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「ザ・マスター」

「The Master」 2012 USA
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元海兵隊員のフレディは第二次世界大戦が終わった後、就職はしたもののアルコール依存症を抱えるトラブル・メーカーで、職場を転々としている。ある時、いつものように酒に酔ったフレディは、港に停泊中の船にこっそり乗り込んでしまう。やがて見つかったフレディは“マスター”と呼ばれるランカスター・ドッドの元へ連れて行かれる。信仰宗教の教祖であるドッドは意外にもフレディを気に入り、妻子を紹介するのだった…

フレディ・クエルに「帰らない日々/2007」「アンダーカヴァー/2007」のホアキン・フェニックス。
ランカスター・ドッドに「カポーティ/2005」「M:i:III/2006」「チャーリー・ウイルソンズ・ウォー/2007」「その土曜日、7時58分/2007」「ダウト ~あるカトリック学校で~/2008」「パイレーツ・ロック/2009」のフィリップ・シーモア・ホフマン。
ドッドの妻に「魔法にかけられて/2007」「チャーリー・ウイルソンズ・ウォー」「ダウト ~あるカトリック学校で~」「サンシャイン・クリーニング/2008」「ジュリー&ジュリア/2009」のエイミー・アダムス。
エリザベス・ドッドにアンビル・チルダーズ。
ヴァル・ドッドにジェシー・プレモンス。
ヘレンに「夫以外の選択肢 /2004」のローラ・ダーン。
フレディの恋人ドリスにマディセン・ベイテイ。
監督、脚本、製作は「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド/2007」のポール・トーマス・アンダーソン。

本作は観るつもりなどなかったのだが、シャンテで上映していたのでつい観に行ってしまった。
過去に聞いた覚えのある50年代のMusicが耳に心地よい。CDではなくノイズを感じるレコードのような音がナイス。本作で良かったのはBack Musicだけかも知れない。

フレディの帰還を待っていた恋人ドリスが、彼を待ちきれずに他の男と結婚してしまう。男の名前はデイ。で、今やドリス・デイとなった昔の恋人ドリス。ドリス・デイは50年代の大スターであり、中々ニクい演出。

狂気というものすらを感じる信仰宗教は肌に合わない。ドッドとフレディが強い絆で結ばれたのは、互いに持っている狂気かとも思えた。

とにかく映画には全く興味がわかなかったが演じる俳優がスゴい。ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンには狂気が似合い過ぎるほど似合う。
ドッドの妻役のエイミー・アダムスは地味な女優。本作では目立たない妻を演じていて完璧。
ローラ・ダーンが懐かしい。

ポール・トーマス・アンダーソン映画は上に書いたダニエル・デイ・ルイスの「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド」以前にアダム・サンドラーの「パンチドランク・ラブ/2002」、マーク・ウォールバーグの「ブギーナイツ/1997」と観ている。トム・クルーズがダメなので「マグノリア/1999」は観ていない。で、この方は少々暗い、一風変わったドラマを作るのが得意な監督かと思える。

TOHOシネマズシャンテにて
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by margot2005 | 2013-04-30 23:23 | MINI THEATER | Trackback(6) | Comments(0)

「君と歩く世界」

「De rouille et d'os」…aka「Rust and Bone」2012 フランス/ベルギー
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南フランス、アンディーヴ。ステファニーは観光地のマリンランドでシャチの調教をしている。一方でベルギーから一人息子を連れヒッチでアンディーヴまでやって来たシングル・ファーザーのアリ。アリはクラブのガードマンとなり、ある夜ステファニーと出会う。その後、マリンランドで事故が起こりステファニーは両足を失ってしまう。ステファニーは周りの同情に耐えられなくなり一人引きこもってしまう。ある日、アリがステファニーを訪ねて来る。そしてアリは引きこもるステファニーに“海に行かないか?”と誘う...
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ステファニーに「ダークナイト ライジング/2012」のマリオン・コティヤール。
アリに「ロフト/2008」「闇を生きる男/2011」のマティアス・スーナールツ。
アリの息子サムにアルマン・ヴェルデュール。
アリの姉アナにコリンヌ・マシエロ。
ステファニーの友人ルイーズに「華麗なるアリバイ/2007」「灼熱の肌/2011」のセリーヌ・サレット。
監督、脚本、製作は「真夜中のピアニスト/2005」「予言者(アンプロフェット)/2009」のジャック・オーディアール。

孤独で傷ついた男と女が出会う。しかし二人はすぐに惹かれ合わない。フランス人の感覚だと先にsexが優先するのだろうか?もうsexなんて出来ないと思っていたステファニーをアリが誘う。そしてステファニーはその喜びに再び目覚める。そしてだんだん二人は惹かれていくのだ。ラストはとても素敵だった。

「闇を生きる男」のジャッキー同様、アリも心は弱いが肉体は非情に強い。そしてストレートに感情を表現するところも同じ。草食系と言われる今時の日本の男とは大違いで、荒削りながらもこういった男に魅了される。演じるマティアス・スーナールツがぴったり。

負け犬だが強いアリと、両足をなくし肉体的に弱くなったステファニー。逞しい肉体を持つアリがステファニーを抱え海へと入って行く。シャチの調教紙だったステファニーはもちろん海が大好きだったに違いない。しかしもう泳ぐなんてことは考えられなかった彼女をアリは海へと誘うのだ。海のシーンは“トレ・トレ・ヴィアン!”だった。

フランス映画祭2010で観た「予言者(アンプロフェット)」は、非情な刑務所の中で次第に権力を得てのし上がって行く主人公アラヴ青年が凄まじいドラマで印象に残る一作。
本作のアリも強い。元ボクサーのアリが金をかけて路上ボクシングをするシーンが数回登場する。原タイトルは“錆と骨”というボクシング用語だそう。

マリオンはともかく、ベルギー人俳優マティアス・スーナルツ主演映画が丸の内にかかるとは驚きだったが、案の定か?上映期間(4/4~4/27)短かった。

「闇を生きる男」に続き強い男を演じるマティアス・スーナルツ。「ロフト」で初めてお目にかかったベルギー人俳優のマティアスを最近お気に入り俳優の仲間に入れた。本作は一般公開されるずっと前から知っていたので期待していた一作。私的には満足の作品だったが、上にも書いたように短い公開期間は人が入らなかったから?オスカー女優マリオンが出演していても日本では万人受けしないといったところか。マティアスの次作が楽しみ!

丸の内ピカデリー(既に上映終了/シネ・リーブル池袋にて上映中)
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by margot2005 | 2013-04-29 22:59 | フランス | Trackback(8) | Comments(0)

「アンナ・カレーニナ」

「Anna Karenina」 2012 UK
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19世紀後半のロシア。アンナ・カレーニナは社交界の美しい花で、政府高官の夫カレーニンと愛する息子と共にペテルスブルグに暮らしている。ある日、アンナは兄オブロンスキーに会うためモスクワを訪れる。兄を訪ねた理由は彼の浮気によりぎくしゃくした夫婦関係を修復するのが目的だった。しかしそんなアンナが列車の中で若くてハンサムなヴロンスキーと出会う...
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アンナ・カレーニナに「危険なメソッド/2011」のキーラ・ナイトレイ。
カレーニンに「シャーロック・ホームズ/2011」のジュード・ロウ。
ヴロンスキーに「幻影師アイゼンハイム/2006」「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ/2009」「アルバート氏の人生/2011」「野蛮なやつら/SAVAGES/2012」のアーロン・テイラー・ジョンソン。
アンナの兄オブロンスキーに「プライドと偏見/2005」「ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式/2007」「フロスト×ニクソン/2008」「ブローン・アパート/2008」「ロビン・フッド/2010」のマシュー・マクファディン。
オブロンスキーの妻ドリーに「ナニー・マクフィーの魔法のステッキ/2005」のケリー・マクドナルド。
田舎の地主リョーヴィンに「わたしを離さないで/2010」「シャドー・ダンサー/2011」のドーナル・グリーソン。
アンナの友人プリンセス・ベッツィ・トヴェルスカヤにルース・ウイルソン。
ドリーの妹キティにアリシア・ヴィキャンデル。
ヴロンスキー伯爵夫人に「17歳の肖像/2009」「ゴーストライター/2010」のオリヴィア・ウイリアムズ。
カレーニンの友人リディア・イワノヴナ伯爵夫人に「ミス・ポター/2006」「オレンジと太陽/2010」「戦火の馬/2011」のエミリー・ワトソン。
男爵夫人に「ジェーン・エア/2011」「ベラミ 愛を弄ぶ男/2012」のホリデイ・グレインジャー。
監督は「プライドと偏見」「つぐない/2007」「路上のソリスト/2009」のジョー・ライト。
原作はレオ・トルストイ。

シーンが変わる時、演劇の舞台が変わるように描く様子はとてもドラマティックで素晴らしかった。
この偉大なる悲恋ドラマはアンナ・カレーニナが列車に飛び込んで自らの命を絶つことで終わりを迎える。トルストイの晩年を描いた「終着駅 トルストイ最後の旅/2009」で悪妻ソフィアが夫に向かって“アンナ・カレーニナのように列車に飛び込んで死んでやる!”と叫んだ台詞を思い出す。かつてトルストイの小説を読んだ時、アンナの鉄道自殺がとても悲惨で印象に残ったことを覚えている。

過去に作られた“アンナ・カレーニナ”はUK版ヴィヴァン・リー主演/1948、UK/USA版ソフィー・マルソー主演/1997、そしてロシア版が1967年と1975年に製作されているが、残念なことにどの作品も見たことがない...と書いたがひょっとしてソフィー・マルソー版はBSで見たような気もする。今一度放映願いたい!

私的に“アンナ・カレーニナ”は世界三大不倫小説に位置づけている。他のニ作はD.H.ローレンスの“チャタレイ夫人の恋人”と、フローベールの“ボヴァリー夫人”か?
チャタレイもボヴァリーもどろどろの愛憎劇だが、こちらは純粋なる不倫…なんて変な言葉だが…互いが非常に愛し合っていたところが前ニ作とは大きく異なっている。
小説を読んだのはかなり前なので今一度マジで読んでみたい。

時代物が似合うキーラは「ある公爵夫人の生涯/2008」でのダッチェス役に続きアンナ・カレーニナが似合っている。夫カレーニンを演じるジュード・ロウ。かつて間男役が得意だったジュードも、今では妻を寝取られる役柄になってしまった。そしてカレーニン役がとても似合っている。
アンナの恋人となるヴロンスキー役のアーロン・テイラー・ジョンソンは「野蛮なやつら/SAVAGES」のレビューにも書いた通り貴族はどうも似合わない。というのも時代物似合わないタイプかも?

夫との間に愛はなく若くして結婚したアンナ。やがて若くてハンサムなヴロンスキーと出会う。運命的な出会いに燃え上がる二人を誰も止めることなど出来ない。しかし、互いに深く愛し合いながら結ばれなかったのはカレーニンが離婚に同意しなかったから。19世紀の女性は実にお気の毒だ。

オスカーを受賞した衣装(宝石etc.)や背景が素晴らしく美しく、あまりにも哀しい悲恋ドラマを盛り上げている。
大劇場での上映期間が短くて寂しい。

TOHOシネマズ日劇にて(既に上映終了/TOHOシネマズシャンテにて上映中)
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by margot2005 | 2013-04-28 23:56 | UK | Trackback(13) | Comments(0)

「キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け」

「Arbitrage」2012 USA
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ニューヨークに住むロバート・ミラーはヘッジファンドで巨万の富を得、人も羨む成功者でありながら、一方で幸せな家庭も築いている。しかしながらロバートには家族にひた隠しに隠した秘密があった…

ロバート・ミラーに「顔のないスパイ/2011」のリチャード・ギア。
エレン・ミラーに「アルフィー/2004」「NOEL ノエル/2004」「魔法にかけられて/2007」「告発のとき/2007」のスーザン・サランドン。
ブライヤー刑事に「海の上のピアニスト/1999」「インクレディブル・ハルク/2008」のティム・ロス。
ブルック・ミラーにブリット・マーリング。
ジュリーに「ゲンズブールと女たち/2010」のレティシア・カスタ。
ジミーに「リリィ、はちみつ色の秘密/2008」のネイト・パーカー。
監督、脚本はニコラス・ジャレッキー。

それほど期待していたわけでもないし、とりたててファンてワケでもないのだが、リチャード・ギア映画はいつも観ているのでシアターへ脚が向く。でも本作は想像以上に面白いサスペンス・ドラマだった。

金持ちという人種はなんでも金で解決する。殺人さえも…
車に同乗していた愛人ジュリーが事故で死んでしまう。それはジュリーの車だった。ロバートは既に息絶えていたジュリーと彼女の車にガソリンを放つ。これぞ究極の証拠隠滅。
やがて車の女性は事故ではなく、殺されたか?と疑念を抱いたブライヤー刑事がロバートに執拗に迫る。そして彼の妻にも...。
ロバートは金にものを言わせて証拠隠しに奔走する。で、結局ロバートは勝利を得る。そこでブライヤー刑事の台詞…“金持ちという人種はなんでも金で解決する。しかしそれを暴いてみせる!”と宣っていたが、やはり金持ちには叶わなかった貧乏刑事。


自らのバースディ・パーティの夜”私の一番の業績はここにいる家族だ。君たちは誇りであり大切な贈り物だ”…なんて言いながら愛人のもとへ向かうロバートにあきれ返るが、実は妻は全てを知っていた。
しかし妻に迫られながらも上手く丸め込む手腕は、仕事で培った技!といったところか...。

ジュリー役のレティシア・カスタはどこかで見た?見たと思いながら思い出せず、IMDbで「ゲンズブールと女たち」のブリジット・バルドーを演じていたことがわかった。
リチャード・ギアの映画は良く観ているなぁと自分でも感心する次第。それは短に彼の映画が公開されるからであって日本でもファンが多いからだろう。前作「顔のないスパイ」を観てアクション映画はそろそろ引退したらなんて思っていたら、今度は娘のような愛人を持つリッチな実業家役である。60歳を過ぎてもばっちりとスーツを着こなすギアはBeautiful!としか言いようがない。しかしアップになると少しイアン・マッケラン入ってるなぁの風貌に年は隠せない。

ヒューマントラストシネマ渋谷にて(4/26迄)/ヒューマントラストシネマ有楽町にて上映中
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by margot2005 | 2013-04-26 23:58 | MINI THEATER | Trackback(8) | Comments(0)

「愛、アムール」

「Amour」 2012 フランス/ドイツ/オーストリア

パリのアパルトマンに暮す音楽家夫婦のジョルジュとアンヌ。ある日、アンヌが病に倒れ、やがて寝たきりになってしまう。ジョルジュは献身的にアンヌを介護するが、アンヌの病状はどんどん悪化していく…
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ジョルジュに「素直な悪女/1956」「男と女/1966」「スエーデンの城/1962」「トリコロール/赤の愛/1994」「歌え!ジャニス・ジョプリンのように/2003」のジャン・ルイ・トラティニャン。
アンヌに「トリコロール/青の愛/1993」「華麗なるアリバイ/2007」のエマニュエル・リヴァ。
エヴァに「沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇/1995・甘い罠/2000」「ピアニスト/2001」「8人の女たち/2002」のイザベル・ユペール。
アレキサンドルにアレキサンドル・タロー。
監督、脚本は「ピアニスト」「隠された記憶/2005」「白いリボン/2009」のミヒャエル・ハネケ。


老老介護がテーマの本作はなんか身につまされそうで観るのを躊躇していたが結局観に行ってしまった。
ドラマのなりゆきは想像どおり「グッド・ハーブ/2010」と一緒。「グッド・ハーブ」は老老介護ではなく、娘が母親の介護をしていたが…。
映画を見終わり“尊厳死”という言葉が頭から離れなかった。

“愛、アムール”のタイトルが示すように本作は、長年連れ添った老夫婦の愛の物語。80歳を超えたの妻に“今日も綺麗だ!”なんていう日本人はいるだろうか?“愛、アムール”の国フランスならではのドラマである。
キッチンで、買って来た花(ひな菊だったか?)の枝を揃えるジョルジュの姿が忘れられない。何かに取り憑かれたように枝を切っているのだ。あれはきっとアンヌの好きな花だったに違いない。

この夫婦には娘がいる。娘エヴァは母親アンヌの病状が気になり定期的に両親の家を訪れる。しかしアンヌの病気が悪化し、ワケのわからないことを話すようになった時ジョルジュは娘を母親にあわせようとしなかったのだ。この気持ちはとても良くわかる。母親を心配する娘に、ヒドくなった姿を見せるに忍びないという気持ちがあったからだろう。

ラスト、オープニングのシーンと合わさって、観ているものはドラマの全貌を知ることになる。
ミヒャエル・ハネケの描く世界は複雑(一筋縄でいかない)だが、本作はとてもあっさりとしていて心に訴える。今迄観たハネケ映画の中では私的に一番好きな作品となった。

オスカー主演女優賞にノミネートされたエマニュエル・リヴァの演技はやはり素晴らしかった。老老介護に苦しむジョルジュ役のトラティニャンもナイス・キャスティング。
ジャン・ルイ・トランティニャンは1930年生まれなので80歳過ぎている。もうそのようなお年なのかと思っていたけど、ブリジット・バルドーやアヌーク・エーメ、モニカ・ヴィッティと共演しているのだから当然かと納得。トランティニャンといえばやはり「男と女」。「歌え!ジャニス・ジョプリンのように」以来かれこれ10年ぶりのトランティニャンの姿に歳月を感じる。
アンヌの教え子のアレキサンドルを演じるアレキサンドル・タローは実際にピアニストだそう。

銀座テアトルシネマにて(既に上映終了)
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by margot2005 | 2013-04-24 23:57 | フランス | Trackback(13) | Comments(0)

「偽りなき者」

「Jagten」…aka「The Hunt」2012 デンマーク
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ルーカスは離婚と失業の試練を乗り越え穏やかな日々を取り戻していた。元教師の彼は幼稚園教師となり子供たちに慕われている。ある日、ルーカスの幼稚園に通う親友テオの娘クララの何気ない嘘に変質者扱いされてしまう。園長に白い目で見られ、町の住人に無視され、あろうことか親友のテオまでもがルーカスを非難し始める…
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ルーカスに「タイタンの戦い/2010」のマッツ・ミケルセン。
ルーカスの親友テオにトーマス・ボー・ラーセン。
テオの娘クララにアニカ・ヴィタコブ。
ルーカスの息子マルクスにラセ・フォーゲルストラム。
園長グレテにスーセ・ウォルド。
ルーカスの友人ブルーンにラース・ランゼ。
ルーカスのガール・フレンドにアレクサンドル・ラパポルト。
監督、脚本は「光のほうへ/2010」のトマス・ヴィンターベア。

苦悶するマッツが素晴らしい表情を見せるが、一方でクララ役のアニカ・ヴィタコブの表情もスゴい!顔や仕草で強烈に訴えるのだ。見ていて演技なのか?実際の表情なのか?わからなくなる。
父親テオが“子供は嘘をつかない”と言い切るが、そうだろうか?クララのように何も考えないで(後のことを考えるとも思えないが…)嘘をつく子供っているように思える。しかし親は子供を信じてしまうし、親の気持ちも良く理解できる。

何はともあれ、主人公のルーカスが気の毒でならなかった。人々から無視され、孤立し、愛する息子にまで危害が及ぶなんて言語道断。自らの潔白を証明しようとも、まったくもって取り合ってもらえないもどかしさは想像を絶する。
クリスマス・イヴの夜、礼拝に訪れた教会でテオに対峙するシーンは実に心地良かった。

「007/カジノ・ロワイヤル/2006」で初めて知ったデンマーク人俳優マッツ・ミケルセン。その冷酷な風貌が強く印象に残った。正確には初めて観た映画は「キング・アーサー/2004」だが“トリスタン”役では“ル・シッフル”ほどの印象は残らなかった次第。やはり悪役というのは人の目を惹き付ける。そしてその後マッツ映画を色々と観て来たが、この方、本作のようなヒューマン・ドラマがとてもしっくりくる俳優だ。「しあわせな孤独/2002」「アフター・ウエディング/2006」のマッツは素晴らしかった。

デンマーク映画はロケーションも楽しめる。本作は「アフター・ウエディング」同様、素晴らしく美しいデンマークの田園地帯でロケされている。
原タイトルの“狩り”はルーカスや彼の友人たちの最大の娯楽(趣味)。それは息子にも受け継がれる。ラスト、息子マルクスに“狩り=銃”の手ほどきをするルーカスの姿が心に残る。

静かに、穏やかに進むドラマは「光のほうへ」を彷彿させる。「光のほうへ」は本作以上に暗いヒューマン・ドラマだったが心に染みた。こちらも同じ感想。

渋谷 Bunkamura ル・シネマにて
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by margot2005 | 2013-04-23 23:51 | スペイン | Trackback(14) | Comments(0)

「ベラミ 愛を弄ぶ男」

「Bel Ami」 2012 UK/イタリア
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1890年、パリ。食べるものにも事欠くほど貧しい青年ジョルジュ・デュロワはアルジェリアからの帰還兵。ある夜、キャバレーで旧友シャルルと再会する。シャルルは新聞記者で美しく聡明な妻マドレーヌとリッチな生活を送っていた。やがてシャルルが催した晩餐会で上流階級の貴婦人たちに紹介される。教養豊かなマドレーヌはジョルジュに新聞記事を書いてみないかと持ちかける。活字化されたジョルジュの戦争体験記事は好評を得るのだった。一方でシャルルの屋敷で紹介された人妻クロチルドと逢い引きを始める…
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ジョルジュに「ニュームーン/トワイライト・サーガ/2009」「リメンバー・ミー/2010」「恋人たちのパレード/2011」のロバート・パティンソン。
マドレーヌに「金色の嘘/2000」「宮廷料理人ヴァテール/2000」のユマ・サーマン。
ヴィルジニに「ルパン/2004」「ブーリン家の姉妹/2008」「ずっとあなたを愛してる/2008」「お買いもの中毒な私!/2009」「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ/2009」「サラの鍵/2010」「砂漠でサーモン・フィッシング/2011」のクリスティン・スコット・トーマス。
クロチルドに「僕のニューヨーク・ライフ/2003」「ニューヨーク、アイラヴユー/2008」のクリスティナ・リッチ。
ムッシュー・ルセに「声をかくす人/2011」のコルム・ミーニイ。
スザンヌ・ルセに「ジェーン・エア/2011」のホリデイ・グレインジャー。
シャルルに「カレンダー・ガールズ/2003」のフィリップ・グレニスター。
監督はデクラン・ドネランとニック・オーメロッド。
原作はギイ・ド・モーパッサン。

ジョルジュはクロチルド、未亡人となったマドレーヌ、そして新聞社の社長ルセの妻ヴィルジニと次々に誘惑して行く。自らの美貌を武器に女を籠絡させ、上流社会へと成り上がって行く美しい男ジョルジュ。ラスト、彼が最後に選んだ相手はルセとヴィルジニの娘スザンヌだった。マドレーヌを捨てスザンヌと結婚したのは裏切られたルセに対する復讐。
ヴィルジニを執拗に誘惑し、飽きたからポイと捨ててしまうジョルジュはまるで動物のよう。このような廃退の時代だからか?とも思ったが、いやいや現代でもこのような男はきっと存在する。

ロバート・パティンソン はまぁまぁ適役か?「トワイライト」のレビューに大人なロバート・パティンソン が観たいと書いた。その後何作か観たけど、どうもこの方は「トワイライト」のイメージに引きずられているのか…どの役柄もエドワード・カレンとダブってしまう。

ユマ・サーマンをシアターで観たのは「ペイチェック 消された記憶/2003」以来。ユマ・サーマンはクラシック映画が似合う女優で、本作でもぴったり!ロバート・パティンソンはユマの存在感にはとても太刀打ち出来なそう。
クリスティン・スコット・トーマスはさすがの女優!あのような情けない役柄を演じるのだから…。
ホリデイ・グレインジャーは「アンナ・カレーニナ」にも出演しているUK女優。今wowowで放映中の「ボルジア家2 愛と欲望の教皇一族」でジェレミー・アイアンズ演じる怪しくてスキャンダラスな教皇ロドリーゴ・ボルジアの娘ルクレツィア・ボルジア役が可憐。
最後にクリスティナ・リッチに時代物は似合わない。

ギイ・ド・モーパッサンの小説“ベラミ”は大昔読んだ覚えがあるが全く記憶がなので今一度読んでみたい。
ロバート・パティンソンが主演するデヴィッド・クローネンバーグの「コズモポリス/2012」はただいま公開中。今月は観たい映画が目白押しでこちらはパスしそうな気配。

ヒューマントラストシネマ渋谷にて(既に上映終了)
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by margot2005 | 2013-04-22 00:07 | UK | Trackback(2) | Comments(0)

「汚(けが)れなき祈り」

「Dupa dealuri」…aka「Beyond the Hills」 2012 /ルーマニア/フランス/ベルギー
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アリーナとヴォイキツァは幼い頃に同じ孤児院で過ごした親友同士。ある日、ドイツで暮らしていたヴォイキツァが修道院に住むアリーナを訪ねてくる。その修道院は人里離れた丘の上に建っていた。アリーナは心からヴォイキツァを愛しており、ドイツで一緒に生活しようと願っていたが、ヴォイキツァはルーマニアの地を離れることに躊躇する。それは他でもなく信仰に深く目覚めたことによるものだった。思い通りにならないアリーナは不満を募らせるが、ヴォイキツァからは信仰するよう説得される。しかしアリーナの心が自分ではなく神にあることを感じ始めたヴォイキツァは次第に精神を病んで行く...
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ヴォイキツァにコスミナ・ストラタン。
アリーナにクリスティナ・フルトゥル。
司祭(神父)にヴァレリウ・アンドリウツァ。
修道女長にダナ・タパラガ。
監督、製作、脚本は「4ヶ月、3週と2日/2007」のクリスティアン・ムンジウ。

「4ヶ月、3週と2日/2007」はルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスクが妻と共に処刑される2年前が舞台で、テーマは違法中絶でとてもヘヴィーでツラいドラマだった。本作は“悪魔払い”の儀式で亡くなった一人の女性と、その親友にスポットを当てている。

新天地を求め親友をドイツへと誘うアリーナ。ヴォイキツァは信仰に身を捧げ修道院暮らしがあっていたが、アリーナはそうではない。精神に異常をきたした際入院し、退院後は修道院へ引き取られる。それが悲劇の始まりであった。アリーナは信仰心に薄くヴォイキツァのようにはなれなかったから。彼女が修道院以外のところで暮らしていれば悲劇は起きなかったかも知れない。でもアリーナには暮らす場所がなかった。貧困が招いた結果が哀しい。

宗教というのは自身にとってあまりにも非日常的な世界で、おまけに舞台は東ヨーロッパ。2005年にルーマニアの修道院で実際に起こった事件というのだからますます理解しがたい世界。“悪魔払い”なんて中世の出来事で、映画「エクソシスト」の世界でしかあり得ないし…。
儀式が行われる舞台の修道院周辺は深い雪に埋もれ神秘的だが、シーンはとてもリアルに描かれていて驚く。

神に身を捧げるヴォイキツァと、彼女を愛するレズビアンのアリーナ...このとんでもないシチュエイションが悲劇を招いた哀しいヒューマン・ドラマは152分とかなり長い。でもそれほど長さは感じなかったかな。
ヴォイキツァたちを乗せ、町中を走る車の中で唐突に訪れるラストに絶句した。
ヴォイキツァとアリーナはもちろんのこと、司祭や修道女長も素晴らしいキャスティングで、みな迫真の演技を披露していて、重い、重いドラマながら意外や見応えあった。

ヒューマントラスト有楽町にて(4/26迄上映予定:午前中1回のみ)
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by margot2005 | 2013-04-21 01:01 | スペイン | Trackback(6) | Comments(0)

「野蛮なやつら/SAVAGES」

「Savages」 2012 USA
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10代の頃からの親友である植物学者のベンと元傭兵のチョンは、大麻栽培ビジネスで大金をもうけ、カリフォルニアの美しいビーチで優雅に暮らしている。ベンとチョンの同居人であるOは、二人の恋人でもある。ある日、この平和で奇妙なトライアングル生活に危機が訪れる。ことの発端はメキシコの巨大麻薬組織がベンとチョンに提携を持ちかけたことから始まる。しかし二人がそれを拒否したためOが誘拐されてしまう...
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チョンに「ウルヴァリン:X-MEN ZERO/2009」「ジョン・カーター/2012」のテイラー・キッチュ。
ベンに「幻影師アイゼンハイム/2006」「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ/2009」「アルバート氏の人生/2011」のアーロン・ジョンソン。
O(オフィーリア)に「ニューヨーク、アイラヴユー/2008」「50歳の恋愛白書/2009」「ザ・タウン/2010」のブレイク・ライブリー。
デニスに「ママの遺したラヴ・ソング/2004」「サブウェイ123 激突/2009」「パリより愛をこめて/2010」のジョン・トラボルタ。
ラドに「悲しみが乾くまで/2008」「チェ 28歳の革命/2008」「チェ 39歳別れの手紙/2008」「セブン・デイズ・イン・ハバナ/2012」のベニチオ・デル・トロ。
エレナに「フリーダ/2002」のサルマ・ハエック。
スピンに「イン・トゥ・ザ・ワイルド/2007」「ミルク/2008」のエミール・ハーシュ。
監督、脚本は「ワールド・トレード・センター/2006」「ブッシュ/2008」のオリヴァー・ストーン。

原作は人気作家ドン・ウィンズロウの同名クライム・ノベル。小説はどのような展開なのか少々気になる。というのもクライム(犯罪)なのだが、ドラマはコメディっぽくてとても明るい。ベンとチョンのキャラが天真爛漫なのだろうか?それともさんさんと太陽が降り注ぐカリフォルニアのビーチが舞台だからだろうか?犯罪ドラマっぽくないのだ。
綿密に練った作戦で挑んだ0奪還のシーンは中々面白かった。それと二通り描かれたラストもまあまあ楽しめたが、全体的には「ワールド・トレード・センター」の次に並ぶオリヴァー・ストーンつまらない映画にランクインしたい。

オリヴァー・ストーンといえば戦争や社会派ドラマの名監督。「プラトーン/1986」「ウォール街/1987」「7月4日に生まれて/1989」「JFK/1991」「ニクソン/1995」などを思い出す。歴史物の「アレキサンダー/2004」も面白かった。で、このような作品も作るのだと少々興味を覚えて観に行った。
とにかく共演陣が豪華。
ジョン・トラボルタ演じる麻薬捜査官デニスはマジで捜査官?って聞きたいくらい能天気なキャラで笑わせてくれる。殺し屋ラド役のデル・トロもメキシコの巨大麻薬組織の女ボス、エレナ役のサルマ・ハエックも共に凄まじかった。
何はともあれ、主演の3人が脇役であるトラボルタ、デル・トロ、ハエックに食われてしまっている。

チョンを演じるテイラー・キッチュはかなり影薄かったけど...他に演じる人いなかったのだろうか?
アーロン・ジョンソン映画は「アンナ・カレーニナ」も鑑賞済。貴族役は少々違和感あったかも。アーロンは本作とか「キック・アス/2010」のキャラの方が似合う。ジョン・レノン役もgoodだった。

日比谷 みゆき座にて(既に上映終了)
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by margot2005 | 2013-04-20 01:11 | USA | Trackback(1) | Comments(0)

「シャドー・ダンサー」

「Shadow Dancer」 2012 UK/アイルランド
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コレットは北アイルランドに暮らすシングルマザー。幼い頃よりIRA(アイルランド共和軍)の活動に従事する家族を目のあたりにし、自らもIRAに身を投じていく。そして1993年、ロンドン、地下鉄爆破未遂事件の容疑者として逮捕される...

コレットに「わたしを離さないで/2010」「ウォリスとエドワード 王冠をかけた恋/2011」のアンドレア・ライズブロー。
M15(イ ギリス諜報局保安部)の捜査官マックに「インサイドマン/2006」「エリザベス:ゴールデン・エイジ/2007」「ザ・バンク 堕ちた巨像/2009」「デュプリシティ ~スパイは、スパイに嘘をつく~/2009」のクライヴ・オーエン。
マックの上司ケイト・フレッチャーに「X-ファイル:真実を求めて/2008」のジリアン・アンダーソン。
コレットの母にブリッド・ブレナン。
コレットの兄ジュリー・マクビーに「ブリッツ/2011」のエイダン・ギレン。
同じく兄コナー・マクビーに「わたしを離さないで」のドーナル・グリーソン。
監督は「キング 罪の王/2005」「マン・オン・ワイヤー/2008」のジェームズ・マーシュ。
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クライヴ・オーエン狙いで観に行った。クライヴもお気に入り英国人俳優の一人。
盛り上がることなく、ただひたすら淡々と進むストーリーに睡魔が襲いかかったがなんとか持ちこたえ最後まで観ることができた。そうシアターは空いていた確かに。
昨今、USA映画出演が多いクライヴ・オーエンだが「グリーンフィンガーズ/2000」「ゴスフォード・パーク/20001」以来のファン。50歳近いけどとてもゴージャスな英国人俳優だ。

映画のオフィシャルにも書いてあるように本作の時代背景である90年代始めに“IRA”を描いた映画が何作か公開されている。「クライング・ゲーム/1992」「パトリオット・ゲーム/1992」「父の祈りを/1993」はそれぞれに素晴らしい作品だった。
本作は今まで描かれたことがなかった母親が主人公。“a brilliant thriller”と褒めちぎってるポスターや、オフィシャルには“珠玉のサスペンス”とも書いてある。一人息子を守るため家族を欺き、密告者として生きることを決意したコレットの姿は健気で感動的だが、この地味なサスペンス・ドラマにいたく感動するとまではいかなかった残念なことに…。

ケン・ローチがカンヌ映画祭パルム・ドール(2006)を受賞した、キリアン・マーフィー主演の「麦の穂をゆらす風/2005」はアイルランドの独立戦争を描いた素晴らしいドラマだったのを思い出す。

原タイトル“シャドー・ダンサー”とはある人物のコードネーム。ラスト近くにその人物が意外な人であったことが明かされる。そしてコレットとマックのそれぞれのラストも…特にマックのラストは意外だった。
寒々としたアイルランド、ダブリンで、赤いレインコートに身を包むコレットの姿はミスマッチこの上ないが、強い意志を示すコレットを表現しているようにも見えナイスな小道具(衣装)かと思えた。

ヒロインを演じるアンドレア・ライズブローはほぼ全編スッピン!前作「ウオリスとエドワード 王冠をかけた恋」の厚化粧とは対照的で最初違和感ありまくりだった。アンドレア・ライズブローは時代物のウォリス”役が実に似合っていたなと再納得。


シネスイッチ銀座にて(4/19迄上映予定)
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by margot2005 | 2013-04-16 00:52 | UK | Trackback(5) | Comments(0)