2017年 07月 03日
「セールスマン」
「Forushande」…aka「The Salesman」2016 イラン/フランス
エマッドとラナ夫婦は小さな劇団に所属する俳優。アーサー・ミラー原作の“セールスマンの死”の舞台稽古で忙しい最中自宅が倒壊の危機に見舞われる。やがて劇団員のババクに紹介してもらったアパートに住むことが決まるが、前に住んでいた女性の荷物が運び出されず落ち着かない。そんなある日、シャワーを浴びていたラナが何者かに襲われて頭部に怪我をする事件が起こる…
エマッド・エテサミにシャハブ・ホセイニ。
ラナ・エテサミにタラネ・アリドゥスティ。
ババクにババク・カリミ。
サナムにミナ・サダティ。
男にファリッド・サジャディー・ホセイーニ。
監督、脚本は「彼女が消えた浜辺/2009」「別離/2011」「ある過去の行方/2013」のアスガー・ファルハディ。
イランのテヘランを舞台に描いた役者夫婦の物語。
エマッドは事件を警察に届けようと言い張るがラナに拒否されてしまう。やがて襲った人物に復讐を誓ったエマッドは独自で捜査を開始する。
ラスト、エマッドは憎悪をむき出しに男と対決する。男を罰するエマッドを見て涙を流すラナ。何をおいても年長者を敬い名誉を重んじる社会で生きる彼らを理解するのは難しい。
宗教的なことが大きいと思うのでイラン人の行動や考え方は良くわからないが、ラナの頑なな抵抗は理解しがたい。そしてラナを襲った男は本当にあの男だったのか?階段を上がるのにも苦労するほど心臓が悪い老人の男がラナを襲うことは不可能ではないのか?と少々疑問が残る。
「彼女が消えた浜辺」でチャーミングだったタラネ・アリドゥスティがちょっとおばさん化していた。映画のキャストは過去にアスガー・ファルハディ作品に出演歴がある俳優ばかりでまるでファミリーの様子。
映画案内には“濃密な心理サスペンスの傑作”とか“事件の衝撃の顛末を緊張感あふれる筆致でスリリングに描き出していく…"とか書いてるがそれほどスリリングでもなかったし、心理サスペンスの傑作ってほどでもなかったかと思う。
本作は今年のアカデミー賞外国語映画賞に輝いたが、トランプ政権がイラン人などへのビザの発給制限を検討しているとの報道を受け、監督と主演女優が授賞式をボイコットした。アカデミー賞授賞式には確か関係者の女性が受け取りに現れたと記憶している。
新宿シネマカリテにて
あんなにひどい怪我を負ったのに、ラナはどうして警察に届けようとしなかったのか?
私も最初は理解できなかったのですが
警察から根ほり葉ほり聞かれて嫌な思いをしたり
襲われたラナの方に非があるようにみなされて
かえって傷つくことを恐れたのかな...と思いました。
日本ですら、まだまだそういうところがありますものね。
はたして2人の間に何があったのか
真相が明かされないところは、宗教上の配慮もあるかもしれませんが
見る側に想像させるところが、なかなかうまいな...と思いました。
こんばんは。
確かに警察に根ほり葉ほり聞かれるのは辛いですよね。
警察って疑いますから被害者だからって安心はできないと思います。
そういった意味ではラナの気持ちは理解できます。
でも加害者の男の家族...特に妻の夫に対する愛には驚かされました。
ラナとエマッドの行く末気になりましたが、
この監督はいつもラストを観客に委ねるようで上手いです。