「トスカーナの贋作」

「Certified Copy」2010 フランス/イタリア
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彼女(Elle)に「イン・マイ・カントリー/2004」「綴り字のシーズン/2005」「隠された記憶/2005」「パリ、ジュテーム/2006」「こわれゆく世界の中で/2006」「夏時間の庭/2008」「PARIS/パリ/2008」のジュリエット・ビノシュ。
ジェームズにウイリアム・シメル。
監督、脚本は「明日へのチケット/2005」のアッバス・キアロスタミ。
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イタリア、南トスカーナ地方。ある日、この小さな村で英国の作家ジェームズの“芸術におけるオリジナルと贋作の問題”についての講演が行われた。講演を聞きに来ていたフランス人女性は村でギャラリーを経営している。彼女は通訳にメモを渡しジェームズに訪ねて来るよう依頼し席を立つ。講演の後ギャラリーに姿を現したジェームズは彼女に村を案内して欲しいと願い出る…

台詞はフランス語と英語とイタリア語。彼女はイタリア在住のフランス人。彼、ジェームズはロンドンからやって来た英国人。

映画のチラシに“一見、男と女の出会いをきわめてロマンティックに描いたラヴ・ストーリー。”と表現してあるが、そうだろうか?観ているものはあまりロマンティックな気分になれない気がする。それというのも彼女の口から飛び出す言葉は夫への愚痴ばかり。夫役のジェームズも謝るどころか開きなおっているようにも見える。

オープニング、ジェームズの講演会場に姿を現した彼女。そして彼女を追って一人息子が会場にやって来る。中座を余儀なくされた彼女はジェームズの通訳にメモを渡し会場を後にする。そして、”ママはあの作家(ジェームズ)が好きだから会いたいって手紙を渡したんでしょ?”と突っ込まれる。
ストーリーが展開されて行く中で、息子が彼女に言ったことを思い出した。彼女は始めからジェームズに惹かれていたに違いない。一方で、ジェームズの個人情報はいっさい語られないので、彼がシングルなのか?妻子がいるか全く分からない。彼も彼女に好意を抱いていたのだろうか?

カフェの女主人に夫婦と間違われてしまった彼女とジェームズ。彼女は女主人に弁解することもなく夫婦のフリをしてしまう。最初彼女とジェームズの会話は英語で語られる。カフェを出て歩き始めた二人。彼女の携帯に息子から電話がかかり、もちろんフランス語で話す。出会った当初二人は互いの共通語である英語で話していた。しかしこの辺りから彼女はフランス語、ジェームズは英語というやり取りになって行く。そしてラストに近づくとジェームズもフランス語で会話し始める。15年間連れ添った夫婦のフリする二人の会話がフランス語で交わされるのはとても自然だった。
しかし、ラストの、ラストまでこの二人はどこまで“PRETEND/フリして”いるのか分からない。ホテルのバスルームにこもったジェームズは教会の鐘の音を聞く。鐘は確か8回鳴った。彼女と車で出かける前、ジェームズは“9時には戻らなくてはならない。”と言っている。鐘を聞いたあの後二人はどうしたのだろう??9時の鐘の音を二人で聞いたかどうかは想像するしかない。

15年では長年連れ添った夫婦とは呼べない気がするが、離婚組が多い昨今なら15年は長い部類に入るのだろう。夫婦だからこそ理解出来る他愛ない会話で成り立つドラマ。私的にロマンティックなラヴ・ストーリーではなかったが、素晴らしく、素敵な映画で、もうトレヴィアン!だった。
2010年のカンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞したジュリエット・ビノシュがとても魅力的。
ジュリエット・ビノシュは「存在の耐えられない軽さ/1988」で初めてお目にかかって以来、たくさん観て来た。お気に入りビノシュ映画は「トリコロール/青の愛/1993」とか、「サンピエールの生命/1999」とか、「シェフと素顔と、美味しい時間/2002」も良かったし、「夏時間の庭」のビノシュは相変わらずキュートだった。
ジェームズ役のウイリアム・シメルはなんとオペラシンガーだそう。
渋谷 ユーロスペースにて
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by margot2005 | 2011-02-23 00:29 | フランス | Trackback(14) | Comments(2)
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2010年 フランス/イタリア 107分 監督:アッバス・キアロスタミ 出演:ジュリエット・ビノシュ ウィリアム・シメル ジャン=クロード・カリエール アガット・ナタンソン ジャンナ・ジャンケッティ  イランの巨匠A・キアロスタミ監督が新たに生み落とした眩惑的傑作。語り=騙りの名手たる彼ならではの映画魔術をここでも存分に発揮している。イタリアのトスカーナ地方で初めて出会って行きずりの会話を始めたかに思えた1組の男女の姿が、物語が進むにつれて、ある時は夫婦ごっこを楽し...... more
Commented by ryoko at 2011-02-28 22:11 x
こんばんは。TBありがとうございました。
二人の関係は?あの後二人は・・・?で不思議な迷路に紛れ込んだような感じでした。
「シェフと素顔と、美味しい時間/2002」は私も好きな映画です。
Commented by margot2005 at 2011-03-09 22:27
ryoko さん、こんばんは。
お返しが遅くなりました。
さてこの映画は私的にぞくっと来ました。
「シェフと素顔と、美味しい時間/2002」...また見たくなりました。DVDを探すことにしましょう。
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