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「ティエリー・トグルドーの憂鬱」

「La loi du marché」…aka「Un homme」「The Measure of a Man」2015 フランス
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失業中のティエリーは新しい職を得るため研修を受けクレーン操縦士の資格を取る。しかし現場経験がないからと不採用になってしまう。ハローワークを訪れたり、スカイプで面接を受けたりするが中々仕事が見つからない。家のローンの支払いも困難な状態で、仕方なく銀行に金を借りに行く...

ティエリー・トグルドーに「ガスパール/君と過ごした季節(とき)/1990」「すべて彼女のために/2008」「君を想って海をゆく/2009」「母の身終い/2012」「友よ、さらばと言おう/2014」「小間使いの日記/2015」のヴァンサン・ランドン。
ティエリーの妻にカリーヌ・ドゥ・ミルベック。
ティエリーの息子にマチュー・シャレール。
ハローワークの担当者にイヴォ・オリ。
同僚に「グレート デイズ! -夢に挑んだ父と子-/2013」のグザビエ・マチュー。
銀行員にカトリーヌ・サン・ボネ。
ダンス教師にノエル・メロ。
監督は「愛されるために、ここにいる/2005」「シャンボンの背中/2009」「母の身終い/2012」のステファヌ・ブリゼ。

邦題に付いている“憂鬱”。映画を見終わってこれほど憂鬱になった映画はあるだろうか?と自問した。原タイトルは“マルシェ(スーパーマーケット)の法”。

失職後なんとかマルシェの監視員の職を得たティエリーの仕事は、店の中を巡回したり監視カメラを覗いて万引きの現場を押さえることだった。そして不正は従業員の間でも起こる。万引する客や不正を犯す従業員の中には金に困った人や、家庭内に問題があったりする。現実問題としてティエリー自身、障害のある息子を抱えた上、家のローンの支払いに苦しんでいた。

ある日、店のクーポンを盗んで問いつめられたレジ係の女性が自殺してしまう。マルシェの店長と本社からやって来た人事担当者はことの成り行きを“誰の責任でもない。彼女自身の問題だ。と淡々と説明して終わりにする。しかしティエリー以下店の従業員はやるせない思いでいっぱい。それは一つ間違えば彼らにも起こりえることだから…。

少しでも金を得ようと、ティエリーは海辺にある思い出深い移動式住宅を6000万€で売りに出す。しかし買い手にたたかれ憮然となる。
文句も言わず障害者の息子を育てる優しい妻。ティエリーはただ穏やかに生きたいだけなのに理不尽なことばかり起こる日常にやるせなくなる。

ラスト、突然仕事を投げ出し店を出て行くティエリーの後ろ姿が脳裏に焼き付いて離れなかった。
何の盛り上がりもなく淡々と進むティエリーの日常を描いたドラマは見終わってホント憂鬱になった。
ヴァンサン・ランドンほど寡黙で憂鬱なキャラが似合う俳優は他に思い浮かばない。カンヌ映画祭で男優賞に輝いたのも頷ける。
切羽詰まった生活を送りながらも妻とダンス教室に通う姿がヨーロッパ人だなぁと感心する。それはドラマの中で一服の清涼剤のようだった。

ヒューマントラストシネマ渋谷にて
by margot2005 | 2016-09-14 22:22 | Comments(0)