2017年 04月 01日
「未来よ こんにちは」
「L'avenir」…aka「Things to Come」2016 フランス/ドイツ
ナタリーはパリの高校で哲学を教える50代後半の女性教師。夫ハインツも哲学教師で結婚生活は25年になる。そんなある日、夫から”好きな人ができたので別れて欲しい。”と告白される。そして認知症が進む母親イヴェットが施設に入った末亡くなってしまい、仕事上では長い付き合いだった出版社から時代に合わないと契約を打ち切られてしまう。娘クロエと息子ヨアンは既に独立しており、ふと気つけばナタリーは一人きりになっていた…
ナタリーに「アスファルト/2015」のイザベル・ユペール。
ハインツに「ラブ・トライアングル 秘密/2014」「偉大なるマルグリット/2015」のアンドレ・マルコン。
ファビアンに「EDEN/エデン/2014」のロマン・コリンカ。
イヴェットに「ボン・ヴォヤージュ/2003」「夏時間の庭/2008」「ホーリー・モーターズ/2012」「ボヴァリー夫人とパン屋/2014」のエディット・スコブ。
ヨアンにソラル・フォルト。
脚本、出演(クロエ)にサラ・ル・ピカール。
監督、脚本は「あの夏の子供たち/2009」「EDEN/エデン/2014」のミア・ハンセン=ラヴ。
子供が独立した後夫に愛人が出来て離婚を要求される。おまけに母親が亡くなり孤独で時折泣きたくもなるが、ナタリーは何といっても自由である。思い返せば認知症だった母親に手を焼いた時期もあった。
映画はナタリーの歩くシーンを頻繁に映し出す。それは前向きに生きようとするナタリーを表現しているようにも見えて素敵だ。
ナタリーは再会したかつての教え子ファビアンの住まいがあるローヌ・アルプスを訪ねて彼の仲間たちと交流するが、若者ばかりのコミュニティに身を置いて、自分はもう若くはないと痛感する。しかし辛いながらも日々の現実を受け入れ、未来に向かって生きている。いつも凛として…。
演じるイザベル・ユペールは60代ながらとてもチャーミングでナタリーにぴったり。
ファビアンに新しい出会いはある?と聞かれ“孫が出来たわ!”と答えるナタリーが愛おしい。
ミア・ハンセン=ラヴの作った大人の女性のためのドラマは素晴らしかった。中高年女性に今年一番のおすすめ映画。
渋谷で見るか、有楽町で見るか迷った末、夕方の時間が合う有楽町にしたところシアターは満席(平日/小さい方)。窓口では“昨日も満席だった!”なんて声も…。本作巷で話題になっているなんて知らなかった。
ヒューマントラストシネマ有楽町にて