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「オオカミは嘘をつく」

「Big Bad Wolves」2013 イスラエル
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森の中でかくれんぼする一人の少年と二人の少女。鬼になった少年は一人の少女を見つけ、もう一人の少女を探し当てる。しかしそこに少女の姿はなく片方の靴だけが残されていた。やがてそれは凄惨な少女暴行殺人事件へと発展する。
連続殺人事件を捜査する刑事のミッキは高校の宗教学の教師であるドロールを最重要容疑者と断定する。ミッキは同僚と共に不法極まりない取り調べでドロールを追いつめるが、決して口を割ろうとはしない。しかしミッキの拷問とも思える取り調べがYou Tubeに流れ署長に呼ばれた彼は停職処分となる…

ミッキにリオル・アシュケナージ。
ギディにツァヒ・グラッド。
ドロールにロテム・ケイナン。 
ギディの父親ヨラムにドヴ・グリックマン。
ミッキの同僚ラミにメナシェ・ノイ。
署長にドゥヴィール・ベネデック。
馬に乗った男(アラブ人)に「ワールド・オブ・ライズ/2008」のカイス・ナシェフ。
エティにナティ・クルーゲル。
監督、脚本はアハロン・ケシャレス&ナヴォット・パプシャド。

ポスターにあるように...“昔々あるところに幼い女の子がいました...”で始まるのはシャルル・ペローの童話“赤ずきん/Little Red Riding Hood”。で、やはり狼は嘘をつくのだ。

定職処分になったミッキが黙っているワケがない。密かに行動開始したミッキはドロールの家の前に張り込み執拗に追いつめる。しかしそこへ現れたのは他ならぬ被害者である少女の父親ギディ。そしてここからドラマは“Big Bad Wolves”へとまっしぐらに駆け抜ける。

原タイトルの“大きな悪い狼たち”…狼は複数になっているところがミソ。邦題の“オオカミは嘘をつく”はなんとなく結末が予想されてしまうのではないか?と想像したがやはりで…でも全ては語られず見るものに委ねられる。

クエンティン・タランティーノが絶賛したというドラマはかなりの凄まじさ。次に何が起こるのか?と興味津々で息も付けない展開に、エンドロールが始まるやいなや思い切り息をついてしまった。シアターも混んでいたし...。
スーパー級に緊迫したムードの中、ちょっと一休みって感じでユーモアを交える(鼻歌を歌いながらケーキを焼いたり、携帯でママと会話したりして...)辺りは実に上手い。アハロン・ケシャレス&ナヴォット・パプシャドのデビュー作「ザ・マッドネス 狂乱の森/2010」が是非見たいものだ。

ギディが不動産屋エティから買った新しい家はアラブ人が多く住む地域。エティはこのようなアラブ人が多い物騒な地域になぜギディは家を買ったのだろう?と疑問を抱くが、家が売れたことを喜ぶあまり余計な詮索はしない。やがてギディが住み始めた新しい家に馬に乗ったアラブ人が通りかかる。近隣者として挨拶に来たアラブ人に何食わぬ顔で挨拶を交わすギディ。そうギディは新しく買った家の地下室でとんでもない秘密を隠していたから…。

イスラエル人とアラブ人が交わらないのは世界中の人々が知っている現実。ドラマで彼らのよそよそしい態度を見れば一目瞭然。ミッキとアラブ人の遭遇も出てくるが、そのやり取りはぎこちなくて面白い。十字軍の頃からの確執は今だ続くといった様子。

被害者の父親であるギディの執念とも思える行動も然ることながら、突然訪問した父親ヨラムの行動に背筋が凍る。なんと似た親子だろう!と感嘆せずにはいられない。

ヒューマントラストシネマ有楽町にて
by margot2005 | 2014-12-04 00:08 | ヨーロッパ | Comments(0)