人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「夏をゆく人々」

「Le meraviglie」…aka「The Wonders」2014 イタリア/スイス/ドイツ
「夏をゆく人々」_a0051234_22405487.jpg

「夏をゆく人々」_a0051234_22404563.jpg

イタリア、トスカーナ州の山奥。養蜂業を営むヴォルフガングには妻アンジェリカとの間に4女がいる。長女ジェルソミーナはまだ12歳ながら養蜂の技術に優れ父を助ける日々。そんな夏のある日、家族はTV番組のロケ隊に遭遇する…

長女ジェルソミーナにマリア・アレクサンドラ・ルング。
父親ヴォルフガングに「闇を生きる男/2011」のサム・ルーウィック。
母親アンジェリカに「ボローニャの夕暮れ/2008」「私を撮って/2008」「やがて来る者/2009」「ミラノ、 愛に生きる/2009」「司令官とコウノトリ/2012」のアルバ・ロルヴァケル。
候のココにザビーネ・ティモテオ。
次女マリネッラにアニェーゼ・グラツィアーニ。
三女カテリーナにエヴァ・レア・ペイス・モッロー。
四女ルーナにマリス・ステッラ・モッロー。
ドイツ人の少年マルティンにルイス・ウイルカ。
ヴォルフガングの友人アドリアンに「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々/2005」「コッポラの胡蝶の夢/2007」のアンドレ・ヘンニック。
少年更生プログラムのイルデにマルガレーテ・ティーゼル。
TV司会者ミリー・カテナに「灼熱の肌/2011」のモニカ・ベルッチ。
監督、脚本はアリーチェ・ロルヴァケル。

長女ジェルソミーナの視点で描かれるドラマの舞台は、まるで文明など存在しないような人里離れた山奥の農村。家族は自然と共存しながら自給自足の日々を送っている。父親ヴォルフガングはドイツ出身で、家族はジェルソミーナの母と3人の妹、そして居候のココと父親以外全て女性。ヴォルフガングは家族に対し圧倒的な態度を取る支配者。次女のマリネッラは“わたしたちはまるで奴隷のよう。”と言う。

父親の独断である日、青少年更正プログラムの監視下にあるドイツ人少年マルティンを引き取ることになる。それは少年を預かることによって得られる現金収入のためだった。子供は娘ばかりで、ヴォルフガングは少年の存在が嬉しい。しかし娘たちはいきなりやって来た少年の存在に違和感を感じ始める。

ジェルソミーナはTV番組司会者ミリー・カテナの妖しくも美しい姿に魅了され、父親に内緒でTV番組のオーディションに応募する。番組は伝統的な製法で農産物を作る家族を紹介すると言うもの。
ヴォルフガングは自然と共に生きる伝統的な養蜂家の暮らしをかたくなに守ってきた。しかしジェルソミーナは外の世界へ飛び出したくてたまらない。ミリー・カテナと出会い、少年マルティンとの出会いも彼女に変化を与えたのだ。

しかしながらヴォルフガングはなんと頑固な男であることか!ある時、妻のアンジェリカが“もう我慢できない!別れるわ!”と宣うシーンがある。自己中な男に振り回される女性たち。日々、支配されこき使われながらも父親が大好きなジェルソミーナでさえうんざりする時もある。
ジェルソミーナを喜ばすため、ラクダをプレゼントするヴォルフガング。しかし当然ながらペットには無理だとわかる。トスカーナにラクダが全くマッチせずに可笑しい。

ドラマの中に養蜂のシーンが何度もでてくる。ミツバチのたてる音や風、雨の音がバック・ミュージックのようにドラマに溶け込んでいて素敵だ。

2014年のカンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた作品で、実に岩波にふさわしい映画だった。
イタリア映画祭2015で上映された作品で映画祭のポスターにもなっている。
最初ポスターに映る少女のあごの部分に付いている物は何?とあまり気にしてもいなかったが、本作を見てわかった。それは蜂...少女は蜂を操ることができるのだ。

神保町 岩波ホールにて
by margot2005 | 2015-08-29 23:06 | Comments(0)