2019年 11月 19日
「永遠の門 ゴッホの見た未来」
「At Eternity's Gate」2018 アイルランド/スイス/UK/フランス/USA
偉大な画家フィンセント・ファン・ゴッホの晩年を描いた伝記ドラマ。
生涯兄フィンセントを支援し、理解した弟テオ。ドラマから二人の深い愛情がひしひしと伝わってくる。
兄の死後、後を追うように翌年亡くなったのも良くわかる。
療養所の聖職者が”君は絵描きなのか?とゴッホに何度も尋ねる。”私は絵描きです。”と答えるゴッホ。聖職者の手にはゴッホが描いた絵がある。やがて退院を認めた聖職者はその絵を何度も見返し絵を裏返しにして椅子に放置する。あのシーンからゴッホの絵を理解しない聖職者の行動が伺えて興味深い。
一方で、部屋に飾ってあるゴッホの”ひまわり”の絵をゴーギャンが褒め、それを欲しがったという事実が面白い。
ゴッホは”誰のせいでもない”という言葉を残して亡くなり、死は自殺ではない展開で描かれている。
亡くなったゴッホの棺の周りには彼の描いた絵が並べられた。そのシーンは「ゴッホとヘレーネの森 クレラー・ミュラー美術館の至宝」で亡くなったヘレーネの棺がクレラー・ミュラー美術館のゴッホの絵の前に置かれた様とダブって見える。
マッツは1シーン、マチューは2シーンのみの出演。
ポール・ガシェ医師を演じたマチューは雰囲気が似ていてナイスキャスティング。
他にもニエル・アレストリュプ、アンヌ・コンシニ、ヴァンサン・ペレーズなどフランスの名優が出演。
フィンセントとテオは4歳違いの兄弟。演じるウィレム・デフォーとルパート・フレンドは実際には親子ほどの年齢差がある。そこでルパート・フレンドが体重を増やし?老けメイクで挑んでいる。昔の人は今よりはかなり老けていたとは思われるが、60代で30代の役を演じるウィレム・デフォーはやはりスゴい。そして受賞はならなかったがオスカーにもノミネートされ、ヴェネチア国際映画祭では男優賞を受賞している。
ゴッホを描いたドラマ...
「ゴッホ 最期の手紙/2017」はアニメーション。シアターで見たかったが見に行けなくてwowowでの鑑賞となった。125名の画家がゴッホのタッチを描いた素晴らしいアニメーションで、郵便配達人の父から託された青年がゴッホの手紙を携え奔走するドラマはとても見ごたえがあった。
もう一本はBSで見たドキュメンタリー仕立ての「ゴッホ 真実の手紙/2010」。ベネディクト・カンバーバッチがゴッホを演じている。こちらはかなり前に見たので少々記憶が飛んでいるが、カンバーバッチがゴッホを熱演している。
ハリウッド映画「炎の人ゴッホ/1956」が見てみたい。
フィンセント・ファン・ゴッホに「セブン・シスターズ/2017」「オリエント急行殺人事件/2017」のウィレム・デフォー。
テオ・ファン・ゴッホに「スターリンの葬送狂騒曲/2017」のルパート・フレンド。
ポール・ゴーギャンに「THE PROMISE/君への誓い/2016」「スター・ウォーズ/最後のジェダイ/2017」のオスカー・アイザック。
ポール・ガシェ医師に「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢/2018」のマチュー・アマルリック。
聖職者に「悪党に粛清を/2016」「ドクター・ストレンジ/2016」のマッツ・ミケルセン。
マダム・ジヌーに「告白小説、その結末/2017」のエマニュエル・セニエ。
監督、脚本、編集は「潜水服は蝶の夢を見る/2007」「ミラル/2010」のジュリアン・シュナーベル。
角川シネマ有楽町にて
2019年 11月 11日
ゴッホ展
上野の森美術館で”ゴッホ展”を見てきた。
ゴッホの絵画はパリのオルセー美術館で見たことがある。そして日本にある”ひまわり”は6月に損保ジャパン日本興亜美術館で再び(かなり前に一度見ている)見た。
オランダ時代の作品の多くはハーグ美術館所蔵。フランス時代のものはクレラー・ミュラー美術館所蔵のものが多くあった。”糸杉”はNYのメトロポリタン美術館からやってきた。
ギャラリーのラスト近くに飾られていたのは”薔薇/オリーブを摘む人々/ガジェ博士の肖像”。ゴッホのオリーブはあまり見たことがなかったが、多くのオリーブの絵画があるそう。
ゴッホの絵画の他に”ハーグ派”の画家たちの作品も並べられていて、日本が所蔵するモネやルノワール、ゴーギャンの絵画も少し。
ゴッホは弟のテオにたくさんの手紙を書いた。その手紙(複数の友人や画家に宛てたものもあり)の一部が絵の横にありとても興味深かった。
フィンセント・ファン・ゴッホほど波乱に満ちた人生を送った画家って他にいるだろうか?10年の間に2100枚以上の絵を描いたというからスゴい!
イスラエル博物館からやってきた一番下の”麦畑とポピー”の絵画がとても綺麗でお気に入りとなった。
2020/1/13迄開催
2019年 11月 10日
「ゴッホとヘレーネの森 クレラー・ミュラー美術館の至宝」
「Van Gogh: Tra il grano e il cielo」…aka「Van Gogh: Of Wheat Fields and Clouded Skies」2018 イタリア
案内役は「歓びのトスカーナ/2016」のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。
監督はジョヴァンニ・ピスカーリャ。
オランダにあるクレラー・ミュラー美術館はファン・ゴッホの熱心なコレクターであったヘレーネ・クレラー=ミュラーが夫と共に開設した美術館(1938年開設)。
ヘレーネはゴッホの死後無名だった彼の作品と出会い、個人コレクターとして約300点を収集し、ゴッホに生涯を捧げた女性。生前二人が出会うことはなかったが、残された手紙によって魂の絆が芽生えたという。
ヘレーネが亡くなってからコレクションが評価され、ヘレーネの棺は美術館のゴッホの絵画の前に安置された。その写真は映像の中に映し出されていた。
ゴッホが亡くなった場所はフランスのオーヴェル=シュル=オワーズ。生涯最後の住処となった建物には”フィンセント・ファン・ゴッホが亡くなった場所”と記され保存されている。
そしてここの私立墓地に弟と隣り合って眠る墓がある。
監修は美術史家でファン・ゴッホ研究の第一人者マルコ・ゴールディン。
美術史家でありヘレーネの伝記作家であるエヴァ・ローバーズは本作に登場してヘレーネの膨大な手紙(3000通以上)の一部を解説してくれる。
ファン・ゴッホもヘレーネも手紙を書く習慣があり、それが二人を結びつけたような気がしてならない。
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキのナレーションがこのアート・ドキュメンタリーにマッチしていてとても良かった。
プロデューサーは「ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ/2018」と「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代/2018」を手がけたヴェロニカ・ボッタネッリ。
2017年にイタリアのヴィチェンツァで”ゴッホ展”が開催。今東京でゴッホ展開催中。
新宿武蔵野館にて
2019年 11月 05日
「フッド:ザ・ビギニング」
「Robin Hood」 2018 USA
イングランド、ノッティンガム。若き領主のロビン・ロクスリーは恋人のマリアンと幸せな日々を過ごしていた。ところが十字軍の遠征に出征を命じられる。そしてロビンはマリアンに”戻って来るまで待っていてくれ!”と言い残し戦地へと向かう。4年後帰国したロビンは領地も財産も没収された上戦死したことにされていた。そんな折、戦地で敵として戦ったジョンが現れる…
”戻って来るまで待っていてくれ!”と言ったロビンだったが、マリアンはウィルと暮らしていた。彼女はロビンが戦死したと信じていたのだ。打ちひしがれるロビンにジョンがある計画を提案する。それは二人で手を組み腐敗した政府へ反逆することだった。
本作は新解釈の”ロビンフッド”らしい。マリアンとの関係もなんだか今風。でも弓矢の名手であるロビンが弓矢で活躍する姿はしっかりと描かれている。「キングスマン/2014」で華麗なアクションを見せたタロンのパフォーマンスはナイス。
「Robin Hood」映画は、過去にケヴィン・コスナーの「ロビン・フッド/1991」とラッセル・クロウの「ロビン・フッド/2010」そしてS・コネリー&A・ヘプバーンの「ロビンとマリアン/1976」を見ている。そういえばラッセル・クロウ版のレビューにも書いていた。
それぞれロビンとマリアンの描き方が違っていて見比べるのは面白いかも知れない。
「Ray/レイ/2004」でオスカーを受賞したジェイミー・フォックスの中世ものは初めて。歳を重ねた彼は同じくアフリカン・アメリカン俳優のモーガン・フリーマンの雰囲気で、これからもこういった映画に出演してくれたら良いな。
ケヴィン・コスナー版にモーガン・フリーマンが出演している。
本国ではかれこれ1年前に公開。Hollywood Expressで、何度も映画化されているので少々飽きられたのか?みたいなコメントがあったのを思い出した。そして日本でもやっと公開。
タロンを一躍スターにした「キングスマンシリーズ」。
第3作「The King's Man/キングスマン: ファースト・エージェント/2020」にはタロンもコリンもマークも出演しない。
レイフ・ファインズ、マシュー・グード、ジェマ・アタートン、リス・エヴァンス他の顔ぶれで、ハリス・ディキンソンが新たなエージェントで活躍する。
タロンもコリンもマークも出演しない「キングスマン」は少々つまらないかも?
ロビン・ロクスリーに「ロケットマン/2019」のタロン・エガートン。
ヤキヤ/ジョンに「ホワイトハウス・ダウン/2013」「ベイビー・ドライバー/2017」のジェイミー・フォックス。
ノッティンガム州長官に「キング/2019」のベン・メンデルソーン。
マリアンに「パピヨン/2017」のイヴ・ヒューソン。
ウィルに「プライベート・ウォー/2018」のジェイミー・ドーナン。
タック修道士にティム・ミンチン。
ギズボーンに「ベルファスト71/2014」のポール・アンダーソン。
枢機卿に「グランド・ブタペスト・ホテル/2013」のF・マーレイ・エイブラハム。
TOHOシネマズ日比谷にて
2019年 11月 02日
「ボーダー 二つの世界」
「Gräns」…aka「 Border」2018 スウェーデン/デンマーク
スウェーデンの税関で働くティーナは違法なモノを嗅ぎ分ける特殊な能力を持っている。しかし生まれつきの醜い容姿に悩まされていた。私生活ではホームにいる父と、犬をこよなく愛する同居人のローランドがいるが、心は孤独だった。ある日、怪しい風貌の男を取り調べたが違法なモノは見つからなかった。ヴォーレと名乗るその男に何かを感じたティーナは”又会いたい。”と伝える…
原作者が「ぼくのエリ 200歳の少女」なので普通ではないとは思っていたが、まさか?あのような展開になるとは…。
そしてヴァンパイア映画ではなかった。スリラー・ドラマであり、大人のファンタジー・ラヴ・ストーリーでもある。
ラスト、ヴォーレのメッセージ(贈り物)が素敵だった。
なんとも言いようがないくらいショッキングなドラマであることは間違いない。
ティーナは港にある税関の職員。そしてティーナは何者なのか?
原タイトルの”Gräns/Border/国境、境界”がとても意味深い。
オスカーのメイクアップ賞&ヘアスタイリング賞にノミネートされただけあってティーナ役のエヴァ・メランデルが別人に変身している。
二人の俳優、エヴァ・メランデルとエーロ・ミロノフの役への脅威のなりきりぶりに感嘆する。
ティーナに「ヒプノティスト-催眠-/2012」のエヴァ・メランデル。
ヴォーレにエーロ・ミロノフ。
ティーナの父にステーン・リュングレン。
ローランドにヨルゲン・トゥーソン。
税関職員アグネータにアン・ペトレン。
監督、脚本はアリ・アッバシ。
原作、脚本は「ぼくのエリ 200歳の少女/2008」のヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。
ヒューマントラストシネマ有楽町にて