カテゴリ:ヨーロッパ( 54 )

「愛さえあれば」

「Den skaldede frisør」…aka「Love Is All You Need」2012 デンマーク/スウェーデン/イタリア/フランス/ドイツ
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フィリップに「あぁ、結婚生活/2007」「リメンバー・ミー/2010」「ゴーストライター/2010」「ケイト・レディが完璧(パーフェクト)な理由(ワケ)/2011」のピアース・ブロスナン。
イーダに「未来を生きる君たちへ/2010」「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮/2012」のトリーヌ・ディルホム。
イーダの夫ライフに「未来を生きる君たちへ」のキム・ボドゥニア。
フィリップの息子パトリックにセバスチャン・イェセン。
イーダの娘アストリッドにモリー・ブリキスト・エゲリンド。
フィリップの亡妻の妹ベネディクテに「しあわせな孤独/2002」のパプリカ・ステイーン。
監督、原案に「しあわせな孤独」「ある愛の風景/2004」「アフター・ウエディング/2006」「悲しみが乾くまで/2008」「未来を生きる君たちへ」のスザンネ・ビア。
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スザンネ・ビア作品ということで観に行った次第。そしてスザンネ・ビアらしからぬ大人のラヴ・ストーリーは、舞台となったイタリア、ソレントのレモン畑の香りが漂うばかりに爽やか。しかしただ爽やかなだけではない。
主人公の男女にはそれぞれツライ体験がある。フィリップは愛する妻を交通事故で亡くして以来立ち直れていない。一方でイーダは乳がんと闘った末、髪は抜け、おまけに夫は若い女と浮気をしている。
そしてある日、フィリップとイーダはデンマーク、コペンハーゲンの空港で遭遇する。それというのも、フィリップの息子パトリックと、イーダの娘アストリッドが結婚することになり、空港では花婿の父と花嫁の母の出会いだった。この辺りはかなり出来過ぎだけど、映画だから許してしまった。

イタリア舞台のデンマーク映画で、ピアース・ブロスナンのキャスティングに興味を惹かれた。ブロスナンはデンマークで知り合った女性と結婚したUK人の実業家フィリップ役。

少々ネタバレする...コペンハーゲンで出会った二人はイタリア、ソレントで再会し惹かれ合うが、その地では結ばれない。コペンハーゲンに戻ってからフィリップはイーダにアプローチをかける。でもそこでもイーダはすぐにフィリップを受け入れないのだ。やがて大ラス、夫ライフにさよならしたイーダは再びイタリアに向かう。あの展開はスゴく良かった。
感動のドラマってほどではなかったが、今迄観たスザンネ・ビア作品のなかで一番ロマンティックな作品かな。

イーダ役のトリーヌ・ディルホムはニ作品でお目にかかっている。前作「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」は時代物ということもあるが、本作の彼女は中々素敵だ。
原タイトルは“ハゲの美容師”とそのものズバリのタイトルだが、髪が伸びてベリー・ショートのイーダがとてもチャーミングに映る。
しかしながらピアース・ブロスナンはそろそろ60歳だというのに実にsexyなのだ。元ジェームズ・ボンドならでは…。

TOHOシネマズ・シャンテにて(6/27迄)
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by margot2005 | 2013-06-28 00:26 | ヨーロッパ | Trackback(5) | Comments(0)

「エージェント・ハミルトン ~ベイルート救出大作戦~」

「Hamilton: Men inte om det gäller din dotter」…aka「Agent Hamilton 2 - In persönlicher Mission」2012 スウェーデン
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ある日、スウェーデン情報局のエヴァの娘がテロ組織に誘拐される。カール・ハミルトンは少女の代父(ゴッドファーザー)でもあった...
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カール・ハミルトンに「未来を生きる君たちへ/2010」「ヒプノティスト-催眠-/2012」のミカエル・パーシュブラント。
Mouna Al Fatharにサバ・ムバラク。
エヴァに「歓びを歌にのせて/2004」のフリーダ・ハルグレン。
「ドレスデン、運命の日/2006」のジョン・ライトがサウジアラビア出身のUK人役で出演している。
監督はトビアス・ファルク。

例によって期間限定レイトショーのみの公開。最近通うようになったヒューマントラストシネマ渋谷での上映で、期間限定レイトショーながらシアター満席だった(一番小さなシアター)。
本作は本国スウェーデンで大ヒットしたスパイ・アクションシリーズの第二弾。昨年8月に公開された第一弾「エージェント・ハミルトン 〜祖国を愛した男〜/2012」は観ていない。何はともあれ、主演が最近気になるスウェーデン人俳優ミカエル・パーシュブラントで観たかった一作。

穏やかな役柄しか見たことがないミカエル・パーシュブラントがシークレット・エージェントだなんて??だったがコレが中々似合っている。アクションよりも頭脳で挑むシーンの方が多いのもミカエル・パーシュブラントならではの魅力なのかも知れない。
本作も、前作「エージェント・ハミルトン 〜祖国を愛した男〜/2012」も既にDVDになっている。

ドラマは幼い少女がイスラムのテロ組織に誘拐されることから始まる。テロ組織に挑むハミルトンの頭脳作戦が秀逸。ヨーロッパや中東を舞台に繰り広げられる展開も素晴らしい(スウェーデン、ストックホルム/UK、ロンドン以外のロケはスペイン)。
しかしながら幼い少女にイスラムの教えを洗脳するテロ組織たちが実に恐ろしい。

ハミルトンの相棒役で、ヨルダン出身のサバ・ムバラクがスゴくクールなのと、「歓びを歌にのせて」でのレナ役が印象的だったフリーダ・ハルグレンが懐かしい。

ヒューマントラストシネマ渋谷にて(既に上映終了)
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by margot2005 | 2013-06-19 21:46 | ヨーロッパ | Trackback | Comments(0)

「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」

「En kongelig affære」…aka「A Royal Affair」 2012 デンマーク/スウェーデン/チェコ・リパブリック
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18世紀後半。英国王ジョージ3世の妹カロリーネは15歳でデンマーク王クリスチャン7世と結婚する。しかしクリスチャンは精神を病んでおり、カロリーネは結婚生活に絶望を感じ、次第に孤立して行くのだった...
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ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセに「偽りなき者/2012」のマッツ・ミケルセン。
王妃カロリーネ・マティルデに「アンナ・カレーニナ/2012」のアリシア・ヴィキャンデル。
デンマーク王クリスチャン7世にミケル・ボー・フォルスゴー。
ユリアーネ・マリーエに「未来を生きる君たちへ/2010」のトリーヌ・ディルホム。
監督、脚本は「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女/2009」の脚本家ニコライ・アーセル。

“デンマークでは王室史上最大のスキャンダルとして誰もが知る18世紀後半の実話…”ということながら日本人であるが故、もちろんそんなこと知らなかった。
王妃カロリーネは英国王ジョージ2世の孫にあたり、英国王ジョージ3世の妹。

精神を病んだ夫に絶望した妻は夫の侍医であるドイツ人医師ヨハンと密通を重ねる。野心家のヨハンは啓蒙主義に心酔しており、国王クリスチャンをも操り宮廷を支配するまでになる。しかしクリスチャンの父親であるフレデリク5世の妻ユリアーネと、摂政フレデリクも黙ってはいなかった。

しかしながら、一介の侍医が摂政となり、それが持続するなんてあり得るのだろうか?精神を病んだ国王と孤独な王妃の心をつかんだのは認めるけど...。
ヨハンのラストはあれが当然の姿かと思える。

侍医ヨハンを演じるマッツ・ミケルセンはヨーロッパのお気に入り俳優の一人。若い王妃と恋に落ちる役どころは...少々お年かな?とも思ったけど、あの時代年の差が激しいカップル(あの時代はもちろん男が年上)は多々いたようなので違和感ないのかも知れない。
マッツ・ミケルセンは時代物も似合うが、私的にマッツ映画は現代物が好き。「偽りなき者」のルーカスは素晴らしかった。

王妃カロリーネ役のアリシア・ヴィキャンデルは「アンナ・カレーニナ」のキティ役で記憶に新しいスウェーデン出身のチャーミングな女優。

デンマーク王フレデリク5世(クリスチャン7世の父親)の妻ユリアーネ・マリーエはクリスチャン7世の実母ではないので、ちょっと意地悪なおばさんのノリで君臨している姿が以外にユーモラスに描かれていて面白い。

デンマークの歴史にはそれほど興味がないので、デンマーク王室史上最大のスキャンダルといわれても、そうなんだ…くらいの感覚しかないが、ロケされた景色が素晴らしく美しくかった。で、やはりこれだからヨーロッパ映画はやめられない。ロケーションはチェコ・リパブリック。

渋谷 Bunkamura ル・シネマにて(既に上映終了)
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by margot2005 | 2013-06-18 00:39 | ヨーロッパ | Trackback(6) | Comments(4)

「メランコリア」

「Melancholia」2011 デンマーク/スウェーデン/フランス/ドイツ
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ジャスティンに「マリー・アントワネット/2006」のキルステン・ダンスト。
クレアに「アンチクライスト/2009」のシャルロット・ゲンズブール。
マイケルに「ロシアン・ルーレット/2010」のアレキサンダー・スカルスガルド。
ジョンに「フォーン・ブース/2002」のキーファー・サザーランド。
姉妹の母親ギャビーに「家の鍵/2004」「エンジェル/2007」「彼が二度愛したS/2008」「ある公爵夫人の生涯/2008」「わたしを離さないで/2010」のシャーロット・ランプリング。
父親デクスターに「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国/2008」「ニューヨーク、アイラヴユー/2008」「リミッツ・オブ・コントロール/2009」のジョン・ハート。
リトル・ファーザー(執事)に「007/カジノ・ロワイヤル/2006」 「007/慰めの報酬/2008」「ヴィクトリア女王 世紀の愛/2009」のイェスパー・クリステンセン。
ジャスティンのボス、ジャックに「宮廷画家ゴヤは見た/2006」「天使と悪魔/2009」「ドラゴン・タトゥーの女/2011」のステラン・スカルスガルド。
新人ティムに「ファニーゲームU.S.A./2007」のブラディ・コーベット。
クレアとジョンの息子レオにキャメロン・スパー。
ウェディング・プランナーに「ソウル・キッチン/2009」のウド・キア。
監督、脚本は「ダンサー・イン・ザ・ダーク/2000」「ドッグヴィル/2003」「アンチクライスト/2009」のラース・フォン・トリア。
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ラース・フォン・トリアが描く世界はどうもダメだがこれは素敵な作品だった。なんといっても映像が素晴らしく美しい。オープニングのスローモーション映像は何度も予告で観ていて、絶対に観たい!と思っていた。こんな素敵な映画なのに上映期間が短くて驚く(上映最終日の最終回は半分くらいの入りだった)。

巨大惑星メランコリアと地球が衝突し世界が終わりを迎える…がテーマ。これがハリウッド映画なら大スペクタクルで描かれることだろう。しかしラース・フォン・トリアの手にかかると幻想的で、この上なく美しく描かれていてファンタスティック!!

映画は“第1部ジャスティン”“第2部クレア”とそれぞれのヒロインを中心に描いている。第1部では情緒不安定なジャスティンが起こすトラブルの数々が描かれ、第2部ではクレアの心境を丁寧に描いている。
第1部では不安定極まりなかったジャスティンが、第2部の終盤では落ち着きを取り戻し、逆にクレアが動揺しまくっている。この姉妹の対比が面白い。


映画の撮影に使われたTjolöholm Castleはチューダー様式のスエーデンの城。映像ではなく実際に訪れたらもっと、もっと素敵に映るスポットであるに違いない。

映画のポスターはジャスティンが“ハムレット”のオフィーリアのように見える。映画の中にジョン・エヴァレット・ミレイの“オフィーリア”の絵や、カラヴァッジョ、そしてオープニングにも登場する雪景色を描いたブリューゲル“雪中の狩人”など、などアートの世界も楽しめる。

“メランコリア”とは直訳すると“鬱病”。盛大なる結婚披露宴の最中、会場を抜け出し、ウエディング・ドレスのままバスタブに身を沈めるジャスティンは情緒不安定な女性。やがてパーティも終盤を迎え夫マイケルとベッドを共にするはずが…“ちょっと待って!”と言い残し部屋を出て行く。あげく、ジャックから紹介されたばかりの新人ティムと庭でsexする始末。あんなに素敵なマイケルと結婚したばかりでこの女性いったいどうなってるの?と疑いまくりで...でも情緒不安定な人間の取る行動は計り知れない。案の定二人は結婚式当日に別離を迎える。
ジョンがクレアに”君の家族はみな異常だ!”というようにギャビーとジャスティンはマジでクレージーな母娘だ。

巨大惑星メランコリアが地球に接近して来る。不安と恐怖で落ち着かないクレアを必死になだめるジョン。しかし結果ジョンの取る行動は男らしくなかった実に。やはり最後に開き直るのは女性かも知れない。

ギャビー役のシャーロット・ランプリングがいつものように怪しい魅力を振りまいている。別れた夫デクスターを演じるジョン・ハートも良いな。でも地味な存在でありながら密かに存在感を示すリトル・ファーザー役のイェスパー・クリステンセンが記憶に残る。
「インタビュー・ウイズ・ヴァンパイアー/1994」でブラッド・ピットと共演した時は人形のようにキュートだったキルステンも来月30歳になるという。キルステンは「マリー・アントワネット」も素敵だったが、ジャスティンが素晴らしい!カンヌ映画祭で女優賞に輝いたのも頷ける。
アレキサンダー・スカルスガルドがステラン・スカルスガルドの息子だとは初めて知った。似てなくもないが、息子の方がハンサム。わたし的にちょっと好みかな。
「ソウル・キッチン」で懐かしかったウド・キアがまたまた登場していて嬉しい限り。この方若い!

日比谷 みゆき座にて(既に上映終了)
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by margot2005 | 2012-03-07 22:19 | ヨーロッパ | Trackback(6) | Comments(0)

「クリスマスのその夜に」

「Hjem til jul」…aka「Home for Christmas」2010 ノルウェー/スウェーデン/ドイツ
監督、製作、脚本は「ホルテンさんのはじめての冒険/2007」のベント・ハーメル。
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昨年観た映画のレビューがたまっていて、書くのはやめようかとも思ったが“ヨーロッパ映画”だけは外したくないので今更ながら....

クリスマスは終わり、年も開けた。映画を観たのはクリスマス・イヴ・イヴ・イヴのもっと前。
イヴを迎えたノルウェーの小さな町…とあるがロケされたのはドイツ??しかしながらとにかく雪景色が素晴らしく美しい!

エルサ&クヌート
ヨルダン&ヨハンヌ
カリン&クリスティン
トネ&パウル
トマス&ビントゥ
コソボ出身の男女

オープニングの殺伐とした風景から上に書いたカップルのショート・ストーリーが描かれラストへとつながる。
「ホルテンさんのはじめての冒険」のレビューにベント・ハーメルの「キッチン・ストーリー/2003」は見ていないと書いたが、その後見る機会に恵まれた。それはとても奇想天外なストーリーで、「ホルテンさんのはじめての冒険」」以上のものがあり、この監督の感性にそそられた気がする。
この映画もベント・ハーメルの感性で描かれた、クリスマスを舞台にした心温まるストリー。でも本作より「ホルテンさんのはじめての冒険」の方が好きかな?

ヒューマントラストシネマ有楽町にて(既に上映終了)
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by margot2005 | 2012-01-28 22:17 | ヨーロッパ | Trackback(1) | Comments(0)

「未来を生きる君たちへ」

「Hævnen」…aka「In a Better World」2010 デンマーク/スウェーデン
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監督、原案に「しあわせな孤独/2002」「ある愛の風景/2004」「アフター・ウエディング/2006」「悲しみが乾くまで/2008」のスザンネ・ビア。
アントンにミカエル・パーシュブラント。
妻マリアンにトリーヌ・ディルホム。
息子エリアスにマルクス・リゴード。
クラウスに「ある愛の風景/2004」「ザ・バンク 堕ちた巨像/2009」のウルリク・トムセン。
息子クリスチャンにウイリアム・ヨンク・ユエルス・ニルセン。
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デンマークに暮す少年エリアスはアフリカの難民キャンプで医師としてボランティア活動をしている父親が誇りだった。しかし残念な事に両親は不仲で別居中。そして学校では執拗なイジメに合っていた。そんな折、転校して来たクリスチャンと出会う...

“殴られた。だから殴った。”
“戦争はそうやって始まるんだ。”とチラシにあるが…
徹底して非暴力を貫く父親…自身の怒りを完璧にコントロール出来る姿に感動を覚える。

スザンネ・ビア映画はどれもこれも“家族の愛”を描いた世界が素晴らしい!デンマーク/スエーデンではなくアメリカを舞台に描いた「悲しみが乾くまで」は今一だったが、こちらは是が非でもマイベストに入れたい作品。

クリスチャンは母の死後父親と共に祖母の家に移り住むが、仕事一筋の父親は家を空ける事が多く、言いようのない寂しさを抱えていた。そしてある日とうとう、ガンで亡くなった母の死は父のせいだと罵倒する。
クリスチャンは転校した学校で執拗なイジメに合うエリアスを助ける。やがて彼はエリアスをいじめる同級生にナイフをもって制裁する。
エリアスの家族と出かけたある日、エリアスの弟がイジメに合う。それを見た父親アントンは、いじめた子供の父親に注意をするが、その父親は子供の否を認めるどころかアントンを殴ってしまう。殴られてもただ耐え、殴り返さないエリアスの父親を見て呆然となったクリスチャンは“なぜ殴り返さないのか?”とアントンに詰め寄るが返って来たのは“バカな男は相手にしない方が良い。”と言う言葉だった。
アントンは“殴られた。だから殴った。”という制裁は決してしない。

やがてクリスチャンの溜まりに溜まっていた“怒り”が爆発する。エリアスの父親を殴った男に制裁を下すのだ。しかしそのため事故が起き、エリアスが怪我をしてしまう。

一方でエリアスは不仲の両親が気がかりだった。父親はアフリカより一時帰国の際エリアスが母親や弟と住む家には戻らず、湖に近い家を借りていた。そしてエリアスは弟と父を訪ね男だけで一時を過ごすのだった。

クリスチャンもエリアスも心に深い寂しさを抱えている。クリスチャンは攻撃的な性格だが、エリアスは穏やか。エリアスの父親は非暴力者で、クリスチャンの父親も、息子にののしられても冷静で穏やかな性格を崩さない。

医師のアントンが活動するアフリカ、ケニアでの暴力も描かれている。ある日、ビッグマンが負傷しアントンの難民キャンプに運ばれて来る。“ビッグマン”とは妊婦の腹を切り裂く極悪人のこと。医者の立場からビッグマンの手当をするが、キャンプに詰めかけ、口々に訴える難民たちの声を聞いたアントンはビッグマンをキャンプから追い出してしまう。

ぴったりではないが、邦題になっている“未来を生きる君たちへ”は非暴力を貫き、怒りをコントロールする医師アントンの祈りのようだ。Internationalタイトルの“In a Better World/より良い世界で”は中々良いなと感じる。原題のデンマーク語はそのものズバリ“復讐”。

TOHOシネマズシャンテにて
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by margot2005 | 2011-09-04 23:32 | ヨーロッパ | Trackback(19) | Comments(0)

「アンチクライスト」

「Antichrist」 2009 デンマーク/ドイツ/フランス/スウェーデン/イタリア/ポーランド
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彼女に「ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール/2001」「フレンチなしあわせのみつけ方/2004」「恋愛睡眠のすすめ/2005」「アイム・ノット・ゼア/2007」「アニエスの浜辺/2008」のシャルロット・ゲンズブール。
彼に「パリ、ジュテーム2006」「インサイド・マン/2006」「フェアウェル/哀しみのスパイ/2009」のウイレム・デフォー。
監督、脚本に「奇跡の海/1996」「ダンサー・イン・ザ・ダーク/2000」のラース・フォン・トリアー。
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ある雪の降る夜、夫婦で愛を交わす最中に一人息子が窓から転落死する。葬儀の最中に哀しみに耐えかねた彼女は気を失い病院に入院する。しかし病院から半ば強引に彼女を家に連れ帰った彼は、自ら彼女に催眠療法を施すため森に連れ出す...

ラース・フォン・トリアーの「奇跡の海/1996」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ドッグヴィル/2003」はどれもこれも暗くて後味の悪い代物ばかり…「ダンサー〜」はその最たるものだったが、こちらはそれ以上。二度と観たくない映画がまた一つ増えた。
公開2週目のウイーク・ディ最終回はほぼ満席。途中で席を立とうかと迷ったが、周りの人々がスゴく一生懸命に観てる雰囲気に圧されてしまって結局最後まで観てしまった。

夫婦でメイクラヴの最中息子が事故に遭う。あの時、彼女はベビーベッドから飛び出し、窓のそばにいる息子の姿が見えているように感じた。しかし彼女は彼とのsexに夢中でクライマックスに至る。自身の愛欲に溺れ、彼から身体を離すことが出来なかったのだろうか??それ故に息子を亡くした哀しみ、後悔が彼女に襲いかかる。幼い息子を亡くす哀しみには計り知れないものがあるだろうが、彼女は神経を病み次第に鬱状態に陥って行く。やがてセラピストの彼が彼女に催眠治療しようと森に連れ出す。そこは“アダムとイヴが出会ったエデン”だった。キリスト教(聖書)は全く非日常的な世界なので、映画で描かれるさまは理解出来ない。個人的には、あまりにも絶望的で救いがたい作品で観ていてとても、とても疲れた。
はさみのシーンはとても観れなかった。映倫修復前のシーンなど想像しただけで身震いしてしまいそう。

オープニング、外は雪景色。オペラのアリアが流れる中、幼い息子が窓からスローモーションで落ちて行くシーンはとても衝撃的だし、森のシーンで大量にドングリの実が落ちてくる不気味な音や、森に住む生き物たちの残虐な姿が効果的に登場し印象に残る。でも圧巻だったのは木の根っこの間から出て来る無数の手足と身体。
某新聞映画評に“ホラー映画と言っていいかも知れない。”とあったが、これには同感。
そして、カンヌ国際映画祭主演女優賞(2009)を受賞したシャルロットと、デンマーク映画批評家協会賞/主演男優賞(2010)受賞のウイレム・デフォー、二人の俳優の演技にはただただ感服する。
新宿武蔵野館にて
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by margot2005 | 2011-03-27 19:53 | ヨーロッパ | Trackback(3) | Comments(0)

「サラエボ、希望の街角」

「Na putu」…aka「On the Path」「Le choix de Luna」 「Zwischen uns das Paradies」2010 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ/オーストリア/ドイツ/クロアチア
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監督、脚本に「サラエボの花/2006」のヤスミラ・ジュバニッチ。
ルナにズリンカ・ツヴィテシッチ。
アマルに「サラエボの花」のレオン・ルチェフ。
ナジャに「サラエボの花」のミリャナ・カラノヴィッチ。
アマルの旧友バブリヤにエルミン・ブラヴォ。
ルナの友人シェイラにニナ・ヴィオリッチ。
ルナの祖母にマリヤ・ケーン。
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ボスニア紛争から15年、サラエボに住むルナはキャビン・アテンダント。ルナと同居中の恋人アマルは空港の管制塔で働いている、ある日、職場に酒を持ち込んだアマルは停職処分になる。そんな折、ルナと友人を伴いドライヴに出かけたアマルは偶然旧友のバブリヤと再会する。停職中だったアマルに子供たちにPCを教える仕事があると誘うバブリヤ。アマルと離れるのが辛いルナは、街から遠く離れた仕事場に行くアマルに反対するが彼は行ってしまう...

ヒロイン、ルナを演じるズリンカ・ツヴィテシッチと、その恋人アマル役レオン・ルチェフはクロアチア出身。
ルナをキャンプに連れて行くナジャ役に「サラエボの花」のヒロイン、ミリャナ・カラノヴィッチが扮している。

異なる民族と異なる宗教(イスラムとカトリック)が共存しているサラエボ。現在の宗教はイスラム教が大半を占めているそう。旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴヴィナはカトリックのイメージなので、ここにもイスラムが台頭して来ていることを改めて知った。
人里離れた湖のほとりで共同生活するイスラム原理主義者たち。男と女は別のテントで生活し、女はもちろんチャドルに身を包んでいる。真っ黒のチャドルに身を隠したナジャが、テントに入るなり頭の部分を脱ぎ捨てる。その時に現れた彼女の長い赤毛にはスゴく違和感を感じた。そしてそこにいるルナはとても、とても場違いな雰囲気だった。

アマルもルナもイスラム教徒。ある日、アマルはイスラム原理主義を信じる旧友バブリヤと再会する。やがてアルコール依存症で、停職中のアマルがそれに傾倒して行くのに時間はかからなかった。そしてルナはそんなアマルが理解できなくついて行けなくなってしまう。
アマルは肌を露出したドレスを着て夜遊びするルナを連れ帰ろうとする。子供が欲しいのに出来なくて悩むルナに“ぼくたちは結婚していないから(彼らは恋人で同居中)子供が出来ないのだ。”とsexをも拒む。
結婚しないでsexするのも、肌を露出し、クラブで酒を飲むのも、今のアマルにとっては邪悪以外の何物でもないのだ。
ある日、礼拝堂で一夫多妻OKのイスラム教徒の結婚式、(妻は年若い女の子)を見てしまったルナは耐えきれなくなり礼拝堂を飛び出して行く。

“サラエボ戦争”により目の前で両親を殺されたルナ。戦場で過酷な体験をし、その後アルコール依存症となったアマル。二人が引きずっている哀しみは底深い。しかしそれを乗り越え、ルナは西洋的で、前向きな生き方をして来た。なのにアマルはイスラム原理主義に傾倒し、古くさい生き方に戻ろうとしている。愛するアマルのそんな姿を見るに忍びないルナは自身の中で葛藤を繰り返す。そしてとうとう念願の妊娠に至ったルナの決断は…
深く愛し合っている二人のラスト...“家に戻ってくれ!”と言うアマルに、“あなたが戻って来て!”というルナの言葉…それは家に戻って一緒に生活するのではなく、“前のあなたに戻って!”と言う気持ちがこもっていて素晴らしかった。
哀しみを乗り越え、前向きに生きようとするヒロイン役のズリンカ・ツヴィテシッチは美しく、魅力的な女優だ。
神保町 岩波ホールにて
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by margot2005 | 2011-02-26 20:45 | ヨーロッパ | Trackback(5) | Comments(0)

「誰がため」

「Flammen & Citronen」 ...aka「Tage des Zorns」2008 デンマーク/チェコ・リパブリック/ドイツ
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フラメンに「青い棘/2004」「天使と悪魔/2009」のトゥーレ·リントハート。
シトロンに「しあわせな孤独/2002」「キング・アーサー/2004」「007/カジノ・ロワイヤル/2006」「アフター・ウエディング/2006」のマッツ·ミケルセン。
ゲシュタポのトップであるホフマンに「フライト・プラン/2005」「ワルキューレ/2008」「イングロリアス・バスターズ/2009」のクリスチャン·ベルケル。
二重スパイ ケティにスティーネ·スティーンゲーゼ。
ドイツ軍大佐ギルバートに「リプリーズ・ゲーム/2002」「ミュンヘン/2005」「ヒルデ ー ある女優の光と影/2009」のハンス·ツィッシュラー。
シトロンの妻ボーディルにミレ·ホフマイーヤ·リーフェルト。
フラメンとシトロンの上司ヴィンターにピーター·ミュウギン。 
監督、共同脚本にオーレ·クリスチャン·マセン。
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1944年、デンマーク。首都コペンハーゲンはナチス・ドイツの占領下に置かれていた。そんな折、怯える市民たちの中に、打倒ナチスを掲げる地下抵抗組織の一員として行動する男がいた。それは23歳のフラメンと33歳のシトロン。彼らは上層部からの指令でナチスに協力する売国奴を暗殺していた。若さからか殺しに抵抗のないフラメンに対し、シトロンは殺す事に抵抗を抱いていた。やがて二人は指令により暗殺リストに上がる人物が本当に裏切りものなのか確信が持てなくなって行く...
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2009年のブログ始めはハンガリー映画。今年はデンマーク映画から...勿論年末に観た映画。都内のミニシアター、火曜サービス・デーにあたりシアターは混雑していた。

ヨーロッパ舞台の第二次世界大戦映画を観ると、アドルフ・ヒトラーはヨーロッパを全て自分のものにしようと考えたとんでもない男だったことを改めて知らされる事になる。デンマークも然り。
「青い棘」でアウグスト・ディール演じるギュンターのかつての恋人ハンスを演じたトゥーレ·リントハートがレジスタンス活動に身を投じ、暗殺者となり、自殺に至るまでの凄まじい姿を好演している。「青い棘」から6年が経過したが、ベィビー・フェイスは健在。
妻子がありながら暗殺者となったシトロン。レジタンス活動のため家族を顧みない夫を捨て新しい男と生活を始める妻ボーディル。愛する妻と幼い娘に去られたシトロンを襲う寂しさと哀しみ。マッツ感情表現上手い!1月公開予定の「シャネル&ストラヴィンスキー/2009」早く観たい!
ラスト近くホフマン率いるゲシュタポの兵士たちに襲撃されるシトロン。彼は負傷した身体を休めるため隠れ家でパジャマ姿。執拗なる襲撃にパジャマ姿で応戦するシトロンの姿が哀れに映る。
二重スパイだったケティを、疑いながらも信じ続けたフラメンも気の毒だが、終始疑われながらも愛するフラメンを最後まで騙したケティも哀れである。
ゲシュタポのリーダー、ホフマンを演じるクリスチャン・ベルケルはW.W.2映画には欠かせない存在。
デンマーク、アカデミー賞に輝き、デンマーク映画史上最高の製作費をかけたというこの作品。デンマーク、コペンハーゲンは勿論、チェコ・リパブリックのプラハやドイツ、ベルリンでのロケーションや、1940年代の街の再現も素晴らしい。
渋谷 シネマライズにて
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by margot2005 | 2010-01-02 23:56 | ヨーロッパ | Trackback(14) | Comments(4)

「英国王 給仕人に乾杯!」

a0051234_23342079.jpg「Obsluhoval jsem anglického krále」...aka「I Served the King of England」2006 チェコ/スロヴァキア

チェコ・プラハを舞台に、涙と笑いのコメディ・ドラマ。

青年期のヤン・ジーチェにイヴァン・バルネフ。
老年期のヤン・ジーチェにオルドジフ・カイゼル。
リーザに「ベルリン、僕らの革命/2004」「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々/2005」のユリア・イェンチ。
ヴァルデンに「スイート・スイート・ヴィレッジ/1985」のマリアン·ラブダ。
スクシーヴァネク給仕長にマルチン・フバ。
監督、脚本は「スイート・スイート・ヴィレッジ」のイジー・メンツェル。
原作はボフミル・フラバルの“英国王 給仕人に乾杯!”。

1963年、チェコのプラハ。共産主義体制の刑務所から出所したヤン・ジーチェはドイツ国境にあるズデーテン山中に向かう。そして、彼は若い頃を懐かしく思い出す...
ヤンは億万長者になりホテルのオーナーになる事を夢みていた。彼の最初の給仕は駅でのソーセージ売り。やがて田舎町のホテル・レストランの給仕見習いとなり、ユダヤ系の行商人ヴァルデンと出会う。その後どんどん出世していったヤンはプラハの越一流レストラン“ホテル・パリ”の主任給仕となる。一方で、ヒトラーが台頭しナチスの占領下となったプラハ。そんな折ヤンはズデーデンのドイツ人女性リーザと出会い恋に落ちる...
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老年期のヤンが語る手法でストーリーは展開。登場人物の台詞は少なく、時に無声映画のようにバックの音楽がシーンを盛り上げ、まるでチャップリンの無声映画のようにも感じる。おまけに主人公のヤンがチビで、鼻下にもヒゲがありチャップリンを彷彿とさせ、監督の演出は素晴らしい!の一言。
田舎のホテル・レストランで出会った娼婦から始まり、ヤンを取り巻く女性たち(決して彼がもてるわけではない)がファンタジーのように描かれているのも美しい。女性たちの時代物ファッションもお洒落。
「スイート・スイート・ビレッジ」もほのぼのとした素晴らしいドラマだったが、この作品も素晴らしいコメディに仕上がっている。
なんてったって主人公ヤンを演じたイヴァン・バルネフが最高!
“私は英国王に給仕した”というのが原タイトル。給仕をしたのはヤンではなく“ホテル・パリ”のスクシーヴァネク給仕長なんだけど...
スクシーヴァネク給仕長はナチスに抵抗し続けやがてゲシュタポに逮捕される。ヤンが恋をしたリーザはドイツ人でヤンと結婚後軍服を着る。そして運命的に出会う行商人ヴァルデンはユダヤ人で、収容所に送られる列車の人となる。こういったナチス・ドイツを背景に、素晴らしいコメディ・タッチの人間ドラマとなっている。

今、一年中で一番忙しく、年末ぎりぎり迄仕事に明け暮れなくてはならない。なもので、後2本「懺悔」と「ラースと、その彼女」を観ているのだが、多分レビューは来年になりそう。
日比谷シャンテ・シネにて...
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by margot2005 | 2008-12-30 23:50 | ヨーロッパ | Trackback(13) | Comments(6)