「ほっ」と。キャンペーン

カテゴリ:中・南米( 16 )

「エル・クラン」

「El Clan」…aka「The Clan」2015 アルゼンチン/スペイン
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1980年代のアルゼンチン。70年代から80年代に起こった軍事独裁政権も終わり、国は徐々に民主政治を取り戻していた。裕福で、近隣からも信頼厚いプッチオ家は主のアルキメデス、そして妻と三人の息子と二人の娘が共に幸せな生活を送っていた。しかし1982年にマルビーナス戦争(フォークランド紛争)が起こり政府がこけてしまい、あおりを受け政府の情報管理官として働いていたアルキメデスは失職してしまう。そんなある日、長男アレハンドロのラグビーチームの友人誘拐事件が起こる...

アルキメデス・プッチオに「ルドandクルシ/2008」「瞳の奥の秘密/2009」のギレルモ・フランセーヤ。
妻エピファニにリリー・ポポヴィッチ。
長男アレハンドロにピーター・ランサーニ。
次男マギラにガストン・コッチャラーレ。
三男ギレルモにフランコ・マシニ。
長女シルビアにジゼル・モッタ。
次女アドリアナにアントニア・ベンゴエチェア。
アレハンドロの恋人モニカにステファニア・コエッスル。
監督、脚本、製作は「セブン・デイズ・イン・ハバナ/2012」のパブロ・トラペロ。

アレハンドロのラグビーチームの友人の誘拐犯は父親のアルキメデスだった。彼は家に監禁部屋を作り、人質に家族へ身代金支払いの手紙を書くよう支持する。まんまと身代金をせしめたアルキメデスは息子のアレハンドロにも分け前を与えるのだった。
その後もアルキメデスは金持ちの家族誘拐に成功し、決してバレることはなかった。ある日、父親から貰った金でサーフショップを立ち上げたアレハンドロは来店した客モニカに一目惚れ。やがて二人は結婚を約束し、アレハンドロは父親に報告するが、アルキメデスは怒りと共に結婚に大反対する。普通の生活がしたいと願うアレハンドロも父親にがんじがらめで従うしか方法がなかった。

アルゼンチン人って家族の結びつきが強いとどこかで聞いたことがある。ドラマに登場する家族も互いに愛情深いことが窺える。おまけに一家の主である父親は絶対的存在で、逆らうことなどできない。長男と次男は父親の言いなりだったが、何れ悪事がバレると感じ家を飛び出した三男は賢い!と思った。一つ屋根の下に一緒に住んでいながら何も知らなかった女性たちが、おばかと言うか哀れ。

何度かシアターで予告篇は見たが、いつのも様に全く前知識なしで鑑賞。時折アルゼンチンの社会模様が実写で映し出されるので、始めは政治的な犯罪なのか?と思っていたらなんのことはない単なる身代金目当ての誘拐だった。
何はともあれ家族を振り回す一家の主が猛烈!父親の言いなりにならざるを得ない長男が気の毒だったけど、家族から去って行った三男のように行動を起こさなかったのが疑問?金が欲しかったのか?母親や妹たちが気がかりだったのか?定かではない。

実話をベースにした犯罪ドラマは本当に実際に起こったこと?と疑うくらいとんでもない悪行。
家では優しい夫であり父親でもあるアルキメデス・プッチオが、良心の呵責など全く感じずに淡々と強盗誘拐に興じる様がブラック・コメディの雰囲気で可笑しかった。演じるギレルモ・フランセーヤはナイス・キャスティング。
公開二週目のサービスデイに鑑賞した折、シアターは満席だった。

新宿シネマカリテにて
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by margot2005 | 2016-10-02 20:54 | 中・南米 | Trackback | Comments(0)

「火の山のマリア」

「Ixcanul」2015 グアテマラ/フランス
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マリアにマリア・メルセデス・コロイ。
母親ファナにマリア・テロン。
父親マヌエルにマヌエル・アントゥン。
マリアの許婚イグナシオにフスト・ロレンソ。
ペペにマルビン・コロイ。
監督、脚本はハイロ・ブスタマンテ。

17歳のマリアは厳しい自然に囲まれた火山の麓で両親と共に暮らしている。農業を営む両親の土地は借地で地主はコーヒー農園の主任イグナシオ。生活が苦しい両親はマリアをイグナシオに嫁がせようと考えている。中年で子持ちのイグナシオとの結婚はマリアにとって喜ばしいことではない。マリアは誰にも内緒でコーヒー農園で働く青年ペペに想いを寄せていた。貧困から逃れアメリカに移住したいと望むペペ。マリアは一緒に連れて行って欲しいと懇願する...

始めは、望まれない妊娠をした娘を故意に流産させようと目論む母親ファナ…しかし後に“この子は生きる運命にある!”と感じたファナは未婚で妊婦となったマリアを心から受け入れる。ありったけの力で娘をサポートする両親の愛の深さにほっとする。

何はともあれ、マリアも彼女の両親もスペイン語が話せなかったためイグナシオの嘘を見抜くことができなかった。ペペに裏切られ、イグナシオに振り回されたマリアがとても気の毒でならない。

グアテマラは中南米であることはわかっていたが正確な位置はどこか?と考えていたらシアターに地図がありメキシコの南と確認した。
世界は広い!グアテマラでこのような原始的な暮らしをする人が存在するとは知らなかったが、彼らはマヤ系先住民。オープニングとエンディングに伝統的な衣装で盛装するマリアのシーンが映る。どちらのシーンにもマリアに笑顔がないのが実に哀しい。
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岩波ホールにて(3/25迄上映)
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by margot2005 | 2016-03-20 00:25 | 中・南米 | Trackback | Comments(0)

「 人生スイッチ」

「Relatos salvajes」…aka「Wild Tales」2014 アルゼンチン/スペイン
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音楽評論家サルガードに「トーク・トゥ・ハー/2002」のダリオ・グランディネッティ。
ウェイトレスにフリエタ・シルベルベルグ。
料理人にリタ・コルテセ。
新車に乗る男ディエゴに「サルバドールの朝/2006」のレオナルド・スバラーリャ。
ビル爆破解体職人シモンに「瞳の奥の秘密/2009」のリカルド・ダリン。
金持ちの父モーリシオにオスカル・マルティネス。
花嫁ロミーナにエリカ・リバス。
監督、脚本はダミアン・ジフロン。

“本国アルゼンチンで大ヒットし、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた…”らしい。ブラック・コメディは好きなジャンルながら、感性が異なるから日本で大ヒットはないかと思える。身体中で怒りを爆発させるアルゼンチン人の感性にはスゴいものがある。それもこれもやはりラテン民族のなせる技?

6編のオムニバスによるドラマ。どれもこれも強烈だったが、私的に面白かったのは“ヒーローになるために”と“HAPPY WEDDING”かな?
“ヒーローになるために”でシモンを演じたリカルド・ダリンがどこかで見たと思っていたら「瞳の奥の秘密」の主人公役だった。彼は温和な役柄も激しいキャラも似合うアルゼンチン俳優。

どれもこれも我慢出来なくてプチッとキレる人が主人公。
ビル爆破解体のプロ、シモンは娘のバースディ・ケーキを買うため駐車違反してレッカー車で移動されてしまう。陸運局の窓口で、駐車したのは違法ではない場所だと主張するが全く相手にされない。その後も負の連鎖が続き、とことんキレたシモンはレッカー移動された車と事務所をとんでもないことに…。

“HAPPY WEDDING”の花嫁のキレかたも半端じゃない。それというのも花婿がかつて関係のあった女性を招待したのだ。とことんキレまくる花嫁。双方の親まで参加して、華やかなセレモニーが血にまみれた修羅場と化していく…。

“エンスト”は少々やり過ぎの上ダーティ。
“おもてなし”と“おかえし”は意外とつまらなくて、“愚息”はタイトルが全くふさわしくなくて酷い。“強欲”なんて良いかと思える。
まさに負の連鎖で恐ろしい事態にさらされる人々が滑稽である。
TOMATOMETERの96%は驚異的。

ヒューマントラストシネマ有楽町にて
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by margot2005 | 2015-08-12 20:41 | 中・南米 | Trackback(10) | Comments(0)

「約束の地」

「Jauja」…aka「Land of Plenty」2014 アルゼンチン/デンマーク/フランス/メキシコ/USA/ドイツ/ブラジル/オランダ
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製作、音楽、出演(ディネセン大尉)に「アラトリステ/2006」「ザ・ロード/2009」「危険なメソッド/2011」「偽りの人生/2012」「オン・ザ・ロード/2012」「ギリシャに消えた嘘/2014」のヴィゴ・モーテンセン。
インゲボルグにヴィールビョーク・マリン・アガー。
洞窟の女に「ホルテンさんのはじめての冒険/2007」のギタ・ナービュ。
監督はリサンドロ・アロンソ。

19世紀末のパタゴニア。デンマーク人エンジニア、ディネセン大尉は一人娘インゲボルグを伴いアルゼンチン政府軍による先住民一掃計画に参加している。インゲボルグと二人海辺の野営地のテントで眠る父親は、ある夜隣のベッドに娘がいないことに気づく。テントから飛び出したディネセンは部下の助けも断り一人荒野に飛び出し馬を走らせるが、広い荒野には誰の姿も見えない。やがてディネセンは血を流し息絶え絶えの男を発見する。彼は兵士でインゲボルグに誘われ駆け落ちしたのだ。しかしインゲボルグの行方はわからない。そうこうするうちディネセンは自分の馬がいなくなったことに気づく。その後徒歩で荒野を彷徨う彼の前に痩せた犬が現れ、犬に導かれるように洞窟にたどり着くのだった…

オープニング、父親が娘に深い愛を伝えるシーンがある。
娘を探しに荒野を彷徨った男が未知なる摩訶不思議な世界へ足を踏み入れて行く。パタゴニアの荒野の洞窟にいる女がデンマーク語で話していたのがまたまた不思議で…ラスト、瀟洒な屋敷にいる美しいインゲボルグが痩せた犬を連れているシーンも恐ろしく不思議だし…でもあれが現実で、荒野にいるインゲボルグが幻想だった?
邦題の「約束の地」が意味深いのかも知れない。

年を重ねるごとに品格が伴ってきたヴィゴ・モーテンセンは素敵な俳優。馬に乗る姿は相変わらず颯爽としていてクールだ。
ヴィゴを初めて見たのはハリソン・フォード主演の「刑事ジョン・ブック/目撃者/1985」。その後何作か見たが、中でも印象に残ったのは「ダイヤルM/1998」でのグウィネス・パルトローの恋人役。その後「ロード・オブ・ザ・リング/2001~2003」でメジャーになり、「ヒストリー・オブ・バイオレンス/2005」「イースタン・プロミス/2007」と続き、個性的なオーラを放つヴィゴ・モーテンセンのファンになった。
残念ながら「善き人/2008」はシアターに行けなくて今だ見ていない。先月公開されていた「涙するまで、生きる/2014」は原作がアルベール・カミュということで見送った。
そして本作…ファンが多いヴィゴ映画ながらウイーク・ディの夕方、シアターはガラガラ。なぜに?と思いつつ観ていたが久方ぶりに途中で挫折しそうな映画だった。本作何がなんだか?と終盤近くまでわからずじまいで、エンディングが始まりなんと幻想的な映画だったんだろうと一息ついた。

幻想的かつ独創的なドラマのスクリーンは丸みを帯びた四角。
フランス映画「我が至上の愛 ~アストレとセラドン~/2007」も丸みを帯びた四角だったのを思い出す。本作同様やはり幻想的な作品だった。

ユーロスペースにて
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by margot2005 | 2015-06-28 22:36 | 中・南米 | Trackback | Comments(0)

「マルタのことづけ」

「Los insólitos peces gato」…aka「The Amazing Catfish」メキシコ/フランス
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クラウディアにヒメナ・アヤラ。
マルタにリサ・オーウェン。
長女アレハンドラにソニア・フランコ。
次女ウェンディにウェンディ・ギジェン。
三女マリアナにアンドレア・バエサ。
長男アルマンドにアレハンドロ・ラミレス・ムニョス。
監督、脚本はクラウディア・セント・ルース。

メキシコ、グアダラハラ。スーパーマーケットで働くクラウディアは、ある日、強烈な腹痛を覚え病院へ向う。医師の診断によると虫垂炎だった。やがて手術も無事終わりベッドに横たわるクラウディアに隣のベッドにいる女性が声をかけてくる…

メキシコ映画は滅多に見る機会がなくて「グッド・ハーブ/2012」以来。シアターで何度も何度も予告を見て少々気になっていた一作。

エイズで死んで行く母親の死を見つめる子供たちのドラマだが決して暗くない。
シングル・マザーであるマルタの、父親が違う4人の子供たちと、ある日突然家族の一員になったクラウディア。クラウディアには母親がいない。もちろん父親も兄弟も。
母親マルタの死に絶えられない子供たちに戸惑いながらもクラウディは彼らを支えようとする。ずっと一人で生きてきたから、最初騒々しい子供たちと接するのにスゴく違和感があったはず。マルタの子供たちは実に騒々しい。おまけにそれぞれが自分勝手で好きに行動しがちだ。彼らに振り回されながら団体生活をするのは少々難しかった様子だが、クラウディアはやはりきっと一人では寂しかったのだろう。

クラウディアは余命いくばくもないマルタが必死に生きようとしているのを目の当たりにする。
母親には捨てられたが、マルタは自分の存在を認めてくれる。マルタに会うまで生きる目的も、希望も見いだせなかったが今は自分自身を見つめ直すことができる。常に暗い表情のクラウディアがだんだんと明るくなっていく姿が印象的で素敵だ。

ラスト、“マルタのことづけ”が紹介される。長女から末の息子全員に言い残した後、クラウディアにもことづけされる。
“マルタのことづけ”はきっとそれぞれが未来に向け一生懸命生きる気持ちになったに違いない。

「グッド・ハーブ」同様本作も女性監督。クラウディア・セント・ルースの初長編映画とのこと。またまた「グッド・ハーブ」同様登場人物はほぼ女性。マルタの子供たちの一番下が唯一男の子という設定。
自分の死を恐れながらも、その直前迄母親のポジションを全うするマルタが素晴らしい。

シネスイッチ銀座にて
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by margot2005 | 2014-10-31 23:36 | 中・南米 | Trackback | Comments(0)

「偽りの人生」

「Todos tenemos un plan」…aka「Everybody Has a Plan」2012 アルゼンチン/スペイン/ドイツ
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ブエノスアイレスに住む医師のアグスティンは妻クラウディアと共に裕福で幸せな生活を送っている。ある日、クラウディアは養子探しにアグスティンの病院を訪れる...
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ペドロ/アグスティンに「アラトリステ/200」「ザ・ロード/2009」「危険なメソッド/2011」のヴィゴ・モーテンセン。
クラウディアに「瞳の奥の秘密/2009」のソレダ・ビジャミル。
ロサにソフィア・ガラ・カスティリオーネ。
アドリアンにダニエル・ファネゴ。
ルーペンに「瞳の奥の秘密」のハビエル・ゴディーノ。
監督、脚本はアナ・ピターバーグ。

ヴィゴ・モーテンセンは50歳を過ぎているがホント若い。「危険なメソッド」での偉大なる心理学者フロイトは初老役だったが、本作では年齢不詳ながら、若いロサが夢中になるほど素敵な男なのだ。

アグスティンは医者という社会的地位がある上、美しくてリッチな妻までいる。しかし彼は現在の生活に不満を抱いているのだ。夫婦には子供がいないため、妻は養子を迎える事を望んでいる。しかしその件で妻と諍いをし、アグスティンは自室にこもって出て来ない。彼の行動はかなり子供っぽい振る舞いかと思える。

社会的地位があって裕福、だからって人間幸せってわけではない。人生をやり直そうなんて考えていたアグスティンはその一人か?“誰もが計画を持っている。”という原タイトルが非常に意味深。そしてそこへ運良く違った人になれる機会が訪れる。

アグスティンは最初、末期ガンに苦しむ兄から自分を殺してくれという依頼に躊躇していた。しかし風呂場で突然兄の首を絞めてしまう。発作的かも知れないが、きっと兄に成り済ますことを考えていたに違いない。で、事は上手く運びまんまと兄に成り済ましたアグスティンだったが、人生はそうそう上手くは行かない。アグスティンは兄ペドロが犯罪に関与していたとは知る由もなかったのだから。

顔つきが完璧に似ていても、一卵性双生児とはいえ性格は異なる。刑務所でペドロと会ったクラウディアは、彼が夫のアグスティンだと確信する。そりゃそうだ、夫婦なら分らないはずがない。
そして夫が彼自身を捨てたことにヒドいショックを受ける妻。それは夫婦であることを否定されたわけだから...。あのシーンのクラウディアはあまりにも気の毒だった。

ロケーションされたブエノスアイレスのティグレ。風光明媚な観光地らしいが、映画の中ではとても暗くて別の場所かと見まがうばかり。そして暗い雰囲気をだすため、撮影にあえて寒い次期を選んだのは正解である。

ヴィゴ・モーテンセンのスペイン語映画は4作目とのことだが、個人的に観たのは「アラトリステ」以来。デンマーク、ハーフのヴィゴはなんとなく理由はないけど英語よりスペイン語が似合う。

TOHOシネマズ・シャンテにて
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by margot2005 | 2013-07-31 22:17 | 中・南米 | Trackback(7) | Comments(2)

「ヒドゥン・フェイス」

「La cara occult」…aka「The Hidden Face」 2011 コロンビア/スペイン
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ファビアナにマルティナ・ガルシア。
アドリアンにキム・グティエレス。
ベレンにクララ・ラゴ。
監督はアンドレス・バイス。

コロンビア、ボゴタ。ある夜、バーで飲みつぶれたアドリアンは翌朝知らない場所で目を覚ます。昨夜前後不覚に飲みまくったのは恋人ベレンが姿を消したショックからだった。一晩泊めてくれた女性にお礼を言うためアドリアンは再びそのバーを訪ねる。バーの店員はファビアナと名乗り、アドリアンが彼女に惹かれるのに時間はかからなかった...
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スペイン人指揮者のアドリアンはコロンビアの交響楽団から誘いを受ける。恋人で靴デザイナーのベレンはコロンビアに行くことをためらうが、“君を愛している!ずっと一緒にいたい!片時も側を離れない!”と約束するアドリアンを疑わなかった。それは彼女も彼を愛していたから…。
男と女の愛情なんて永遠なワケがない。ましてやアドリアンのような浮気性の男なら尚更だ。
とにかくこの男は究極の女好き。恋人ベレンが彼の家から姿を消したのも、アドリアンが楽団のバイオリニストと浮気していたから…ベレンの失踪を警察に届け出捜査を依頼する。しかし、彼女はスペインに帰国してもいなければ、死体安置所に横たわってもいなかった。

ラスト、ビーチにたたずむベレンは何を考えていたのだろう。一方で帰宅したアドリアンはクローゼットに貼付けてあったベレンと自分が映った写真を見つける。あの後3人はどうなったのだろう?これは観る者の想像に委ねられる…。
アドリアンはファビアナを見つけることが出来たのだろうか?ベレンがアドリアンの元へ戻るとは考えられない。アドリアンに救い出されたファビアナはどうしたのだろう?逆にアドリアンを閉じ込めたかも知れない。わたしだったら間違いなくそうするだろうな。アドリアンを懲らしめるために…。

バーの店員ファビアナが出会った男は若きスペインのコンダクターで、借りものではあるが豪邸に住んでいる。恋人もいないし、結婚もしていないというアドリアンを疑わなかったファビアナも少々愚かではないか?と思う。

ナチス・ドイツの残党だった家主が建てた郊外の別荘。周りには何もない。野中の一軒家にシェルターのような部屋が存在する。ジョディ・フォスターの「パニック・ルーム/2002」を思い出した。そのシェルターに自らを閉じ込めたベレン。彼女のミステイクは鍵を忘れたこと。外からも中からも鍵がないと開かない作りになっているところがミソ(簡単に開いたのじゃシェルターの意味がない)。
原タイトルと同じ邦題が付けられている“Hidden Face/隠された顔”は実に興味深い。
予告編は観ていなくて、この映画の上映も観る前の日まで気つかなかった。たまたま観た映画案内サイトで見つけ”コロンビア映画”という紹介に惹かれた。コロンビア映画って初めて観たような気がする(シアターで)。
今年のMYBESTに是が非でも入れたい1作。少々変わった展開の、最高に興味深く面白いドラマだった。携帯の映画の案内にはエロティック・サスペンスなんて書かれていたが、ちっともエロティックじゃないし、殺人は起こらないが素晴らしいサスペンス(スリラー)である。

IMDbに”mysterious disappearance/不可解な(神秘的な)失踪”とあるが、ぴったりの表現だ。
映画のバックに流れるラフマニノフのピアノ・コンチェルトなどのクラシック・ミュージックも映画をスゴく、スゴく盛り上げている。

シアターN渋谷にて(期間限定上映中:9/8~9/21)
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by margot2005 | 2012-09-17 21:46 | 中・南米 | Trackback(3) | Comments(2)

「幸せパズル」

「Rompecabezas」…aka「The Puzzle」 2010 アルゼンチン/フランス
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マリアにマリア・オネット。
マリアの夫ファンにガブリエル・ゴイティ。
ロベルトにアルトゥーロ・ゴッツ。
監督、製作、脚本にナタリア・スミルノフ。
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アルゼンチン、ブエノスアイレスに住むマリアは50歳を迎える専業主婦。まじめな夫ファンと、独立間近の2人の息子に囲まれ幸せな日々を送っていた。しかし平凡な毎日に何か物足りなさを感じていたマリアはバースディ・プレゼントにもらったジグソーパズルに夢中になる。そんなある日、“パズル大会のパートナー募集”の広告を見つける。やがて思い切ってパートナー相手を尋ねた所、広告を出したのは独身で、リッチなロベルトだった…


夫と息子のために家庭を支え続けて来たマリア。彼女は料理が得意で、自身のバースディ・パーティの際も手作り料理を用意し、列席者は食べるのみ…最初誰のバースデイ??なんて思っていたが、ケーキのキャンドルを吹き消す時にマリアのバースディだと分かった。自分のバースデイくらい、自分で料理などしたくないと思うけど、いかがなものか??
そして宴たけなわの折、一枚のお皿が割れる。割れたお皿と、バースディ・プレゼントのジグソーパズル。これが結びつくとは画期的だ。

かつてジグソパズルをやったことがある。今でも存在するだろうが、暇人でないと絶対出来ない娯楽なので今では全く関心ない。専業主婦であるマリアは確かに暇人である。でものめり込んでしまって抜き差しならない事態に陥る。
ジグソーパズルの世界選手権があるなんてことはもちろん知らなかった。ジグソーパズルごときに(偏見ですが…)世界選手権があるものだと驚きでもあった。
しかしジグゾーパズルを時間を計って競争するなんて思っても見なかった。マリアは独特の組み立て方でどんどん作り上げて行く。上に(偏見ですが…)と書いたが、映画を観ていたらパズルしてみたくなったのは事実。でもパズルを買に走るには至らなかったけど…。

夫と息子の世話が生き甲斐だったマリアがシングルのロベルトと出会う。彼は富豪の上、女性に優しい。ロベルトの家に通うことが喜びとなって行くマリアの気持ちはとても良く分かる。夫や息子に嘘をついてまで出かけるなんて、箱入り主婦のマリアもやるなぁ!と感嘆。

とてもハートフルなストーリーで、観終わって心が癒された。
パズルのせいで夫婦仲がぎくしゃくしたというのに、邦題についている“幸せ...”は余計なんじゃない?と思ったが、マリアはパズルによって幸せになったということでもある。
この夫婦はとても仲が良い。きっと常に行動を共にしてきたことだろう。しかしロベルトと出会い、夫とは別に楽しむことに目覚めるマリア。長い結婚生活を維持するには、別行動が不可欠。ラストの晴れ晴れとしたマリアは輝いて見えた。

TOHOシネマズシャンテにて
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by margot2005 | 2011-10-31 00:07 | 中・南米 | Trackback(5) | Comments(2)

「グッド・ハーブ」

「Las buenas hierbas」…aka「The Good Herbs」 2010 メキシコ
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ダリアにウルスラ・プルネタ。
ララに「フリーダ・カーロ/1984」「夜になる前に/2000」のオフェリア・メディーナ。
ララの隣人ブランキータにアナ・オフェリア・ムルギア。
ダリアの幼い息子コスモにコスモ・ゴンザレス・ムニョス。
監督、脚本、製作にマリア・ノバロ。
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シングルマザーのダリアは幼い息子を抱えながらコミュニティラジオのパーソナリティをしている。そしてダリアの母ララはハーブ研究者。ある日、ララはダリアに“夜、男が家の中をのぞいていたとか、家の鍵が見つからない。”と妙な話をする。夜中に一人暮らしのララの住まいをのぞく男がいるなど考えられない。そして家の鍵はなぜかクッキーのジャーに入っていた。つじつまの合わない言動に不安を覚えたララは病院で検査を受けるが、無情にもアルツハイマー型認知症と診断される。今まで互いに干渉しないで生きて来た母と娘。やがてララはハーブ研究の整理をダリアに託す。そしてダリアはハーブと共に生きてきた母の人生を深く知りたいと思い始める…

映画を観終わってジュリー・クリスティの「アウェイ・フロム・ハー 君を想う/2006」を思い浮かべた。どちらも若年性アルツハイマーに冒された女性の物語。

ハーブ研究家のララの家が素敵だ。ハーブを愛する彼女の部屋に所狭しと並べられた植物たち。同じく愛してやまない美しい庭(映像では残念なことに一部しか映らないのでメキシコ国立自治大学の植物園の映像かも?)。そしてララが娘と孫を伴って散策する多肉植物のガーデン(メキシコ国立自治大学の植物園)。これら美しい映像は女性監督ならではの感性かとため息が出る。音楽もナイス!
マリア・ノバロが作る映画はみな女性が主人公だそうだ。そしてマリア・ノバロ映画は日本で今回初めて公開されたという。

映画の主軸は女性。ダリアはシングル・マザーで別れた夫は数シーンにしか登場しない。彼女の父親はララと離婚しており、ダリアが電話で父親と話すシーンはあるが姿は見せない。ララの隣人ブランキータも重要な役回りだ。唯一存在感のある男性はダリアの息子のコスモ。このコスモがめちゃくちゃ可愛いのだ。3歳くらいかな?

ハーブ研究者として自立するララ。アルツハイマーと診断された彼女は“病状が悪化し、自分で何も出来なくなってもモノのように扱わないで…”と娘に懇願する。しかしどんどん病状が悪化し、家での介護が大変になった時、母を病院へ連れて行く。しかしそこで母をモノのように扱う看護師を目の当たりにし、ダリアは母を家に連れ帰るのだ。
映画の中でのララは50代の設定だろうか?若ければ、若いほど進行が早いというアルツハイマーの怖さを改めて知った。
ラスト、娘が取る行動に少々唖然としたが、彼女の気持ちは理解出来る。同じ立場だったら、同じ行動を取るかも知れない。
これは究極の女性映画。あのような状態になった母親を看病してくれる息子なんてこの世にはいない。やはり娘なのだ。息子しかいない私は全く無理な注文ながら娘が欲しくなった。

シネマート新宿にて
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by margot2005 | 2011-08-05 23:23 | 中・南米 | Trackback | Comments(0)

「BIUTIFUL ビューティフル」

「Biutiful」 2010 メキシコ/スペイン
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ウスバルに「宮廷画家ゴヤは見た/2006」「コレラの時代の愛/2007」「それでも恋するバルセロナ/2008」「食べて、祈って、恋をして/2010」のハビエル・バルデム。
マランブラにマリセル・アルバレス。
アナにハナ・ボウチャイブ。
マテオにギレルモ・エストレラ。
イヘにディアリァトゥ・ダフ。
監督、製作、原案、脚本に「バベル/2006」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。
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ウスバルはバルセロナの裏社会で、中国やアフリカからやって来た移民の不法労働を手配する傍ら、時には警察に彼らを売ったり、麻薬取引も含め、非合法な仕事を一気に引き受けて生活費を稼いでいる。そして、一方では霊媒師でもあり、葬儀場で死者と対話し、家族から金を巻き上げていた。元妻マランブラは麻薬中毒の上、情緒不安定で、離婚後もウスバルを頼り、金を要求して来る。そんな彼にとって二人の子供アナとマテオは生き甲斐であった。しかしある日、自分が末期ガンに冒されている事を知る…。

スペインの世界的観光地バルセロナの底辺の街で暮す人々の物語。“サグラダ・ファミリア教会”がロング・ショットで一瞬映る。ここがバルセロナか?と思うくらいのロケーション。

末期ガンに冒されている事を知ったウスバルは、誰にも打ち明けられない苦しみと共に死の恐怖と闘い始める。子供たちを深く愛している彼は、自分がガンで死んで行く事よりも、子供たちを残して死んで行く事の方が辛かったに違いない。同じ親として彼の気持ちが強烈に理解でき辛いなんてものじゃない。自分の死後子供たちを託す人間が一人もなく、切羽詰まったウスバルは不法移民のアフリカン、イヘに頼ることを選ぶ。

女性移民たちへの気遣いなど見ているとウスバルは以外に心優しい男に映る。彼はただ生活のためにダーティな金を稼いでいるのだから...。社会の底辺に生きる人間の哀しみがひしひしと伝わって来て、彼の慟哭の叫びが聞こえそうだった。

オープニングと、エンディング近くで、会ったことがないウスバルの父親とのツーショットが登場する。父親はウスバルよりも若く、先に天国へ旅立ったことが伺える。雪に埋もれた木々の中にたたずむ二人の姿がとても印象的で心に残る。

「ノー・カントリー/2007」以降、世界的にメジャーになったハビエル・バルデム。彼の主演作品で素晴らしいのは「夜になるまえに/2000」と「海を飛ぶ夢/2004」であろうか。「BIUTIFUL ビューティフル」も素晴らしい作品だが、個人的にこういった展開のドラマはあまり好みではない。

ウスバルを演じるハビエル・バルデムはカンヌで主演男優賞、そしてオスカーにもノミネートされただけあって、死に行く男を熱演しているが、あまりにも辛いストーリで、上映時間も148分と長く、エンディングが始まってほっとした。

TOHOシネマズシャンテにて
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by margot2005 | 2011-07-03 18:38 | 中・南米 | Trackback(19) | Comments(0)