2016年 05月 05日
イタリア映画祭2016...「あなたたちのために」
ナポリに住むアンナはTVドラマの製作スタジオでプロンプターとして働いてる。夫ジジは花火を売って稼いでいるというが、どうやら怪しい仕事に携わっている様子。二人の娘と、ろうあ者の息子に加え両親の面倒も見なくてはならないアンナは“あなたたち(大家族)のために”生きているといっても過言ではない。家で暴力を振るう夫に耐え、そんな父親を憎む息子を諌める。一歩外に出ればアンナの働く前にプロンプターだったチーロから仕事を取られたと愚痴られ金をせびられる始末。そんなさえない日々のアンナにスター俳優のミケーレが言いよってくる...
アンナに「あるいは裏切りという名の犬/2004」「私たちの家で(愛と欲望 ミラノの霧の中で)/2006」「湖のほとりで/2007」「バッグにはクリプトナイト/2011」のヴァレリア・ゴリノ。
ジジに「あしたのパスタはアルデンテ/2010」マッシミリアーノ・ガッロ。
ミケーレに「スウェプト・アウェイ/2002」のアドリアーノ・ジャンニーニ。
監督、原案、脚本、製作はジュゼッペ・M・ガウディーノ。
子供の頃勇敢だった少女が大人になり結婚して3人の子供の母親となった今、夫の暴力に耐え、子供たちをかばい、頼りにならない兄の代わりに両親の面倒まで見なくてはならない現実が立ちはだかっている。
映画祭の公式カタログに“ジュゼッペ・M・ガウディーノの映画は主に社会的疎外と文化的に排除されるということを題材にしている。”と記されている。本作のヒロイン、アンナが正にそれだ。
ドラマはモノクロで描かれ、アンナの夢と記憶だけはカラーで描いている。そしてドラマのエンディング(現実)もカラー。
この映画はいわゆるアンナの人生再生ドラマ。
マルゲリータ・ブイの「母よ、/2015」にも登場した水のシーン。本作では走行するバスの床が水浸しになる。それは何かの暗示なのかも知れない。
信心深いアンナの母親の姿や、子供の頃“聖母被昇天祭”で天使に扮したなど、宗教色も濃いので少々とっつきにくいドラマではある。
ポスターを見てヒロインの目から下を覆う白い部分は天使の羽であることに気づいた。
ちょっと気になったのはドラマの時代設定が良くわからないこと。ミケーレが携帯電話を持っていたように見えたので現代であるのは間違いない。でもまるで60年代のような雰囲気を感じるのはモノクロのせい?それともアンナのアンティークっぽい服装のせい?そういえばミケーレもレトロな雰囲気を醸しだしている。
さえない子持ちのアンナにスター俳優のミケーレがなぜ?誘惑してくるのか?と、とても不思議だったがなるほどの展開で呆れた。
TV俳優ミケーレ役の俳優はどこかで見た、見たと思っていたらガイ・リッチーの駄作でマドンナ主演の「スウェプト・アウェイ」で船員ジュゼッペを演じた彼だった。かなり老けた感じ。
トム・クルーズの「レインマン/1988」でヒロインを演じたヴァレリア・ゴリノは今年50歳になるがとてもキュート。リッカルド・スカマルチョがパートナーだから?
有楽町朝日ホールにて