2016年 10月 26日
「人間の値打ち」
「Il capitale umano」…aka「Human Capital」2013 イタリア/フランス
イタリア・ミラノ郊外。町で小さな不動産屋を経営するディーノは、後妻で診療内科医のロベルタと娘のセレーナの三人暮らし。ある日、ディーノはセレーナのボーイフレンド、マッシミリアーノの家に娘を車で送ることになる。マッシミリアーノの父親ジョヴァンニは投資ファンドで大もうけした大富豪。やがてディーノは豪邸の庭でテニスに興じるジョヴァンニに自らを紹介し、強引にテニスの相手に加わる。ジョヴァンニの妻カルラは元舞台女優で、今では何不自由ない暮らしながら、夫からはトロフィーワイフ扱いされ自身の居場所が見いだせない空虚な日々。そしてセレーナはリッチな生活を送るボーイフレンド、マッシミリアーノに別れを告げようとしている...
カルラ・ベルナスキに「アスファルト/2015」の ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。
ディーノ・オッソラに「まなざしの長さをはかって/2007」「ブルーノのしあわせガイド/2011」のファブリッイオ・ベンティヴォリオ。
ロベルタに「あるいは裏切りという名の犬/2004」「私たちの家で(愛と欲望 ミラノの霧の中で)/2006」「湖のほとりで/2007」「バッグにはクリプトナイト/2011」「あなたたちのために/2015」のヴァレリア・ゴリノ。
ジョヴァンニ・ベルナスキに「輝ける青春/2003」「湖のほとりで」「バッグにはクリプトナイト」のファヴリッツィオ・ジフーニ。
ドナート・ルッソマンノに「われらの子供たち/2014」のルイジ・ロ・カーショ。
セレーナ・オッソラにマティルデ・ジョリ。
マッシミリアーノ・ベルナスキにグリエルモ・ピネッリ。
ルカ・アンブロジーニにジョヴァンニ・アンサルド。
監督、脚本は「ナポレオンの愛人/2006」のパオロ・ヴィルズィ。
自分の居場所が見いだせない富豪の妻カルラ、投資ファンドで一攫千金を狙う男ディーノ、愛に疑念を抱く高校生のセレーナ…3人を軸にドラマは進んで行く。
カルラは町にある唯一の劇場が老朽化で取り壊しになることを知り、夫に資金提供を申し出る。自ら運営委員会を立ち上げ、屋敷に評論家や劇作家のドナートを呼び寄せ議論を交わす。そして次第にカルラとドナートの関係は深まって行く。
一攫千金を狙うディーノは銀行から70万€を借り入れジョヴァンニの投資ファンドに参加する。
リッチなボーイフレンドがつまらなくなったセレーナは、診療内科医ロベルタの勤務先で出会った一風変わった少年ルカに恋をする。
彼らには家族が知らない思惑や秘密がぎっしり。
ドラマのオープニングはクリスマス・イブのひき逃げ事故。
車を運転していたのは誰?真実を知るのは誰?と、じわじわ真実が暴かれて行く過程が興味深くて面白い。
金持ちに取り入ろうとする父親と、金持ちの息子を捨てる娘の行動が真逆で滑稽だ。
本作はイタリア・アカデミー賞で7冠に輝いたシリアス・ドラマ。ある夜、突然起こった一つの事故から、金持ち、中間層、低所得者の3つの家庭の隠された秘密と欲望が浮かび上がる。
邦題の「人間の値打ち」とは事故で亡くなった人に支払われる慰謝料のこと。
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキは富豪の妻より、「アスファルト」の生活に疲れた中年女性の方が断然似合う。
Bunkamura ル・シネマにて