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「緑はよみがえる」

「Torneranno i prati」…aka「Greenery Will Bloom Again」2014 イタリア
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1917年、冬。第一次世界大戦下のイタリア、アルプス、アジア—ゴ高原。イタリア軍とオーストリア軍は極寒の銀世界の中、塹壕を掘り互いに向かい合っている。戦いは膠着状態で若い兵士たちは厳しい寒さと飢えに疲労困憊する上、いつ落ちてくるかもわからない砲弾に怯えていた。そんな折、現状を全く理解していない少佐とまだ若い中尉がやって来る...

少佐に「最後のキス/2001」「007/カジノ・ロワイヤル/2006」「赤い肌の大地/2008」「ジョルダーニ家の人々/2010」「海と大陸/2011」のクラウディオ・サンタマリア。
若い中尉に「ヘヴン/2002」「ジョルダーニ家の人々」のアレッサンドロ・スペルドゥーティ。
大尉にフランチェスコ・フォルミケッティ。
ナポリ出身の兵士にアンドレア・ディ・マリア。
監督、脚本は「木靴の樹/1978」「明日へのチケット/2005」「ポー川のひかり/2006」「楽園からの旅人/2011」のエルマンノ・オルミ。

前線を任された大尉に届いた指令は“通信が敵に傍受されているため、新たな通信ケーブルを敷け!”というものだった。しかし危険が伴うその作業に猛反撥した大尉は軍位を返上してしまう。そして後を任されたのは戦争経験のない若い中尉だった。

劣悪な環境の塹壕で体力を消耗した兵士は疲れ果て、インフルエンザに冒された者までいる。戦おうとする意志と活力も尽き果て、ただ家に帰りたいと願うばかり。時折届く家族や恋人からの手紙が、唯一心のよりどころ。
若い中尉は想像とはかけ離れた戦争の醜さに直面し、なす術もなく、自分の無力さに打ちのめされる。
やがて彼は“愛する母さん、一番難しいのは、人を赦すことですが、人が人を赦せなければ人間とは何なのでしょうか"と手紙を綴り始めるのだった。

短いドラマ(76分)から戦争の醜さが強烈に伝わってきて怖くなる。
巨匠と呼ばれる人の作った映画は基本的に暗いのかも知れない。本作が公開される前に、巨匠の「木靴の樹」の期間限定上映があった。それはDVDで見たが途中挫折していて最後まで見ていない。いつか再チャレンジしようと思う。一方でかなり宗教的な作品ながら「ポー川のひかり」は中々素敵な映画だったのを思い出す。
若い大尉役のアレッサンドロ・スペルドゥーティは「ジョルダーニ家の人々」でイケメン高校生ロレンツォを演じた俳優。本作では優しい顔つきの彼が、終始とても悲しい表情を見せ切なくなる。

DVDだと途中でやめてしまうこともあるが、シアターでは決して途中で挫折はしない。かなり睡魔に襲われたもののなんとか最後迄鑑賞した。
イタリア映画祭2016で盛んに宣伝していたからかどうか定かではないが、思ったより観客入っていた。巨匠エルマンノ・オルミに惹かれるのかも知れない。

岩波ホールにて(6/3迄)
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by margot2005 | 2016-05-31 00:11 | イタリア | Trackback | Comments(0)

「マクベス」

「Macbeth」 2015 UK/フランス/USA
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内戦で荒廃したスコットランド。ダンカン王に忠誠を誓うグラミスの領主マクベスは、戦友のバンクォーと共に反乱軍の攻撃を交わし敵将を切り捨てる。やがて荒野の至る所に死体が散乱する中3人の魔女が現れ、マクベスがスコットランド王になると予言する...

マクベスに「スティーブ・ジョブズ/2015」のマイケル・ファスベンダー。
レディ・マクベスに「サンドラの週末/2014」のマリオン・コティヤール。
バンクォーに「ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男/2005」「ボーン・アルティメイタム/2007」「思秋期/2010(監督、脚本)」「ブリッツ/2011」「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!/2013」「パレードへようこそ/2014」「チャイルド44 森に消えた子供たち/2014」のパディ・コンシダイン。
マクダフに「プロメテウス/2012」「ベルファスト71/2014」「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション/2015」のショーン・ハリス。
マルコム王子に「トランスフォーマー/ロストエイジ/2014」のジャック・レイナー。
レディ・マクダフに「コードネームU.N.C.L.E./2015」のエリザベス・デビッキ。
ダンカン王に「ニュー・ワールド/2005」「縞模様のパジャマの少年/2008」「ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-/2010」「戦火の馬/2011」「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛/2011」「もうひとりのシェイクスピア/2011」「博士と彼女のセオリー/2014」のデヴィッド・シューリス。
監督はジャスティン・カーゼル。

シェイクスピアの4代悲劇の一つ“マクベス”の映画を見たのは初めて。舞台劇も見たことはなくて、本(戯曲)を読んだだけ。映画は舞台劇のように描かれていて、スコットランドやイングランドでロケされた、映画ならではの背景がドラマにマッチしてとても美しい。マクベスの狂気を現しているかのような血や炎のシーンが印象的。

マクベスの前に現れた魔女たちは、マクベスが王になり、さらに彼の戦友であるバンクォーの子孫が未来の王になると予言する。
マクベス夫人は夫を王にしよともくろみ、ダンカン王殺害に躍起になっているが、マクベスは自分が王になっても後を継ぐ存在がいないことを知っている。

“マクベス”を読んだのは大昔。当然大まかなストーリーしか記憶にない。映画を見て、この夫妻が子供を亡くしていたことを知った(オープニングに子供の葬式の模様が描かれる/原作とは違う設定かも知れない?)。その後再び子供には恵まれず夫妻にとってそれは大問題だった(貴族の領主にとって跡継ぎがいないのは致命的)。結局バンクォーと彼の息子フリーアンスも殺さざるを得なくなるのだ。
しかしマクベスに雇われた刺客はフリーアンス殺害に失敗する。やがてマクベスはかつての戦友バンクォーの幻影を見て錯乱状態になって行く。
マクベスは再び魔女たちの予言を聞く。それは“マクダフに用心せよ!”というものだった。スコットランドの貴族でファイフの領主であるマクダフには3人の子供がいた。もうこうなったらとことんやるしかない!と、燃えるような狂気を発散させマクベスはマクダフの妻子4人を火あぶりにかけて殺してしまうのだった。

見終わってマクベスって悪党ながらとても小心者だったんだと変に納得。
演じるマイケル・ファスベンダーは感情表現がとても上手い俳優で素晴らしい。「SHAME -シェイム-/2012」同様悩める男が実に似合う。
罪悪感に苛まれ、もがき苦しみながらも、燃えるような狂気を発散させる様はスゴい!
レディ・マクベス役のマリオン・コティヤールも然り。マリオンは夫をそそのかす悪妻役にぴったり。
脇を固めるUK人俳優、パディ・コンシダインにショーン・ハリス、そしてデヴィッド・シューリスの存在も忘れてはならない。

映画の公式サイトでは“シェイクスピア”俳優を始めとしたプロの人々が絶賛している。でも上映が始まってまだ3週目なのに、既に朝と夕方しか上映していない。やはり一般人には好まれない映画の様子。私的にはお気に入り俳優のマイケル・ファスベンダーが主演ということで見たに過ぎないのだから。

TOHOシネマズ・シャンテにて
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by margot2005 | 2016-05-29 22:31 | UK | Trackback(4) | Comments(0)

「獣は月夜に夢を見る」

「Når dyrene drømmer」…aka「When Animals Dream」2014 デンマーク/フランス
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デンマークの海岸沿いの小さな村で両親と暮すマリーは19歳の少女。車いす生活の母親は病気だが父親は何も教えてくれない。村の住人は車いすの母親を恐れ、マリーには疑いのまなざしを向けてくる。なぜ彼らはそのように振る舞うのだろう?とマリーは不思議でならない。そんな折マリーは魚工場で青年ダニエルと出会い、互いに孤独を抱える二人は惹かれ合い恋に落ちる…

マリーにソニア・スール。
マリーの父親に「SHERLOCK(シャーロック)3/2014」のラース・ミケルセン。
マリーの母に「しあわせな孤独/2002」のソニア・リクター。
ダニエルに「コン・ティキ/2012」「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車/2014」のヤーコブ・オフテブロ。
監督はヨナス・アレクサンダー・アーンビー。

父親の深い愛には感銘する。世間の嫌がらせから妻を守り娘も守ろうとするが、彼女は反撥して家を飛び出す。そしてマリーはダニエルの愛を確認する。そうこれは究極のラブ・ストーリーかも知れない。

ロケ地はデンマークのユトランド半島(デンマーク本土とドイツの北端部がくっ付いた所)。
スウェーデン製作の「ぼくのエリ 200歳の少女/2008」というヴァンパイア映画があったが、北欧の暗い、寒々としたたたずまいが“ノルディック・ノワール”と呼ばれる妖しいドラマにマッチする。

シアターで予告編を何度も見ていて少々気にはなっていたが、ヴァンパイア映画にはあまり惹かれないのでなんだかぐずぐずしていて、見たのは上映最終日。4/16に公開されているのでこの北欧発のミステリー・ホラーは結構長く上映されていた様子。ラスト上映の日も席半分近くは埋まっていた(小さい方のシアター)。
ラース・ミケルセンはマッツ・ミケルセンの兄で、何処かで見たことあると思っていたら「SHERLOCK(シャーロック)3」に出演していたデンマーク人俳優。

ちょっとネタバレ…
ヒロインと母親は「トワイライト・シリーズ」のジェイコブのような狼人間。いきなり身体に毛がはえてくるって女性だとツライだろうなぁ、と切に思った。

ヒューマントラストシネマ有楽町にて(既に上映終了)
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by margot2005 | 2016-05-25 00:35 | ヨーロッパ | Trackback | Comments(0)

「オマールの壁」

「Omar」2013 パレスチナ
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パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区に住む青年オマールは誠実なパン職人。目の前にそびえる巨大な壁をよじ登り、今日も幼なじみのアムジャドとタレクに会いに行く。3人はイスラエル政府軍に対抗するため射撃訓練を行っていた。そしてオマールはタレクの妹ナディアに恋心を抱いており、やがては結婚を申しこもうと考えていた…

オマールにアダム・バクリ。
ナディアにリーム・リューバニ。
アムジャドにサメール・ビシャラット。
タレクにエヤド・ホーラーニ。
ラミ捜査官に「ヤギと男と男と壁と/2009」のワリード・ズエイター。
監督、脚本、製作は「パラダイス・ナウ/2005」のハニ・アブ・アサド。

映画の軸となっているのはオマールとナディアの恋。アムジャドの嘘で悲恋に終わる二人の恋があまりにも哀しい。
映画のテーマは重くてシリアスながら、時折ユーモアを交えた台詞があってほっとする。

ある日、イスラエル兵に侮辱を受けたオマールは、憤りを覚え、同志であり、幼なじみのアムジャドとタレクと共にイスラエル兵に攻撃を仕掛ける。しかしオマールが捕まって拷問にかけられた後捕虜となる。
ラミ捜査官に90年以上の懲役刑を宣告され、ナディアさえも罪に問われると脅されたオマールは、ラミ捜査官が差しだす提案を受けるしか方法がなかった。
釈放されスパイとなったが、アムジャドとタレクに決して知られてはならない。一方でオマールはナディアのことが気がかりで彼女が通う女学校を覗いたり、帰宅途中に待ち伏せしたりする。そんなある時、アムジャドとナディアが深刻な表情で話している現場を目撃する。オマールはアムジャドとナディアの仲を疑うが、彼女は否定するばかり。

メールではなく手紙でやりとりする恋人たちの姿がとても新鮮で心に残る。ナディアがオマールに最後に渡そうとした手紙…オマールは受け取りを拒否..それには何が書いてあったのだろう?とかなり気になった。オマールがあの手紙を読んでいたら二人の未来は変わっていたかも知れない。

捕虜となり、釈放されてから2年の月日が経過したある日、アムジャドに会うため壁に向かう。何度も何度も登った壁なのに、登ることができなくて泣きそうになるオマールに一人の老人が手助けする。あのシーンはオマールの心を現しているようで胸を打たれた。

とても衝撃的なドラマのラストは最高に衝撃的。見終わった観客に考える時間を与えるかのようにエンドクレジットは無音だった。映画が終わり久しぶりに席を立つのがツラかった。それほど衝撃を受けたということかも知れない。

本作はなんとなく見に行こうかどうかスゴく迷っていて、でもシアターを変えていつまでも上映しているのではやり見なきゃ!と思いシアターへ!
見て良かった。今年のMY BESTに入れたい一作。
オマール役のアダム・バクリは来日したそう。オフシャルサイト見てないので知らなかった。彼はとてもハンサムで笑顔が最高にキュート。

シネマート新宿にて(5/26迄)
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by margot2005 | 2016-05-24 00:12 | アジア | Trackback(2) | Comments(2)

「スポットライト 世紀のスクープ」

「Spotlight」 2015 USA/カナダ
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“ピュリツァー賞に輝いた調査報道チームを巡る感動の実話”をベースに描いた社会派群像ドラマ。

マイク・レゼンデスに「夫以外の選択肢/2004」「ゾディアック/2006」「帰らない日々/2007」「ブラインドネス/2008」「キッズ・オールライト/2010」「はじまりのうた/2013」のマーク・ラファロ。
ウォルター・“ロビー”・ロビンソンに「ビートルジュース/1988」「バットマン/1989」「バットマン リターンズ/1992」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)/2014」のマイケル・キートン。
サー シャ・ファイファーに「アバウト・タイム ~愛おしい時間について~/2013」のレイチェル・マクアダムス。
マーティ・バロンに「コレラの時代の愛/2007」「ディファイアンス/2008」「大統領の執事の涙/2013」「ジゴロ・イン・ニューヨーク/2013」「完全なるチェックメイト/2015」のリーヴ・シュレイバー。
ベン・ブラッドリー・Jr.に「チャーリー・ウイルソンズ・ウォー/2007」「帰らない日々」「アジャストメント/2011」のジョン・スラッテリー。
マット・キャロルに「ロスト・イン・マンハッタン 人生をもう一度/2014」のブライアン・ダーシー・ジェームズ。
ミッチェル・ギャラベディアンに「プラダを着た悪魔/2006」「ジュリー&ジュリア/2009」「モネ・ゲーム/2012」「ヴェルサイユの宮廷庭師/2014」のスタンリー・トゥッチ。
エリック・マクリーシュに「M:i:III/2006」「グッド・シェパード/2006」「ウォッチメン/2009」「パブリック・エネミーズ/2009」「君が生きた証/2014」のビリー・クラダップ。
監督、脚本は「扉をたたく人/2007」「デュプリシティ ~スパイは、スパイに嘘をつく~/2009:出演」「靴職人と魔法のミシン/2014」のトム・マッカーシー。

2001年、夏のボストン。ある日、マイアミからボストン・グローブ新聞社に新しい編集局長マーティ・バロンがやってくる。早速幹部を集めた編集局長は、彼らに売れるネタの提示を求める。やがて“神父による子どもへの性的虐待事件”にそそられた編集局長は“スポットライト”と名付けられた特集記事欄のチームに取材を命じる。

ボストン・グローブの読者の半数はカトリック。スポットライトの記者たちも地元出身者ばかり。女性記者サー シャの祖母は敬虔なクリスチャンで、彼女は日常的に祖母と共に教会へ行く。新聞社の古参で幹部のベンは読者の反撥を恐れるため、この事件を記事にすることに乗り気ではない。しかし新しい編集局長は地元とは無縁の人間で、なおかつユダヤ人であるため強気の構えだった。

スポットライトの記者はリーダーのウォルター以下、マイク、サー シャ、マットの4人。実はこの事件は過去に告発され資料も新聞社に送られてきていた。しかしカトリック教会が雇った屈強な弁護士団によって教会と被害者の間には和解が成立していた。
ウォルターたちは弁護士ミッチェル・ギャラベディアンとエリック・マクリーシュに面会を求めるが追い返されてしまう。一方で被害者に話を聞こうと訪ねても門前払いされる始末。だが決してあきらめない彼らは弁護士を問いつめ、被害者を説得するのに成功する。

“神父による子どもへの性的虐待事件”は日本でも報道されたことがあり知っている。
スポットライトの記者たちによって暴かれた悲惨な事件はバチカンをも震撼させたというが、家族を犠牲にしてまで取材活動にのめり込む記者魂はスゴい!の一言。
真に迫るドラマはまるでドキュメンタリーのようにも見え、アカデミー作品賞に輝いただけあって素晴らしい!
俳優陣もお気に入り俳優のマーク・ラファロを始めとして、マイケル・キートン、スタンリー・トゥッチにリーヴ・シュレイバー、そして紅一点のレイチェル・マクアダムスと皆ナイス・キャスティング。
トム・マッカーシーは、シリアスなテーマでも、ユーモアあふれる作品でも、感動ものにしてしまうニクい監督。

TOHOシネマズ日劇にて(既に上映終了)/みゆき座にて上映中(5/26迄)
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by margot2005 | 2016-05-20 00:25 | USA | Trackback(6) | Comments(2)

「ルーム」

「Room」2015 アイルランド/カナダ
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ママ/ジョイに「21ジャンプストリート/2012」のブリー・ラーソン。
ジャックにジェイコブ・トレンブレイ。
ナンシーに「ボーン・アルティメイタム/2007」「HACHI 約束の犬/2008」「ボーン・レガシー/2012」のジョーン・アレン。
ロバートに「サンキュー・スモーキング/2008」「君が生きた証/2014」のウィリアム・H・メイシー。
レオに「カイロ・タイム ~異邦人~/2009」のトム・マッカムス。
オールド・ニックにショーン・ブリジャース。
監督は「FRANK -フランク/2014」のレニー・アブラハムソン。

本作はベストセラー小説の映画化だそう。映画を見終わって思ったのは、設定はもちろん変えているだろうけど、実際に起こった無惨な事件をネタにしてドラマにしてしまって良いのか?と感じた。なんとなく生々しいイメージがして小説は読みたくない。

誘拐され、強姦されて妊娠してしまった17歳の女の子は、世間から遮断された“ルーム”に監禁されて子供を産み育てている。逃げ出そうと思ったことはあるが成功には至らなかった。時折彼女を訪ねてやって来る男オールド・ニックは、女の子が生んだ息子ジャックの父親…となんか小説みたいだけど実話。

17歳の女の子が一人でどうやって子供を産んで5年間も育ててきたのだろう!と想像せずにはいられない。5歳になった男の子ジャックはちゃんと育っている。栄誉失調とかでもなく…この辺りは誘拐&強姦犯のオールド・ニックも死なれては困ると便宜を図っていたに違いない。

ママに懇願されとうとう脱出に成功したジャック。やがて、“ルーム”のTVからしか見たことがなかったモノや人が目の前に現れる。その時のジャックの驚きはきっとスゴかっただろうな。
脱出に成功し、ジャックはママ(ジョイ)と彼女の両親に引き合わされる。ジョイの両親と、母親のパートナーのレオが一同に介した時のジョイの父親の反応に驚いた。
母親ナンシーは祖母として孫の存在をすぐに認めるが、父親ロバートはジャックの祖父であることを受け入れようとはしない。男と女の反応の違いにあっと思った。父親は娘が強姦されて産まれた孫などいらなかったのかも知れない。やはり男はわがままだ。
ナンシーのパートナー、レオはジャックを受け入れようと努力する。それはジャックとの間に何のしがらみもないから、逆にすんなりと受け入れることができたように思えた。

“ルーム”に監禁されている母親と幼い息子。狭い部屋で二人は常に一緒。息子は母親を頼り、母親は息子を生き甲斐にしている。
広い世界を見たジャックは母親離れができたのだろうか?それとも母親ジョイは子離れができたのだろうか?と少々気になった。

本作はアメリカ映画とばっかり思っていたらアイルランド&カナダ製作。舞台はアメリカになっているがロケ地はカナダ。最近このパターンが多い。
ヒロインを演じるブリー・ラーソンはオスカー主演女優賞に輝いただけあって素晴らしい。そしてジャック役のジェイコブ・トレンブレイがナイス。

TOHOシネマズ・シャンテにて
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by margot2005 | 2016-05-16 23:57 | UK | Trackback(3) | Comments(2)

「グランドフィナーレ」

「Youth」 2015 イタリア/フランス/UK/スイス
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高級リゾートホテルに宿泊するフレッド・バリンジャーは英国を代表する世界的音楽家。現役を引退し80歳を過ぎた今、アルプスのリゾートホテルで優雅なバカンスを満喫している。長年の親友で娘婿の父親でもある映画監督のミックも同じホテルの宿泊客。ミックはフレッドと違って今だ現役で、若いスタッフたちと新作の準備に勤しんでいた…

フレッド・バリンジャーに「スルース/2007」「ダークナイト ライジング/2012」「キングスマン/2014」のマイケル・ケイン。
ミック・ボイルに「グランド・ブタペスト・ホテル/2013」「贖罪の街/2014」のハーヴェイ・カイテル。
レナ・バリンジャーに「ナイロビの蜂/2005」「ファウンテン/2006」「マイ・ブルーベリー・ナイツ/2007」「ドリーム・ハウス/2011」「ロブスター/2015」のレイチェル・ワイズ。
ジミー・ツリーに「キング 罪の王/2005」「リトル・ミス・サンシャイン/2006」「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド/2007」「それでも夜は明ける/2013」「ラブ&マーシー 終わらないメロディー/2015」のポール・ダノ。
ブレンダ・モレルに「みんなで一緒に暮らしたら/2011」「大統領の執事の涙/2013」「あなたを見送る7日間/2014」「パパが遺した物語/2015」のジェーン・フォンダ。
英国女王の使者に「ワンチャンス/2013」のアレックス・マックイーン。
ミス・ユニヴァースにマダリーナ・ゲネア。
ディエゴ・マラドーナにロリー・セラーノ。
監督、脚本は「イル・ディーヴォ-魔王と呼ばれた男-/2008」「グレート・ビューティー/追憶のローマ/2013」のパオロ・ソレンティーノ。

原タイトルはズバリ“若さ”。
フレッドの娘で彼のアシスタントでもあるレナと、ハリウッドの元スター俳優ジミー・ツリーを絡ませながら、美しい背景を舞台に描いたドラマはとてもゴージャス。

ある日、英国女王の使者がフレッドを訪ねてくる。オファーはフレッド・バリンジャーの不朽の名曲“シンプル・ソング”を 自らの指揮で演奏して欲しいというものだった。しかしフレッドはそれを頑に断るばかり。理由を聞いても決して答えようとはしない。それはアシスタントのレナも知らないことだった。
そんな折、レナは夫が浮気をしていることを父親に打ち明ける。
ミックは往年の人気女優ブレンダを新作に出演させようとしていたが、いきなりミックを訪ねてやって来たブレンダにくそみそに罵られ落ち込んでしまう。

ミックのラストは悲惨だったが、後に決断したフレッドは英国女王の前で“シンプル・ソング”の指揮をする。愛する妻のために作ったその曲を指揮したフレッドのラストは晴れ晴れとしていた。そして新しい恋を見つけたレナも...。
アドルフ・ヒトラー役を“演じられない!”と拒否した俳優ジミーの将来はどうなっていくのかな?と少々気になった。

老境を迎えたフレッドとミック。女優のブレンダもそうだが、女性はやはりスゴい!あのパワー!演じるジェーン・フォンダは来年80歳になるという。もちろんシワだらけだがゴージャスなオーラを放っている。
俳優を演じるポール・ダノがスゴく良かった。前作「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」もナイスだったけど…。
レイチェル・ワイズも好きなUK女優で、俳優陣がとても豪華で、ドラマの背景もとても豪華で惹き付けられた。
最初あのデブのおじさんは誰?とわからなかったけどIMDbでディエゴ・マラドーナを演じているのだとわかった。マラドーナなら高級リゾートホテルに集うセレブの一人として全く違和感はない。テニス・ボールでのリフティングはスゴかった。多分CG??

IMDbのジャンルではコメディに分類されていて??コメディっぽいシーンって?女優のブレンダが飛行機で暴れるシーンと、俳優ジミーがアドルフ・ヒトラーのメイクで台詞を語る時…そうそうディエゴ・マラドーナのシーンは少々可笑しかった。

ポスターにもある水に浸かったヴェネチア、サン・マルコ広場。水に渡したボードの上を歩くフレッドとミス・ユニヴァースのシーンはとても幻想的。ホテル内でも美しいプールのシーンが何度か登場する。
美しい水のシーンと、撮影されたスイスの緑が実に美しい!映画は“耽美”の世界といっても良いほどの美しさだった。

シネリーブル池袋にて
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by margot2005 | 2016-05-11 23:58 | イタリア | Trackback(2) | Comments(0)

イタリア映画祭2016...「オレはどこへ行く?」

「Quo vado?」 2016 イタリア
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終身雇用の公務員にしがみつく男ケッコを描いた痛快コメディ。

ケッコにケッコ・ザローネ。
ヴァレリアにエレオノーラ・ジョヴァナルディ。
シローニ女史に「輝ける青春/2003」「孤独な天使たち/2012」のソニア・ベルガマスコ。
ケッコの父親ペッピーノにマウリツィオ・ミケーリ。
ケッコの母親カテリーナにルドヴィカ・モドゥーニョ。
マーニョ大臣にニンニ・ブルスケッタ。
ビネット上院議員にリーノ・バンフィ。
ケッコのフィアンセにアッズラ・マルティーノ。
観測隊員に「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女/2009」のパオロ・ピエロボン。
監督、原案、脚本はジェンナーロ・ヌンツィアンテ。
原案、脚本、音楽はルカ・メディチ(ケッコ・ザローネ)。

地方都市で公務員の職にあるケッコは38歳のシングルで両親と同居している。フィアンセに結婚をせがまれているが、心から愛するのはマンマだけ。そんなある時、政府が公務員の人員削除に乗り出し早期退職者を募ることになる。ケッコは退職か勤務地変更か?の選択に迫られる。マーニョ大臣の命令によりシローニ女史は次々と早期退職に追い込むことに成功するが、ケッコはだけは絶対に首を縦に振らない。で、彼女はケッコを退職させるべく、嫌がらせでイタリアのあらゆる所に左遷するが全く動じない有様。頭にきたシローニ女史は彼を北極圏にあるノルウェーの離島の観測所に送り込む。やがてケッコはあまりの寒さにイタリアに戻りたい!気持ちが芽生え始めるが、観測所で働くヴァレリアに一目惚れし、彼女の3人の連れ子と共に暮らし始める。

ケッコは一時ヴァレリアとノルウェーで幸せな日々を送っていたが、やはりノルウェーは寒い!ヴァレリアを説き伏せイタリアに戻りプーリアに赴任することになる。とにかくどこまでも公務員なのだ。しかしそんな公務員魂がいやになったヴァレリアはケッコと別れる決断をする。
オープニングとエンディングはアフリカ。予想どうり二人のヨリは戻ったわけ。

主演のケッコ・ザローネはイタリアでは有名なコメディ俳優とのこと。でもケッコ・ザローネの映画は今回初めて見た。日本のお笑い芸人にいそうなタイプで、その中の誰かに顔似ている?なんて思ったりもした。
この方多彩な人で主題歌も歌っている。
氷のようなシローニ女史を演じるソニア・ベルガマスコはシリアスなドラマの「輝ける青春」や「孤独な天使たち」より本作のようなコメディがとても似会う女優。

映画祭のエンディングにふさわしい痛快イタリアン・コメディは、もうとにかく全編笑いっぱなしで…隣の女性はうるさいくらい笑っていてちょっと困ったけど...。
今年は5本しか見ることができなかった。中でも良かったのは、移民問題を扱った「地中海」、同性愛を描いた「私と彼女」、そして過激なストーリーの「暗黒街」はとても見応えがあったし、ラストに見た「オレはどこへ行く?」はもう最高!にくだらなくって面白いイタリアン・コメディで大満足。

有楽町朝日ホールにて
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by margot2005 | 2016-05-10 21:19 | 映画祭 | Trackback | Comments(0)

イタリア映画祭2016...「暗黒街」

「Suburra」2015 イタリア/フランス
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政治家、ギャング、聖職者が複雑に絡み合い、金と欲望に生きる男たちの1週間を描いた壮絶なる暗黒街のスリラー・ドラマ。

フィリッポ・マルグラーディに「家の鍵/2004」「題名のない子守唄/2006」「対角に土星/2007」「セントアンナの奇跡/2008」「天使と悪魔/2009」「気楽な人生/2011」のピエルフランチェスコ・ファヴィーノ。
セバスティアーノに「ナポレオンの愛人/2006」「NINE/2009」「我らの生活/2010」「家の主たち/2012」「無用のエルネスト/2013」「レオパルディ/2014」のエリオ・ジェルマーノ。
ナンバー8にアレッサンドロ・ボルギ。
サムライに「王妃マルゴ/1994」のクラウディオ・アメンドラ。
ナンバー8の恋人ヴィオラにグレタ・スカラーノ。
娼婦サブリーナにジュリア・エレットラ・ゴリエッティ。
マンフレディ・アナクレッティに「ブルーノのしあわせガイド/2011」のアダーモ・ディオニージ。
ベルシェー枢機卿に「ベティ・ブルー/愛と激情の日々/1986」「ニキータ/1990」「王妃マルゴ/1994」「ラクダと針の穴/2003」のジャン=ユーグ・アングラード。
監督、原案、脚本はステファノ・ソッリマ。

原タイトルの「Suburra」とは“古代ローマ時代、売春宿や居酒屋が立ち並び、政治家とゴロツキなど異なる世界の住人が密かに接触した地区の名称”だそう。原タイトルは正にドラマにぴったり!

ドラマは2011年11月5日から12日にかけての1週間を描いており、11月12日にイタリア共和国第60代首相シルヴィオ・ベルルスコーニが辞任する。
過去に日本でもその数々の醜聞が報道されたイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニと、政治家フィリッポ・マルグラーディが被って見える。

ローマ郊外のオスティアを牛耳るナンバー8は“ウオーターフロント計画”と呼ばれる再開発のため、暴力をもって地上げを進めている。一方で議会で再開発計画を推進するマルグラーディはローマの暗黒街を牛耳るサムライと強く結びついている。
ある夜、マルグラーディがホテルに二人の娼婦を連れ込みドラッグとセックスに溺れる最中、一人の若い娼婦がドラッグ中毒で死んでしまう。彼女はまだ17歳だった。あせったマルグラーディは事件をもみ消そうと事を起こす。やがてマルグラーディが犯した罪からナンバー8とロマ(ジプシー)のアナクレッティ一家との抗争が勃発する。

ハリウッド大作にも出演するピエルフランチェスコ・ファヴィーノが、貫禄たっぷりにワル役を演じる一方で、ちょっとキュートなエリオ・ジェルマーノが情けないキャラにぴったり。でも怒りに怒ったラストは痛快だった。
ベルシェー枢機卿を演じるフランス人俳優ジャン=ユーグ・アングラードの老けぶりに驚き。見ていて誰だか全くわからなかった。
スキンヘッドにタトゥでひげ面のアレッサンドロ・ボルギの素顔は超イケメン。実際の彼は髪の毛ありそう。

ドラマのロケーションで、ライトアップされたサンピエトロ寺院や、テヴェレ川にかかる橋の奥に浮かび上がるサンタンジェロ城。そして大統領官邸前広場や、華やかなローマの街が映し出されたロケーションには大満足だったが、この映画ホントにスゴい!強烈なストーリーだった。

有楽町朝日ホールにて
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by margot2005 | 2016-05-09 00:32 | 映画祭 | Trackback | Comments(0)

イタリア映画祭2016...「私と彼女」

「Io e lei」2015 イタリア
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建築家のフェデリカと、ケータリング・ビジネスを展開するマリーナは5年前から恋人として暮らしている。フェデリカはかつては良き妻、良き母で元夫セルジオとの間に24歳の一人息子ベルナルドがいる。しかしかつて女優だったマリーナは同性しか愛したことがなかった...

フェデリカに「母よ、/2015」のマルゲリータ・ブイ。
マリーナに「グレート・ビューティー/追憶のローマ/2013」のサブリナ・フェリッリ。
眼科医マルコに「湖のほとりで/2007」のファウスト・マリア・シャラッパ。
マリーナのアシスタント、カミッラに「はじまりは五つ星ホテルから/2013」のアレッシア・バレーラ。
フェデリカの息子ベルナルドにドメニコ・ディエーレ。
フェデリカの同僚カルロにアントニオ・サバテーリ。
フェデリカの元夫セルジオに「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い/2009」「対角に土星/2007」「あしたのパスタはアルデンテ/2010」のエンニオ・ファンタステキーニ。
映画プロデューサー、ステファノに「あしたのパスタはアルデンテ」「あなたたちのために/2015」のマッシミリアーノ・ガッロ。
監督、原案、脚本は「はじまりは五つ星ホテルから/2013」のマリア・ソーレ・トニャッツィ。

ドラマのオープニングはセルジオの若い妻が生んだ子供の洗礼式。
フェデリカはマリーナと同居しているものの職場では同性愛の関係を隠している。ある時、雑誌のインタビューを受けたマリーナが建築家の女性と暮らしていると告白する。記事は同僚のカルロに知られた上、マリーナは女優業を再開すると言う。二人の中が公になるのを恐れるフェデリカは動揺し戸惑う。しかし女性しか愛したことのないマリーナは“あなたは同性愛を恥じているの?私を愛していないの?”とフェデリカを責める。そうこうするうちフェデリカは昔の友人で眼科医のマルコと出会い関係を持ってしまう。それを知ったマリーナは怒りをあらわにしてフェデリカを家から追い出してしまう。
この辺りの展開にフランス映画「アデル、ブルーは熱い色/2013」を思い出した。女の執念は怖い!?
まぁ結末は読めるけれど、男たちを排除して生きる彼女たちの人生が中々素敵。母親と息子の関係は別だけど…。

撮影されたイタリア、ラツィオ州のラディスポリ(ローマから車で30分くらい)の海岸はとても美しく、二人が乗る車の窓からは素敵なローマの景色が見えて懐かしい。マリーナの事務所はヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂側のロケーション。そして女性二人が住むアパートのインテリアはとてもゴージャスでため息がでる。やはり女性監督だなぁと思わせるシーンや台詞がたっぷりと織り込まれているのが良かったな。
フェデリカのさりげないファッションにも注目だし、何はともあれ主演二人の女優がナイス。
「キャロル/2015」も素敵なレズビアン映画だったけど、本作は21世紀が舞台の上、少々コメディ・タッチのラブ・ロマンスでとっても素敵な作品だった。

有楽町朝日ホールにて
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by margot2005 | 2016-05-07 11:37 | 映画祭 | Trackback | Comments(0)