2011年 05月 27日
「木漏れ日の家で」

アニェラにダヌタ・シャフラルスカ。
息子にクシシュトフ・グロビシュ。
孫娘にパトルィツィヤ・シェフチク。
監督、脚本はドロタ・ケンジェジャフスカ。
91歳のアニェラはパートナーの愛犬フィラ(フィラデルフィア)とワルシャワ郊外の古い館に暮らしている。テラスで一緒に朝食を取り、近所の家を双眼鏡で覗くのが一番の楽しみ。
ポーランド人が飼っている犬の名前がアメリカ合衆国の大都市フィラデルフィアというのも中々粋だ。フィラは多分♂だと思うが、この犬(雑種??)の表情がスゴく良い。人間と犬ではあるが、互いに支え合って生きているアニェラ&フィラ。犬って癒してくれるんだなぁとしみじみ思う。
インターナショナル・タイトルはそのものずばり“死の時”で、91歳のアニェラが死を迎えるまでの物語。しかし邦題はとてもソフト。日本人て“死”という言葉をタイトルに入れることを好まないもかも知れない。
アニェラの死があまりにも、穏やかで荘厳で美しくて感動してしまう。映画を見終わって数十年後の自分の姿を想像し、アニェラのような死を迎えられるよう願わずにはいられなかった。
年に数回訪ねて来る息子と孫娘。息子の妻とは折り合いが悪くほとんど会うこともない。息子は近所の成金に母親の住む家を高い価格で売り飛ばそうとしている。そして孫娘は祖母の宝石が欲しくてたまらない。
一方で近所の悪ガキがアニェラの家に忍び込み盗みを働こうとする。悪ガキの侵入を防ぐことは出来たが、金をせびる彼に不満が爆発する。
やがて思い出がいっぱい詰まった古い家を息子に譲ろうと考えていたアニェラは物欲息子&孫に見切りを付け家を寄付してしまう。
全編モノクローム映像の中、若くて美しいアニェラがバレエを踊ったり、庭で恋人(夫)?とワルツに興じる過去の姿が映し出される。孤独ではあるが、思い出がいっぱい詰まった家に“死の時”まで住めるなんて、なんとアニェラは幸せな人なんだろうと羨ましくもあった。
アニェラを演じるダヌタ・シャフラルスカ。しわだらけではあるが、足腰はしっかりしていて驚くばかり。庭でブランコを揺らすシーン…ばあさんとブランコ??これほど不釣り合いのものはないかと思われるが、アニェラだとサマになるのだ。
公開2週目くらいの週刊誌に、穏やかな死を描いたこの作品に高齢者たちが列をなしている…というような記事が掲載されていたのを思い出した。私が観た4月のウイークディの最終回も中高年が目立っていた。

神保町 岩波ホールにて

