2021年 03月 03日
「アンコントロール」
「Shorta」…aka「Enforcement」2020 デンマーク

”制御不能な怒りに陥った人々に命を狙われた警官2人組の戦いを描いたデンマーク発のクライムアクション。”
デンマークのスヴァレゴーデンのゲットー(マイノリティの密集居住地)でタリブという19歳の青年が嫌疑不十分のまま警察に拘束され、住人たちの不満は頂点に達しつつあった。この地を定期的に巡回する警官マイクとイェンスは反抗的な一人の少年を連行する途中でタリブの死を報じるニュースを耳にする。やがて怒りを爆発させた住民たちに囲まれてしまった二人は少年アモスと共に迷路のような建物に逃げ込む…
タリブの死により警察に復讐を誓うゲットーに住むパキスタン移民(イスラム教徒)の若者たち。警官マイクとイェンスとの闘いは半端なく凄まじい。
マイクとイェンスは何度も本部に助けを求める。しかし”助けに行けない!自分たちで身を守れ!”ラストの交信の言葉だった。
北欧は他のヨーロッパ諸国同様移民が多く、ドラマの中で”ここはデンマークではない。”と言うイェンスの言葉が印象に残る。
アモスの母が警官マイクを助け、アモスが家で待つ母の元へ戻ることができたことに安堵した。イェンスも無事妻の元に戻ったに違いない。
マイクに「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮/2012」「ヴァルハラ 神々の戦い/2019」のヤコブ・ローマン。
イェンスにシモン・セアルス。
アモスにタレク・ザヤット。
アモスの母にウズレム・サグランマク。
監督はフレデリック・ルイ・ヴィー&アンデルス・ウールホルム。
ヒューマントラストシネマ渋谷にて(未体験ゾーンの映画たち2021/既に上映終了)
2021年 03月 02日
「マーメード・イン・パリ」
「Une sirène à Paris」…aka「A Mermaid in Paris」2020 フランス


大雨の影響で大増水となりパリの街は浸水してしまう。セーヌ川に浮かぶ老舗のバー”フラワーバーガー”のオーナー、カミーユの息子ガスパールは店でウクレレを奏でるパフォーマーとして働いている。そんなある夜、傷を負った人魚を見つける…
ガスパールは人魚を助け家に連れ帰る。ルラは美しい歌声で男を虜にし、恋に落ちた彼らの心臓を破裂させ命を奪っていた。しかしガスパールは多くの失恋から、二度と恋をする感情を持つことができないでいたためのルラの歌声もガスパールには効かなかった。
隣人のロッシがガスパールとルラを結びつけようと奔走する姿が面白くて…ロッシ・デ・パルマ最高!
恋人をルラに殺された医者のミレナを演じるロマーヌ・ボーランジェや、カミーユ役のチェッキー・カリョなどの名優が脇を固めている。
ラストは少々切ないが、何かが起こりそうな気配も…。
マチアス・マルジウの長編実写映画作品はファンタジックなロマンスコメディで素敵な映画だった。
トム・ハンクスの「スプラッシュ/1984」を思いだした。
新宿ピカデリーはシネコンながら、ミニシアターで上映されることが多いヨーロッパ映画の上映がある。フランス映画が多いかも知れない。観たい映画が都内ではここでしか上映していないことが多々あり、今ではお気に入り映画館の一つ。
ガスパールに「再会の夏/2018」のニコラ・デュヴォシェル。
ルラにマリリン・リマ。
ロッシに「マダムのおかしな晩餐会/2017」「テリー・ギリアムのドン・キホーテ/2018」のロッシ・デ・パルマ。
ミレナに「太陽と月に背いて/1995」「レンブラントへの贈り物/1999」「ルノワール 陽だまりの裸婦/2012」のロマーヌ・ボーランジェ。
カミーユに「ベル&セバスチャン/2013」「マグダラのマリア/21018」のチェッキー・カリョ。
監督はマチアス・マルジウ。
新宿ピカデリーにて
2021年 02月 26日
「天国にちがいない」
「It Must Be Heaven」2019 フランス/カタール/ドイツ/カナダ/トルコ/パレスチナ



監督、脚本、製作と主演に「セブン・デイズ・イン・ハバナ/2011」のエリア・スレイマン。
スレイマンの友人で俳優役に「ルドandクルシ/2008」「ジュリエットからの手紙/2010」「ノー・エスケープ 自由への国境/2015」のガエル・ガルシア・ベルナル。
ナザレの邸宅で近所に住む老人との何気ないやりとり。勝手に入り込んだ隣人がレモンの実をもぎ取っているのを眺めるスレイマン。
パリのエピソードでは名所巡りの後にカフェにいるスレイマンが街行くおしゃれな女性(彼女たちはスローモーション)を鑑賞している。
スレイマンの友人で俳優のガエル・ガルシア・ベルナルが映画会社のプロデューサーを紹介する。しかしその企画は残念ながらボツとなる。
ニューヨークではタクシー運転手が”パレスチナ人に初めて会った。記念にただにしよう!”と語る台詞が印象的。
10年ぶりにメガホンをとったというイスラエル領ナザレに生まれたパレスチナ系イスラエル人エリア・スレイマンについては良く知らない。
映画を観るきっかけとなったのはシアターで観た予告編の映像がとても美しくて興味を惹かれたから。ナザレ、パリ、ニューヨークが美しく描かれている。
オープニングは正教受胎告知教会 (Greek Orthodox Church of the Annunciation)のシーン。昨年この教会をNHKBSのドキュメンタリー番組で見た覚えがある。
世界中から信者が訪れるというスーパー厳粛な教会を舞台に、これからコメディでも始まる?と、勘違いしそうなオープニングが笑える。
オムニバス映画「セブン・デイズ・イン・ハバナ」のレビューにエリア・スレイマン監督の「初心者の日記/木曜日」が良く理解できない…と書いている。でも本作は皮肉を込めたユーモアがなんだかほのぼのとしていて、飄々とした雰囲気のエリア・スレイマンと合致して素敵な感じ。
映画は第72回カンヌ国際映画祭で特別賞と国際映画批評家連盟賞を受賞。
新宿武蔵野館にて
2021年 02月 25日
「私は確信する」
「Une intime conviction」…aka「Conviction」2019 フランス/ベルギー


2000年2月のフランス、トゥルーズ。38歳の女性スザンヌが失踪し、夫で大学の法学部教授ジャック・ヴィギエに殺人の容疑がかけられる。しかし遺体も動機も証拠もない。ジャックの無実を信じるノラは敏腕弁護士デュポン=モレッティに弁護を頼みこむ。ノラの息子はジャックの娘クレマンスの家庭教師という縁があった。最初は相手にしなかったモレッティもノラの熱意に負け弁護を引き受け裁判が始まる…
冤罪か?無罪か?クライマックス…迫力あるデュポン=モレッティの最終弁論が胸を打つ。
映画はフランスで実際に起こった未解決事件(ヴィギエ事件/2010年3月判決)を基に描いている。二審の弁護士デュポン=モレッティは実在の人物で、昨年フランスの新内閣の法務大臣に就任した。
最初、レストランのシェフであるノラがなぜここまで事件にのめり込むのか理解できなかったが、エンディングでノラは架空の人物と記され、彼女の存在は地味な法廷ドラマを盛り上げるために作り上げられたのだと想像した。ノラが電話の通話記録を調べるシーンは登場人物が多いのと関係が複雑で少々解りづらく困ったが、”ヒッチコック狂の完全犯罪”と物議を醸した未解決事件の裁判は、モレッティの助手となったノラの活躍で興味深くドラマに熱中した。
フランスでは年間多数の失踪者がありながら事件は解決しない実態があるという。で、本作がフランスで大ヒットしたのは当然のことかと思う。
マスコミが”ヒッチコック愛好家の完全犯罪”とでっちあげたため、検察官にお気に入りのサスペンス?はと聞かれ、ジャックが「間違えられた男/1956」と答える。これ観てみたい。
ノラに「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢/2018」のマリナ・フォイス。
エリック・デュポン=モレッティに「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!/2018」のオリヴィエ・グルメ。
ジャック・ヴィギエに「ポーラX/1999」「ハリー、見知らぬ友人/2000」のローラン・リュカ。
クレマンスに「燃ゆる女の肖像/2019」のアルマンド・ブーランジェ。
スザンヌの愛人デュランデに「大統領の料理人/2012」「ボヴァリー夫人とパン屋/2014」「天国でまた会おう/2017」のフィリップ・ウシャン。
ノラの恋人ブルノに「レ・ミゼラブル/2019」のスティーヴ・ティアンチュー。
監督、脚本、脚色、原案はアントワーヌ・ランボー。
新宿武蔵野館にて
2021年 02月 23日
「ダニエル」
「Daniel Isn't Real」2019 USA


”自らが生み出した空想上の親友<ダニエル>に翻弄される青年の運命を描いたスリラー。”
内向的なルークは孤独と不安から長年封印していた空想上の親友ダニエルを呼び起こす。ルークにしか見えないダニエルは手助けをしていたが、次第に彼を翻弄し支配するようになる。
本国ではティム・ロビンスとスーザン・サランドンの息子マイルズ・ロビンス&アーノルド・シュワルツェネッガーの息子パトリック・シュワルツェネッガーの競演が話題を集めた感あり。
シュワルツェネッガーの息子は父似ではないが、ロビンスの息子は父の面影を感じる。
池袋で上映していたので鑑賞。普段ミニシアターで観ることがほとんど。いつものようにネットで前の席をゲット。シネコンのスクリーンは大きくて音もデカいことをしっかり忘れていた。おまけに映画はスリラーでありホラーなので迫力あり過ぎで疲れた。
観に来ていたのはかなり少なくて、なぜか?一人を除いて全員女性だった(公開の次の週の月曜日)。
主演作初めてのマイルズ・ロビンスが頑張っている。そしてダニエル役のパトリック・シュワルツェネッガーは怪しい雰囲気が似合う。
メアリー・スチュアート・マスターソンが統合失調症のルークの母クレア役で存在感あり。
ルークに「ハロウィン/2018」のマイルズ・ロビンス。
ダニエルに「ハッピーエンドが書けるまで/2012」のパトリック・シュワルツェネッガー。
クレアに「SKIN/スキン/2018」のメアリー・スチュアート・マスターソン。
キャシーにサッシャ・レイン。
ソフィにハンナ・マークス。
監督、脚本はアダム・エジプト・モーティマー。
グランドシネマサンシャインにて