は撮影時8歳だったそう。ユスフの学ぶ学校のシーンがたびたび登場し、まだあどけない表情のボラ・アルタシュは実にキュートだ。

映画の中に登場する美しい景色はトルコ共和国の黒海沿岸東端に位置し、隣国グルジアとの国境に近いリゼ県のcamlihemsin(チャムルヘムシン)。映画に現れる森は幻想的で、まるで絵はがきのように美しい。

「蜂蜜」はセミフ・カプランオールが同じ人物を主人公にして作った「卵/2007」「ミルク/2008」に続く3部作のラストの作品。「卵」「ミルク」も7月末に一般公開されるので是非観てみたい。

銀座テアトル・シネマにて
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by margot2005 | 2011-07-10 23:07 | ドイツ | Trackback(6) | Comments(0)
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