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「フローズン・リバー」

「Frozen River」 2008 USA
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レイに「21グラム/2003」「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬/2005」のメリッサ・レオ。
ライラにミスティ・アッパム。
レイの長男T.J.にチャーリー・マクダーモット。
監督、脚本にコートニー・ハント。

カナダ国境に近いニューヨーク州最北部の町は先住民モホーク族の保留地でもある。二人の男の子を育てるレイは白人女性。クリスマスに近いある日、ギャンブル狂いの夫が新居購入のため蓄えた金を持って蒸発する。そして、途方に暮れるレイはモホーク族の女が運転する夫の車を見つける。ライラと名乗る女は捨ててあった車を拾ったと主張する。
ライラは夫亡き後義母に幼い子供を奪われ、トレーラー・ハウスに一人住んでいる。子供を引き取り一緒に暮らす金を得るため彼女は密入国という危険な仕事に手を染めていた。仕事に車が必要なライラはレイにパートナーにならないか?と持ちかける...
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2008年度サンダンス映画祭グランプリ作品。
上映されたら一番に観に行きたい!と思いながら中々行けなくてやっと観る事が出来た。
これはもう絶対マイベストに入れたい!
この映画を観てすぐケン・ローチの「この自由な世界で/2007」を思い出した。どちらも子供との生活を守るため悪事に手を染める母親の姿。
メリッサ・レオはシワが目立つノーメイクで情感たっぷりにヒロインを好演している。
オープニング、車のシートに座りタバコをふかすレイの姿はおばあさんのように見える。思い悩み、疲れ果てた彼女は二人の子供の母親。
ギャンブル狂いの夫は家を買うために蓄えた金を携え蒸発する。
レイは1ドルショップの店員。しかし大して稼げない焦りから不法移民密入国に手を貸す危険な仕事にハマってしまう。
事の始まりはモホーク族のライラと出会った事。ライラに誘われ金の山分けを条件に車のトランクに乗せた密入国者をカナダからアメリカ側へと運ぶ。
彼女たちが車で密入国者たちを運ぶのは夜。凍てつくセントローレンス川を挟み、モホーク族の保留地が隣接する街。アイスバーンと化した川に車を走らせる。完璧に凍ったかに見える川を渡る車のシーンがスゴくスリリング。
パキスタン人夫婦を運んだ時、妻が大事そうに抱えていた鞄...レイは自爆テロリストか?と疑い鞄を凍てつく川に放り投げる。しかしその中には夫婦の赤ん坊が入っていた。焦る二人は川に戻り鞄を拾い上げる。危険覚悟で川に戻った二人はどちらも子持ちの女。彼女たちの行動に母性愛を感じる。そういや監督も女性。
ライラは亡くなった夫の母親に赤ん坊を取り上げられている。生活力がないため我が子を引き取ることも出来ないライラ自身も、パキスタン人夫婦の赤ん坊を抱きしめ母性本能が蘇ったように見えた。
危険を顧みず戦うように事に挑む二人の母親の姿に同じ母親として心揺さぶられ、父親に捨てられたも同然の長男T.J.がグレもせず幼い弟の面倒を実に良くみていてホロリとさせられる。
ラスト、レイに課せられた究極の決断。自身の未来と子供たちのために選んだ彼女の決断は、先住民ライラとの友情が感じられ心打つ。
明るい未来が見えるかのように回るメリーゴーラウンドのシーンは素晴らしいエンディングだった。
渋谷 シネマライズにて
Commented by sabunori at 2010-04-07 21:17
margotさん、こんばんは。
凍てつく氷に覆われたセントローレンス川。
それはまるで夫に去られたレイや子供を奪われたライラの心のようにも
思えました。
それにしても島国に住んでいるとああいう陸路でスルリと
越えてしまえる国境の存在がいつになっても不思議な感じです。
T.Jは家族思いのいい子でしたね!
Commented by margot2005 at 2010-04-09 23:13
sabunoriさん、こちらにも書き込みいただいてありがとう!
さてこの映画、凍てつくセントローレンス川周辺での撮影は大変だったようですね。
惨めな二人の女性の心はきっと凍てついていたことでしょう。
陸続きの隣接国が存在しない日本では考えられないシチュエイションでした。日本は平和な国ですわ。
by margot2005 | 2010-02-11 22:37 | Comments(2)