2016年 10月 02日
「エル・クラン」
1980年代のアルゼンチン。70年代から80年代に起こった軍事独裁政権も終わり、国は徐々に民主政治を取り戻していた。裕福で、近隣からも信頼厚いプッチオ家は主のアルキメデス、そして妻と三人の息子と二人の娘が共に幸せな生活を送っていた。しかし1982年にマルビーナス戦争(フォークランド紛争)が起こり政府がこけてしまい、あおりを受け政府の情報管理官として働いていたアルキメデスは失職してしまう。そんなある日、長男アレハンドロのラグビーチームの友人誘拐事件が起こる...
アルキメデス・プッチオに「ルドandクルシ/2008」「瞳の奥の秘密/2009」のギレルモ・フランセーヤ。
妻エピファニにリリー・ポポヴィッチ。
長男アレハンドロにピーター・ランサーニ。
次男マギラにガストン・コッチャラーレ。
三男ギレルモにフランコ・マシニ。
長女シルビアにジゼル・モッタ。
次女アドリアナにアントニア・ベンゴエチェア。
アレハンドロの恋人モニカにステファニア・コエッスル。
監督、脚本、製作は「セブン・デイズ・イン・ハバナ/2012」のパブロ・トラペロ。
アレハンドロのラグビーチームの友人の誘拐犯は父親のアルキメデスだった。彼は家に監禁部屋を作り、人質に家族へ身代金支払いの手紙を書くよう支持する。まんまと身代金をせしめたアルキメデスは息子のアレハンドロにも分け前を与えるのだった。
その後もアルキメデスは金持ちの家族誘拐に成功し、決してバレることはなかった。ある日、父親から貰った金でサーフショップを立ち上げたアレハンドロは来店した客モニカに一目惚れ。やがて二人は結婚を約束し、アレハンドロは父親に報告するが、アルキメデスは怒りと共に結婚に大反対する。普通の生活がしたいと願うアレハンドロも父親にがんじがらめで従うしか方法がなかった。
アルゼンチン人って家族の結びつきが強いとどこかで聞いたことがある。ドラマに登場する家族も互いに愛情深いことが窺える。おまけに一家の主である父親は絶対的存在で、逆らうことなどできない。長男と次男は父親の言いなりだったが、何れ悪事がバレると感じ家を飛び出した三男は賢い!と思った。一つ屋根の下に一緒に住んでいながら何も知らなかった女性たちが、おばかと言うか哀れ。
何度かシアターで予告篇は見たが、いつのも様に全く前知識なしで鑑賞。時折アルゼンチンの社会模様が実写で映し出されるので、始めは政治的な犯罪なのか?と思っていたらなんのことはない単なる身代金目当ての誘拐だった。
何はともあれ家族を振り回す一家の主が猛烈!父親の言いなりにならざるを得ない長男が気の毒だったけど、家族から去って行った三男のように行動を起こさなかったのが疑問?金が欲しかったのか?母親や妹たちが気がかりだったのか?定かではない。
実話をベースにした犯罪ドラマは本当に実際に起こったこと?と疑うくらいとんでもない悪行。
家では優しい夫であり父親でもあるアルキメデス・プッチオが、良心の呵責など全く感じずに淡々と強盗誘拐に興じる様がブラック・コメディの雰囲気で可笑しかった。演じるギレルモ・フランセーヤはナイス・キャスティング。
公開二週目のサービスデイに鑑賞した折、シアターは満席だった。
新宿シネマカリテにて