2020年 07月 14日
「カセットテープ・ダイアリーズ」
「Blinded by the Light」2019 UK/USA/フランス
1987年、サッチャー政権下の英国ルートンの小さな町。両親や妹と暮らすパキスタン系の少年ジャベドは16歳の高校生。隣人のマットは英国人で同じ学校に通っている。移民に対する差別が繰り返される中、失業率も高く、ジャベドの父も会社を首になる。そんな中、同じくパキスタン系の青年ルーブスからブルース・スプリングスティーンを聞かされ、一気にブルースの虜となる…
詩を書くことが大好きで作家になりたいという夢を抱くジャベド。そして文学教師のミス・グレイはジャベドの才能を察知し彼を支える。
英国人の同級生に”パキがボスを聞く?ブルース・スプリングスティーンは親の世代のミュージックだ。”と揶揄されながらもブルースを聴き続けるジャベド。
労働者階級に生まれ、後にミュージシャンとして成功し”ボス”とあだ名されるほど大物になったブルース・スプリングスティーン。ジャベドがブルースに夢中になったのは彼を尊敬し憧れを抱いたから...。
原作はパキスタンに生まれ、現在は英国ガーディアン紙で定評のあるジャーナリストとして活躍するサルフラズ・マンズールの自伝的な回顧録”Greetings from Bury Park: Race, Religion and Rock N’ Roll”。
ブルース・スプリングスティーンの協力のもと完成した青春映画は素晴らしい!
映画のラストにブルースと一緒のジャベドの写真が登場。ジャベドはブルースのライヴを何百回と見たそう。
映画を鑑賞した後YouTubeでブルースを聴きまくり、Amazonでベストアルバムをオーダーした。
「サンダーロード/2018」で”涙のサンダー・ロード(Thunder Road)”を聞くことはできなかったが本作ではブルースの歌でバッチリ聞けた。
「フィラデルフィア/1993」でゲイのエイズ患者を演じたトム・ハンクス。彼はオスカー主演男優賞を受賞し、ブルースの“Streets Of Philadelphia”はオスカー歌曲賞を受賞。この曲は泣ける。
ミッキー・ロークの「レスラー/2008」のテーマ“The Wrestler”も胸に迫る。
父親は”お前は英国人ではなくパキスタン人だ!”と息子に諭す。しかしジャベドにはブリティッシュの友人マットもいるし、自分はブリティッシュだと思っている。
英国人からパキと呼ばれるパキスタン移民。”パキは出て行け!”と街頭デモで叫ばれ、唾を吐かれ、家の玄関に放尿されたり、と凄まじい差別を受ける日々。隣人のエヴァンスが差別意識を持たない人物でナイス。ミス・グレイも然り…。
21世紀の今ではこのようなあからさまな差別はないと信じたい。
ジャベドとイライザの淡い恋...パキスタン青年とアイルランド人女性の恋を描いた ケン・ローチの「やさしくキスをして/2004」を思い出した。
ジャベドにヴィヴェイク・カルラ。
マットに「1917 命をかけた伝令/2019」のディーン=チャールズ・チャップマン。
ミス・グレイに 「プーと大人になった僕/2018」のヘイリー・アトウェル。
イライザに「グッドライアー 偽りのゲーム/2019」のネル・ウィリアムズ。
マリク(ジャベドの父)に「ベッカムに恋して/2002」のクルヴィンダー・ジル。
ヌール(ジャベドの母)にミーラ・ガナトラ。
シャジア(ジャベドの妹)にニキータ・メフタ。
マットの父親に「シンクロ・ダンディーズ!/2018」のロブ・ブライドン。
ルーブス(ジャベドの友人)にアーロン・ファグラ。
ミスター・エヴァンズ(隣人)に「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて/2019」のデヴィッド・ヘイマン。
監督、脚本、製作は「英国総督 最後の家/2017」のグリンダ・チャーダ。
TOHOシネマズシャンテにて