2019年 09月 04日
「鉄道運転士の花束」
「Dnevnik masinovodje」…aka「Train Driver's Diary」2016 セルビア/クロアチア
イリヤは三代続く鉄道運転士としての仕事に誇りを持っている。しかしこれまでに28人も轢き殺してしまったという不名誉な記録を残して定年を迎えようとしている。事故はイリヤのせいではなく職業上やむを得ないことで罪に問われることもないが、彼にとってそれは大きなトラウマとなっていた。そんなイリヤにとって揺るぎない信頼関係にある心理カウンセラーのヤゴダは心の支えだった。一方で鉄道学校を卒業した養子のシーマが運転士になりたいと言い出しイリアは猛反対する…
何とも風変わりなテーマのドラマは悲哀を込めたブラック・コメディ。
孤児のシーマを養子にした優しいイリヤ。隣に住む鉄道運転士のドラガンと妻のシダとは家族同然。
そういえば彼らが住む家は列車で、ガーデニングをしている。イリヤは轢死した人の墓に詣で家族に謝罪し、自ら育てた花を手向ける。あのシーンを見て現実にあのようなことがあるのだろうか?と思ったけど…。
シーマが鉄道運転士として抱く不安と恐怖。それを助けようと奔走するイリヤの愛に感動する。
過去にイリヤの妻ダニカと、ドラガンとシダ夫婦の息子が鉄道事故で亡くなっている。ダニカはゴーストとして現れ、その姿はイリヤにしか見えない。何だかファンタジーのようなシーンはブラック・コメディらしからぬ展開でナイスだった。
イリヤを演じるラザル・リストフスキーはセルビア生まれでバルカンを代表する俳優とのこと。飄々とした雰囲気がイリヤ役にぴったり。
ヤゴダ役のミリャナ・カラノヴィッチは“サラエボ戦争”を描いた2作品とは全く違った雰囲気で素敵だ。
イリヤに「アンダーグラウンド/1998」のラザル・リストフスキー。
シーマにペータル・コラッチ。
ヤゴダに「ライフ・イズ・ミラクル/2004」「サラエボの花/2006」「サラエボ、希望の街角/2010」のミリャナ・カラノヴィッチ。
シダにヤスナ・ジュリチッチ。
ドラガンにムラデン・ネレヴィッチ。
ダニカにニーナ・ヤンコヴィッチ。
監督、脚本はミロシュ・ラドヴィッチ。
新宿シネマカリテにて