カテゴリ:ヨーロッパ( 49 )

「裁かれるは善人のみ」

「Leviafan」2014 ロシア
a0051234_22112087.jpg

自動車修理工のコーリャは荒涼としたロシアの小さな港町に、若くて美しい妻リリアと一人息子のロマと共に貧しいながらも平和に暮らしている。ロマの母親は既に亡くなり、コーリャはリリアと再婚していた。しかしロマは若い継母に懐かず反撥ばかりで父親の頭を悩ませている。そんなある日、コーリャの友人で弁護士のディーマがモスクワからやって来る。町に開発計画が持ち上がり、ヴァディム市長はコーリャの土地を強引に買収しようと目論んでいたが、祖父の代から住んでいる土地を離れたくないコーリャはそれに反撥し裁判沙汰になっている。ディーマの努力にも関わらず、市とコーリャの間で行われた訴訟の結果はコーリャの敗北だった…

コーリャ(ニコライ)・セルゲーエフにアレクセイ・セレブリャコフ。
リリアに「エレナの惑い/2011」のエレナ・リャドワ。
ディーマ(ドミトリー)・セレズニョフに「360/2011」のヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ。
ヴァディム市長に「12人の怒れる男/2007」のロマン・マディアノフ。
コーリャの息子ロマにセルゲイ・ポホダーエフ。
リリアの友人アンジェラにアンナ・ウコロワ。
アンジェラの夫パーシャに「エレナの惑い」アレクセイ・ロズィン。
監督、脚本は「父、帰る/2003」「ヴェラの祈り/2007」「エレナの惑い」のアンドレイ・ズビャギンツェフ。

憎々しげな悪徳市長ヴァディムの法を犯した行動に唖然とする。
中盤前くらいにリリアとディーマが不倫の関係にあることが描かれる。リリアを愛してやまないコーリャはどうしようもないながらも二人の関係を許すことになる。
かつては親友だった弁護士のディーマは卑怯にも逃げ出してしまった。心から妻子を愛する“善人”のコーリャが気の毒でならない。
コーリャは町中で出会った神父に“神はどこにいるのか?”と聞く。次から次へと不幸に見舞われるコーリャにとって神の存在など信じられなかったに違いない。

リリアの死に市長はからんでいたのだろうか?と想像逞しくなるが、ドラマの中で結果は明かされない。
ラスト、ヴァディム市長たちが祈りを捧げるロシア正教会のシーンを見て、彼らにとっての宗教の重さをしみじみと感じる。

原タイトルは“リヴァイアサン/巨大なもの”。スクリーンにコーリャ一家が住む近くの浜辺に白骨化し波に洗われる“リヴァイアサン”が何度か現れる。それはドラマを象徴するかのように、悲しげに映る。寒々とした海辺の町の映像が美しい。
上映時間は2:20。でもドラマに引き込まれていたので長さは全く感じなかった。
邦題は意味深い。

昨年の12月に「ヴェラの祈り」と「エレナの惑い」が公開された時に見たかったが叶わなかった。機会があれば見てみたい。

新宿武蔵野館にて
[PR]
by margot2005 | 2015-11-13 00:22 | ヨーロッパ | Trackback(6) | Comments(0)

「フレンチアルプスで起きたこと」

「Force Majeure」…aka「Turist」「Snow Therapy」2014 スウェーデン/フランス/ノルウェー/デンマーク
a0051234_22312869.jpg
a0051234_2231795.jpg
a0051234_22305231.jpg
a0051234_22303969.jpg

有能なスウェーデン人ビジネスマン、トマス一家は、5日間のスキー・バカンスを過ごすためフランスの高級リゾート地にやってくる...

トマスにヨハネス・バー・クンケ。
妻エバにリーサ・ローヴェン・コングスリ。
娘クララにクララ・ヴェッテルグレン。
息子ハリーにヴィンセント・ヴェッテルグレン。
トマスの友人マッツに「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車/2014」のクリストファー・ヒヴュ。
マッツの恋人ファンニにファンニ・メテーリウス。
監督、脚本はリューベン・オストルンド。

人為的な雪崩や、家族がバスルームで歯磨きするシーンにヴィヴァルディの“四季”の夏バージョンが流れる。圧倒的なヴァイオリンの調べがそれらのシーンに効果音として素晴らしくマッチし、見ている者にインアパクトを与えるのだ。雪崩のシーンはともかくとして家族の歯磨きシーンにヴィヴァルディは笑える。
コメディ・ヒューマンドラマだけど少々ブラック入ってる感じで大笑いするほどのものではない。ハッピーにスキー・バカンスを過ごす家族に突如襲う不穏な空気…それを作ったのは他でもない一家の主であるトマス。

初日、ゲレンデのトマス一家はハッピーモードで記念撮影。そしてバカンス2日目…昼食をとるトマス一家はホテルの絶景テラス・レストランにいる。そこへいきなり爆発音が轟きレストラン客のまさに目の前の雪山で雪崩が起きる。人工的な雪崩のため皆そのダイナミックな光景にカメラのシャッターをきりまくっている。しかし雪崩は予想外に勢いを増しテラスに襲いかかってくる。身の危険を感じたエバは泣き叫ぶ子供たちを守ろうと必死になりトマスに助けを求めるが、彼はその場から一人で逃げ出してしまっていた。

トマスの取ったあり得ない行動が気になるエバはレストランで出会ったカップルに、ことの顛末を話して聞かせる。しかしトマスはワケのわからないいいわけを並べ立てるばかり。証拠写真もあるのに...エバは夫への不満が募る。そうこうするうち、トマスの友人マッツが若い恋人を連れてやって来る。夕食の後子供たちのいない席でワインを飲みながらエバは再び雪崩の話を始める。そしてやはりここでも釈然としないトマスの説明にエバの不満はエスカレート。マッツはトマスをかばおうと躍起になるが、逆にマッツの恋人ファンニまでが“あなたもきっと逃げ出すわね!”と宣う始末。

シアターで何度か予告を見て少々気になっていた一作。
フランスや全米で絶賛されTOMATOMETERは92%とスゴいけど、わたし的には絶賛ってほどのものではなかったかな。西洋人とは感性が違うのかもしれない。
Englishタイトルの“不可抗力/観光客”の他にフランスでの公開タイトル“スノー・セラピー”が面白い。マッツと二人で滑りに興じた雪山で感情を爆発させたり、子供や妻の前で泣きわめいたりとトマスの姿は実に凄まじかった。トマスってひょっとして情緒不安定男だったのかな?

ラスト、バスのシーンでも毅然とした態度を取ったのはエバとマッツ…トマスって男は実に情けない。バカンスが終わったあの家族、その後はどうなったのだろう?
映画公開二週めの水曜割引デーのシアターは満席だった。
ヒューマントラストシネマ有楽町にて
[PR]
by margot2005 | 2015-07-18 23:30 | ヨーロッパ | Trackback | Comments(0)

「悪党に粛清を」

「The Salvation」2014 デンマーク/UK/南アフリカ/スウェーデン/ベルギー
a0051234_23582438.jpg
a0051234_23581460.jpg

1870年代のアメリカ西部。元兵士のジョンは兄ピーターと共にデンマークから新天地を求めこの地にやって来た。以来7年が経過し事業も軌道にのったある日、祖国から呼び寄せた妻と息子が到着する。やがて再会に喜ぶ3人が駅馬車で家路に向かおうとしていた折、刑務所帰りのならず者ポールが乗りこんできて外国から来たばかりのジョンの妻を愚弄し、家族を銃で脅したあげくジョンを馬車から突き落としてしまう…

ジョンに「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮/2012」のマッツ・ミケルセン。
マデリンに「007/カジノ・ロワイヤル/2006」のエヴァ・グリーン。
デラルー大佐に「P.S.アイラヴユー/2007」のジェフリー・ディーン・モーガン。
ピーターに「未来を生きる君たちへ/2010」「エージェント・ハミルトン ~祖国を愛した男~/2012」「ヒプノティスト-催眠-/2012」「エージェント・ハミルトン ~ベイルート救出大作戦~/2012」「ホビット 竜に奪われた王国/2013」のミカエル・パーシュブラント。
コルシカ人に「エリザベス/1998」「マルセイユの決着/2007」「エリックを探して/2009」「スウィッチ/2011」のエリック・カントナ。
知事キーンに「ニュー・ワールド/2005」「かけひきは、恋のはじまり/2008」のジョナサン・プライス。
保安官マリックに「リプリー 暴かれた贋作/2005」のダグラス・ヘンシュオール。
ポールにマイケル・レイモンド・ジェームズ。
監督、脚本はクリスチャン・レヴリング。

デラルー大佐は多数の子分を抱え町を牛耳っている。知事や保安官はデラルーの言いなりで住民は日々不満を募らせていた。人の命は駅馬車以下...という不条理の世界。
そんな折、デラルーの弟でマデリンの夫でもあるポールが死体となって発見される。殺害したのはジョンで、それは妻子を殺された彼の復讐劇だった。
“目には目を歯には歯を”“やるか、やかれるか”…ピーターは途中でやられてしまって残念だったけど、ジョンのデラルー一味をやっつける復讐劇が最高に盛り上がって面白い!
ドラマのテーマは“男の美学”とでもいうのか?シアターはおじさんで超満員だった。
極めつけのラスト...マデリンを伴って去って行くジョンのクールな姿に惚れ惚れする。

マッツ・ミケルセン&ミカエル・パーシュブラントの出演にスゴく楽しみにしていた一作。
デンマーク版ウエスタンってどんなの?と想像を膨らませていたが映画は最高!
1960年代〜70年代にイタリア製西部劇マカロニ・ウエスタン(Spaghetti Western)なるものがあった。それらの名作の中にあのクリント・イーストウッドが出演している。ジュリアーノ・ジェンマとかフランコ・ネロの作品をTVで何作か見た記憶がある。ちょっと調べてみたら、大半のものはユーゴスラビア(当時)とかスペインで撮影されていたそう...知らなかった。
本作のロケ地は南アフリカ。ラスト、真っ黒なオイル湧くシーンはアメリカの大地そのものに見える。

何はともあれマッツとミカエルが最高にクールなのだ。全くクールじゃないのがエリック・カントナ…なぜか?彼に西部劇は似合わない。もうホント浮いていて可笑しかった。
デラルー大佐役のジェフリー・ディーン・モーガンが凄みを帯びたワルそのもので「P.S.アイラヴユー」のキャラが飛んでしまった。
エヴァ・グリーンは一言も喋らないけど存在感あり。
オフィシャルHPでも見れるけど新宿武蔵野館ロビーの奥に置いてあるTVでマッツの英語のインタビューが見られる。
a0051234_2358434.jpg

新宿武蔵野館にて
[PR]
by margot2005 | 2015-07-05 23:59 | ヨーロッパ | Trackback(6) | Comments(0)

「ハイネケン誘拐の代償」

「Kidnapping Mr. Heineken」2015 オランダ/UK/ベルギー
a0051234_22103988.jpg

“1983年に実際に起きた大富豪ハイネケン誘拐事件の顛末を映画化した実録犯罪サスペンス。”

コルに「鑑定士と顔のない依頼人/2013」のジム・スタージェス。
ヴィレムに「アバター/2009」「タイタンの戦い/2010」「恋と愛の測り方/2011」「崖っぷちの男/2011」のサム・ワーシントン。
カットにライアン・クワンテン。
スパイクスにマーク・ファン・エーウェン。
コルの妻ソーニャにジェマイマ・ウエスト。
フレディ・ハイネケンに「プルーフ・オブ・マイ・ライフ/2005」「最終目的地/2009」「恋のロンドン狂騒曲/2010」「ヒッチコック/2012」「ノア 約束の舟/2014」のアンソニー・ホプキンス。
監督は「ミレニアム2 火と戯れる女/2009」「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士/2009」のダニエル・アルフレッドソン。

オランダ、アムステルダム。コルは幼なじみの友人たちと経営する事業に行き詰まり、融資を受けに銀行へ行くが断られてしまう。とにかく金が必要だったコルはヴィレムたちを誘い、綿密な計画の末フレディ・ハイネケン誘拐に成功する。そして警察のポストにハイネケン誘拐告知の手紙を投函する。大富豪である人質の家族はすぐにでも身代金を支払うと信じていたが何も変化は起きない。おまけにハイネケンは拉致にも怯まず平然とし、好みの本や食べ物を差し入れろと要求してくる。

シアターで予告を見て面白そうと思った。アンソニー・ホプキンスVSジム・スタージェス&サム・ワーシントンにもとても惹かれた。
映画の宣伝にアンソニー・ホプキンス主演…なんて書いてある記事があったり、大きくアンソニー・ホプキンスの顔写真を掲げている新聞等もあるが、本作アンソニー・ホプキンス主演ではない。しかしながらナイトの称号を持つ“ハンニバル/レクター”ホプキンスの貫禄は揺るぎないもので、少ない出番ながらものすごい存在感を感じる。ジム・スタージェスとサム・ワーシントンも頑張ってるのに…。

今だ謎が残るという“大富豪ハイネケン誘拐事件”。自身の誘拐を教訓に、その後セキュリティを強化したというハイネケンは転んでもただでは起きそうにない人物。一攫千金を狙って身代金要求の誘拐はしたものの、犯人たちは大物を狙い過ぎてしまったように思える。
ドラマは実話なので犯人は必ず捕まるという結末もわかっている。誘拐をテーマにしたドラマってどれもスリリングかと思えるが、本作はそれほどでもなく、幼なじみの誘拐犯たちのうろたえぶりの方がスリリングかも知れない。
邦題についている“代償”...コルやヴィレムたちにとって誘拐事件の“代償”は余りにも大きかったということがちょっと哀しい。

丸の内TOEIにて
[PR]
by margot2005 | 2015-06-21 22:34 | ヨーロッパ | Trackback(6) | Comments(2)

「真夜中のゆりかご」

「En chance til」…aka「A Second Chance」2014 デンマーク
a0051234_2241117.jpg
a0051234_22405124.jpg
a0051234_22403614.jpg

刑事のアンドレアスは美しい妻アナと生まれたばかりの息子アレキサンダーとともに平和な日々を過ごしていた。そんなある日、本部より通報を受け相棒のシモンと駆けつけたアパートでドラッグ中毒のカップル、トリスタンとサネに育児放棄され、トイレの床に汚物まみれで放置されている乳児を見つけ呆然とする...

アンドレアスに「ブラウン夫人のひめごと/2002」「ヘッドハンター/2011」「おやすみなさいを言いたくて/2013」のニコライ・コスター・ワルドー。
シモンに「ある愛の風景/2004」「未来を生きる君たちへ/2010」のウルリク・トムセン。
アナに「ヴェラの祈り/2007」のマリア・ボネヴィー。
トリスタンに「しあわせな孤独/2002」「ある愛の風景」「天使と悪魔/2009」のニコライ・リー・コス。
サネにリッケ・マイ・アナスン。
原案、監督に「愛さえあれば/2012」のスザンネ・ビア。

幼い息子が息をしなくなり狂乱する妻。落ち着かせようとする夫に、自殺するとほのめかす妻。焦った夫は育児放棄にさらされる乳児と自分の子供を交換するが、母親にとってその子供が代わりになるはずもない。
こういった時男ってどうして良いかわからなくなるのだろう。で、妻の暗示に動揺し咄嗟に思いついたことを実行に移す。やがてそれが悲劇につながって行くのだ。
見ていてアンドレアスが刑事とは思えない衝動的な行動を取るので少々困ったが、希望が見えるラストにつながりほっとした。
原タイトル「セカンド・チャンス」はドラマにぴったり。

北欧舞台の映画は景色が美しい。そしてアンドレアスとアナが住む湖畔の家はため息がでるほど素敵で、家具調度品など全てが美しい。
ニコライ主演映画を初めて観た。「おやすみなさいを言いたくて」も、wowwoで見たホラーの「MAMA/2013」でも父親役。「エニグマ/2001」「ウィンブルドン/2004」で気になる俳優だったニコライ・コスター・ワルドーも40代半ばとなり、この方優しい父親役がとても似合う。「ブラウン夫人のひめごと」は2006年にDVDで見ている。本作は「ヘッドハンター」以来の北欧が舞台となった作品。

トリスタン役のニコライ・リー・コスは実にワルが似合う俳優だ。アル中刑事を演じるウルリク・トムセンは欠かせない脇役といったところ。何はともあれ主演のニコライ・コスター・ワルドーの苦悩する姿が目に焼き付くが、ラストの笑顔とても素敵だった。
スザンネ・ビアの前作「愛さえあれば」はつまらなかったけど本作は又本領発揮!といった趣。スザンネ・ビアが作り出す世界は哀しみと辛さが不可欠なのかも知れない。

TOHOシネマズ・シャンテにて
[PR]
by margot2005 | 2015-05-29 22:49 | ヨーロッパ | Trackback(3) | Comments(2)

「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」

「Kraftidioten」…aka「In Order of Disappearance」2014 ノルウェー/スウェーデン
a0051234_20404897.jpg

a0051234_20402932.jpg
a0051234_20401888.jpg
a0051234_2041766.jpg
a0051234_20415922.jpg

雪に覆われたノルウェーの田舎町。ある日、除雪車の運転手であるニルスは息子が亡くなったことを知らされる。死因はコカインの過剰摂取だった。“息子がコカイン中毒とは考えられない!”と警察に調査を依頼するが刑事は聞く耳を持たない。おまけに妻は息子の死に耐えられなくて家を出てしまう。やがてニルスは復讐を誓い銃を手に立ち上がる...

製作総指揮、出演(ニルス)に「宮廷画家ゴヤは見た/2006」「天使と悪魔/2009」「ドラゴン・タトゥーの女/2011」「メランコリア/2011」「レイルウェイ 運命の旅路/2013」「シンデレラ/2015」のステラン・スカルスガルド。
パパに「愛を読むひと/2008」「バーダー・マインホフ 理想の果てに/2008」「アンノウン/2011」「悪の法則/2013」「リスボンに誘われて/2013」のブルーノ・ガンツ。
ギャングのボス、伯爵に「コン・ティキ/2012」のポール・スヴェーレ・ハーゲン。
ウイングマン(ニルスの兄)に「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女/2009」「ミレニアム2 火と戯れる女/2009」「エージェント・ハミルトン ~祖国を愛した男~/2012」のペーター・アンデション。
伯爵の部下ゲイルにアンドレス・バースモ・クリスティアンセン。
伯爵の別れた妻マリットにビアギッテ・ヨート・スレンセン。
監督、製作総指揮にハンス・ペテル・モランド。

オスロで大学に通っているはずの息子が死体となって戻って来る。息子の死因となるコカイン、コネクションを探し当てたニルスは次々とギャングを殺害し、とうとうトップにたどり着くが、彼は地元の大物ギャングだった。困ったニルスは数年ぶりに兄ウイングマンを訪ね助けを求める。ウイングマンは元ギャングで、ニルスが復讐を誓う地元大物ギャングの伯爵を知っており、彼を殺すにはヒットマンを雇うようニルスを諭す。
一方で地元ギャングと対立するセルビア系ギャングのボスであるパパは息子を殺され怒り狂っていた。

ロケされたノルウェーのベイトストーレンという山に囲まれた田舎町が雪だらけ。とにかく周りは雪!雪!雪!主人公が除雪車の運転手というのも最高に頷ける。
人を殺すことしか能がない菜食主義者の“伯爵”に、それぞれの息子を殺されたニルスとセルビア系ギャングのボス..復讐を果たすステラン・スカルスガルド&ブルーノ・ガンツが最高!

ノルウェーの田舎町ならではの除雪車を使ったアクションは大迫力!真っ白な雪と真っ赤な血の対比がサスペンスを盛り上げる。
実直な田舎の運転手が、ある日突然殺戮マシーンに変身しギャングと戦う姿は痛快そのもの。
人参ジュースと息子が大好きなギャングの伯爵...実像は気の小さい情けない男というのが笑えるし、セルビア系ギャング、パパの部下が雪深いノルウェーにうんざりして文句たらたらだったり、彼らの会話はほぼコメディ。なにはともあれ登場人物全員が真面目な顔してるんだけど可笑しくてもう完璧。

wowowにて
[PR]
by margot2005 | 2015-05-20 00:27 | ヨーロッパ | Trackback | Comments(0)

「イマジン」

「Imagine」2012 ポーランド/ポルトガル/フランス/UK
a0051234_2134118.jpg

リスボンの港町にある視覚障害者のための診療所に、ある日一人の男が教師としてやって来る。イアンと名のる彼は全盲にも関わらず杖を使わないで健常者のように歩くことができる。それは音の反響を受け止めることによって周囲の状況を知る“反響定位”というもの。イアンは子供たちに“反響定位”を教えるインストラクターとしてやって来たのだ。しかし危険も伴うこの方法に診療所のドクターは懸念を募らせて行く…

イアンに「もうひとりのシェイクスピア/2011」のエドワード・ホッグ。
エヴァに「愛を読むひと/2008」「セントアンナの奇跡/2008」「バーダー・マインホフ 理想の果てに/2008」「フェアウェル/哀しみのスパイ/2009」「最終目的地/2009」のアレクサンドラ・マリア・ララ。
セラーノに「プリンセス・アンド・ウォリアー/2000」「パリ、ジュテーム/2006」のメルキオール・ドルエ。
ドクターにフランシス・フラパ。
監督、脚本、製作はアンジェイ・ヤキモフスキ。

授業を受けるのは様々な人種の子供たちや10代の若者たち。イアンの型破りな授業に戸惑いながらも夢中になっていく生徒たち。一方で外国からやって来た女性エヴァは、杖をついて歩くことが嫌で自室にこもりきり。しかしイアンに興味を抱いた彼女は自室から出るようになり授業にも参加し始める。やがてエヴァはイアンのように杖なしで歩いてみたいと思い始める。診療所からイアンと共に外に出たエヴァは、路面電車やバイクが行き交う音、そして人々の足音、木々のざわめきに聞き耳をたてながら街の空気を満喫する。
そばに寄り添うイアンは目が不自由なのにまるで見えるかのように“近くには港があり大型客船が出入りしているはず。”とエヴァに語る。
イアンとエヴァのほのかな恋は成就するのだろうか?スクリーンいっぱいに映る大型客船と路面電車のラストがとても美しく晴れ晴れしい。

リスボンの街で撮影された本作は目の不自由な人に勇気を与える素晴らしいドラマで、イアンがセラーノに海を見せる(感じさせる)シーンは感動を覚える。

イアン役のエドワード・ホッグは見えないようにして特訓を重ねたそうだが、スクリーンの中でホントに目の不自由な人のように見えて驚きつつ感心した。
監督はポーランド人で、主演のエドワード・ホッグは英国人。アレクサンドラ・マリア・ララはルーマニア出身のドイツ人で、子供たちの中にフランス人や、英国人も混ざるとってもInternationalな映画のロケ地はポルトガルのリスボン。

シアター・イメージフォーラムにて
[PR]
by margot2005 | 2015-05-15 00:23 | ヨーロッパ | Trackback | Comments(0)

「パプーシャの黒い瞳」

「Papusza」2013 ポーランド
a0051234_2041841.jpg

a0051234_20475766.jpg
a0051234_2041061.jpg
a0051234_20405171.jpg
a0051234_20404412.jpg

実在のロマの女性詩人パプーシャの生涯を描いた荘厳なる伝記ドラマ。

パプーシャにヨヴィタ・ブドニク。
ディオニズィにズビグニェフ・ヴァレリシ。
イェジ・フィツォフスキに「カティンの森/2007」のアントニ・パヴリツキ。
監督、脚本はヨアンナ・コス・クラウゼ&クシシュトフ・クラウゼ。

雪が積もる道を馬車で移動し、老若男女が集まりたき火を囲む...パプーシャが生まれた1910年〜夫のディオニズィが亡くなる1970年代までを全編モノクロで描いたドラマは少々とっつきにくい。
オープニングはパプーシャの誕生。そして突然60年後に舞台は移り、大臣命令でパプーシャが刑務所から出され音楽会へ連れて行かれるシーンとなる。音楽会で歌われた歌詞はパプーシャが書いた詩。その後、少女時代のパプーシャ、結婚後のパプーシャとめまぐるしくシーンは交錯する。少々頻繁なので映画の半ばくらいまで戸惑いつつ、しかもゆったりと進む白黒ドラマに睡魔に誘われそうだったが、イェジがパプーシャの詩を新聞に掲載した後、迫害に合うパプーシャが気の毒でドラマに惹き付けられて行った。

パプーシャは15歳の時、父親の兄である伯父ディオニズィと強引に結婚させられる。年月が経過したある日、ディオニズィは秘密警察から逃げている作家で詩人のイェジを匿う。それは周りの反対を押し切っての決断だった。放浪民族ロマは文字を持たないが、パプーシャは少女の頃から文字に興味を持ち読み書き習得していた。文字が読めるパプーシャに驚きつつ、彼女の詩の才能を知ったイェジは、詩を書いて送って欲しいと万年筆をプレゼントし別れを告げる。
ずっと迷っていたパプーシャながら、ある日、ワルシャワに住むイェジに詩を書いた手紙を送る。やがて彼はロマ語で書かれた詩をポーランド語に翻訳し出版しようと考え、大物詩人ユリアン・トゥヴィムを訪ねる。そしてとうとうパプーシャの詩が新聞に掲載される。しかしイェジがパプーシャの詩と共にロマに関する論文を本にしたことから、ディオニズィとパプーシャ夫婦は裏切り者扱いされ追放される。白人社会から差別を受けるロマの人間が、白人社会に関心を持たれたパプーシャに憎しみや恨みを投げつけたのだ。

パプーシャとイェジの出会いと別れが悲しい。大きく二人は二度別れを経験している。最初の別れでパプーシャはイェジに惹かれていることを切に感じている。しかし二度目の別れの時イェジの援助を受けていれば…と思わずにはいれない。

ジプシーと呼ばれてきたロマは一般にヨーロッパで生活している。記憶をたどると…「そして友よ、静かに死ね/2011」でジェラール・ランヴァン演じる元ギャングのモモンはフランスのロマ。「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム/2011」でもノオミ・ラパスがやはりフランスのロマのマダムを演じている。

岩波ホールにて
[PR]
by margot2005 | 2015-04-29 23:41 | ヨーロッパ | Trackback(1) | Comments(0)

「みんなのアムステルダム国立美術館へ」

「 Het Nieuwe Rijksmuseum - De Film」…aak「The New Rijksmuseum」2014 オランダ
a0051234_22142229.jpg
a0051234_2214958.jpg
a0051234_22135952.jpg
a0051234_22134814.jpg
a0051234_22133959.jpg
a0051234_22133110.jpg
a0051234_22131950.jpg
a0051234_22131026.jpg
a0051234_2213192.jpg
a0051234_22125428.jpg

監督は「ようこそ、アムステルダム美術館へ/2008」のウケ・ホーヘンダイク。

主要登場人物
新館長ヴィム・パイベス
学芸員タコ・ディベッツ
アジア館部長メンノ・フィツキ
建築家クルス&オルティス
内装家ウィルモット社、ウイルモット&マルレーン

「ようこそ、アムステルダム美術館へ」で描かれた“美術館vs市民/館長vs建築家/官僚vs美術館”の対立。
果たしてオープンの日は来るのか??という話だったが、やはりで、オープンは大幅に遅れ、2008年予定が2013年4月となった。
前作で描かれた、上に書いた対立は不謹慎ながら実に面白かった。
でも本作も中々面白い。

館長になりたかった学芸員タコ・ディベッツは残念なことに新館長には選ばれず学芸員のまま。しかしその中でもトップクラスで、アムステルダム国立美術館に展示する美術品を選べる立場にある。担当者をサザビーズに送り芸術品を競り落とすよう指示を出す。国の予算で運営される国立美術館ゆえ、多額の金銭を競りに使う事は叶わない。タコ・ディベッツお気に入りの芸術品は高額過ぎて競り落とせなかったのはとてもお気の毒だった。
前作に登場したもう一人の人物であるアジア館部長メンノ・フィツキの“金剛力士像”への愛着の深さには感動するばかり。
そして美術館の内装についての喧喧諤諤のシーンも忘れてはならない。しかし新館長が黒く(ダークグレー)塗った壁が気に入らなくてあわてて白く塗り替えたりするのだ。美術館に設置する陳列だなの視察にパリのルーヴルを訪れるシーンもあった。
そういえば、全面改装したパリのオルセーも壁はダークグレーに塗り替えられていた。ダークグレーは絵画の金縁の額にマッチするのだろうきっと。
大事な時に居眠りする内装家ウィルモット氏の存在も実に面白い。
そして前作同様修復シーンも見せてくれる。

前館長ロナルド・デ・レーヴもカッコ良かったけど、新館長ヴィム・パイベスもカッコ良いのだ。“忍耐の限界だ!”と発言し辞任したロナルド・デ・レーヴは今頃ウイーンにいるはず。前作で今後はウイーンに住むと宣言していたから。
ラスト、ベアトリクス女王とオープニングに臨むヴィム・パイベスの爽やかな笑顔が素晴らしかった。アムステルダム国立美術館にはますます行ってみたくなる。

渋谷ユーロスペースにて
[PR]
by margot2005 | 2015-01-19 00:36 | ヨーロッパ | Trackback(2) | Comments(2)

「おやすみなさいを言いたくて」

「Tusen ganger god ant」…aka「A Thousand Times Good Night」2013 ノルウェー/アイルランド/スウェーデン
a0051234_18384142.jpg
a0051234_18385839.jpg
a0051234_18385160.jpg

a0051234_23352893.jpg

報道写真家のレベッカは家族をアイルランドに残しアフガニスタンの首都カブールにいる。そしてその地で自爆テロに巻き込まれ命を落としそうになるが辛くも助かり病院へ収容される。やがて入院先へ夫のマーカスが迎えにくる。アイルランドへ戻った彼女は母親の死に怯えながら暮す娘たちと向き合うとこになる...

レベッカに「トスカーナの贋作/2010」のジュリエット・ビノシュ。
夫マーカスに「ブラウン夫人のひめごと/2002」「ヘッドハンター/2011」のニコライ・コスター・ワルドー。
長女ステフにローリン・キャニー。
次女リサにアドリアンナ・クラマー・カーティス。
レベッカの友人テレサに「THE TUDORS 〜背徳の王冠〜/2007〜2010」「ビザンチウム/2012」のマリア・ドイル・ケネディ。
監督はエリック・ポッペ。

世界各国で起こる悲惨な事実を映像にしメディアに発表することがレベッカの使命。マーカスはそんな彼女の仕事を理解し家事と子育てを全面的に協力している。しかし家に帰ったレベッカはマーカスから“娘たちはいつも母親の死に怯えながら暮らしている!”と告げられる。ステフからも“そんなに写真が大事なの!”と詰め寄られ動揺を隠せない。やがて彼女は家族にもう戦場には戻らないと宣言する。穏やかで平和な日々が続くある日、レベッカはケニアへの取材を持ちかけられ、アフリカに興味を持つステフと共にその地へと旅立つ。ところが、安全な地域と信じていたケニアで突然暴動が起こる。結果レベッカは自らの使命に邁進し、危険を顧みないで写真を撮り続ける。帰国する前、二人はケニアが危険であった事をマーカスに内緒にするよう約束する。しかしレベッカは自分に心を開こうとしないステフに疑問を抱き始める。案の定娘はケニアでの出来事にわだかまりを抱き続けていたのだ。やがてケニアで起こった事がマーカスの知ることとなり、怒り狂ったマーカスはレベッカを家から追い出してしまう。
ラストはあまりにも醜く悲惨で…見るのが辛かった。

製作国のトップがノルウェーなのは監督の出身地。映画の舞台はアイルランド。写真家のレベッカが撮影に行くスポットとしてアフガニスタン、モロッコ、ケニアで撮影されている。
この映画を観たかったのはひたすらニコライ・コスター・ワルドーの出演に惹かれたから。彼はデンマーク出身のお気に入り俳優。そいうや昨年wowowで見たトム・クルーズの「オブリビオン/2013」にも出演していたのを思い出す。キャメロン・ディアスと共演の「The Other Woman/2014」が是非見たい!
主演のジュリエット・ビノシュは好きでもキライでもない女優ながら色んな映画に出演しているのでビノシュ映画は良く観ている。一番最新に見た作品はwowowで放送されていた「カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇/2013」。カミーユ・クローデルと言えばイザベル・アジャーニの「カミーユ・クローデル/1988」ながら、ビノシュ版は精神を病んだカミーユ・クローデルが病院に収容されている間を描いた作品で中々興味深かった。

本作に戻って…ニコライ・コスター・ワルドーが“family man”な役を演じたのは初めて見た。彼自身2人の娘の父親ということもあり役柄にぴったり。ニコラスますますお気に入り俳優となった。

角川シネマ有楽町にて
[PR]
by margot2005 | 2015-01-08 20:02 | ヨーロッパ | Trackback(2) | Comments(0)