「汚(けが)れなき祈り」

「Dupa dealuri」…aka「Beyond the Hills」 2012 /ルーマニア/フランス/ベルギー
a0051234_04033.jpg

アリーナとヴォイキツァは幼い頃に同じ孤児院で過ごした親友同士。ある日、ドイツで暮らしていたヴォイキツァが修道院に住むアリーナを訪ねてくる。その修道院は人里離れた丘の上に建っていた。アリーナは心からヴォイキツァを愛しており、ドイツで一緒に生活しようと願っていたが、ヴォイキツァはルーマニアの地を離れることに躊躇する。それは他でもなく信仰に深く目覚めたことによるものだった。思い通りにならないアリーナは不満を募らせるが、ヴォイキツァからは信仰するよう説得される。しかしアリーナの心が自分ではなく神にあることを感じ始めたヴォイキツァは次第に精神を病んで行く...
a0051234_041102.jpg

a0051234_042256.jpg

a0051234_057442.jpg

a0051234_0571916.jpg

ヴォイキツァにコスミナ・ストラタン。
アリーナにクリスティナ・フルトゥル。
司祭(神父)にヴァレリウ・アンドリウツァ。
修道女長にダナ・タパラガ。
監督、製作、脚本は「4ヶ月、3週と2日/2007」のクリスティアン・ムンジウ。

「4ヶ月、3週と2日/2007」はルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスクが妻と共に処刑される2年前が舞台で、テーマは違法中絶でとてもヘヴィーでツラいドラマだった。本作は“悪魔払い”の儀式で亡くなった一人の女性と、その親友にスポットを当てている。

新天地を求め親友をドイツへと誘うアリーナ。ヴォイキツァは信仰に身を捧げ修道院暮らしがあっていたが、アリーナはそうではない。精神に異常をきたした際入院し、退院後は修道院へ引き取られる。それが悲劇の始まりであった。アリーナは信仰心に薄くヴォイキツァのようにはなれなかったから。彼女が修道院以外のところで暮らしていれば悲劇は起きなかったかも知れない。でもアリーナには暮らす場所がなかった。貧困が招いた結果が哀しい。

宗教というのは自身にとってあまりにも非日常的な世界で、おまけに舞台は東ヨーロッパ。2005年にルーマニアの修道院で実際に起こった事件というのだからますます理解しがたい世界。“悪魔払い”なんて中世の出来事で、映画「エクソシスト」の世界でしかあり得ないし…。
儀式が行われる舞台の修道院周辺は深い雪に埋もれ神秘的だが、シーンはとてもリアルに描かれていて驚く。

神に身を捧げるヴォイキツァと、彼女を愛するレズビアンのアリーナ...このとんでもないシチュエイションが悲劇を招いた哀しいヒューマン・ドラマは152分とかなり長い。でもそれほど長さは感じなかったかな。
ヴォイキツァたちを乗せ、町中を走る車の中で唐突に訪れるラストに絶句した。
ヴォイキツァとアリーナはもちろんのこと、司祭や修道女長も素晴らしいキャスティングで、みな迫真の演技を披露していて、重い、重いドラマながら意外や見応えあった。

ヒューマントラスト有楽町にて(4/26迄上映予定:午前中1回のみ)
[PR]
by margot2005 | 2013-04-21 01:01 | スペイン | Trackback(6) | Comments(0)
トラックバックURL : http://margot2005.exblog.jp/tb/17653698
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 佐藤秀の徒然幻視録 at 2013-04-22 13:50
タイトル : 汚れなき祈り
生きるのが怖いの? 公式サイト。ルーマニア=フランス=ベルギー。原題:Dupa dealuri。英題:Beyond the Hills。タティアナ・ニクレスク・ブラン原作、クリスティアン・ムンジウ監督、コス ...... more
Tracked from 映画的・絵画的・音楽的 at 2013-04-22 17:58
タイトル : 汚れなき祈り
 『汚れなき祈り』をヒューマントラストシネマ有楽町で見ました。 (1)本作は、見る機会の少ないルーマニアの映画だということと(注1)、出演した二人の女優がカンヌ国際映画祭で女優賞を受けたことから(さらに脚本賞も受けました)、見に行ってきました。  本作は、...... more
Tracked from 映画のブログ at 2013-04-22 20:41
タイトル : 『汚れなき祈り』 本当にあった悪魔憑き事件
 【ネタバレ注意】  男と女では愛情に違いがある。男性は得てして浮気者だが、女性は一人の相手を愛し続ける「純愛」を志向する。  ――進化心理学はそう説明する。詳しくはこちらやこちらの記事をお読み...... more
Tracked from もっきぃの映画館でみよう.. at 2013-04-28 12:08
タイトル : 汚れなき祈り 私の愛と神の愛、究極の選択と限界
この春、大きな期待をもってのぞんだ2作品のうちのひとつ『汚(けが)れなき祈り』。期待に応えてくれました。 【序】 まずなぜ期待をもったかなのですが、紹介記事の以下の部分。(実は、この一文ヤヤ誤解を招く表現あり。) 『2005年にルーマニアで起こった事件を題材に...... more
Tracked from rambling rose at 2013-05-13 11:50
タイトル : 汚れなき祈り
修道女として生活するヴォイキツァを訪ねてきたアリーナは彼女に一緒にドイツで暮らす事を提案する。が、なかなか思う様に事が進まず、アリーナはしばらく修道院に身を寄せる事に・・。... more
Tracked from 楽天売れ筋お買い物ランキング at 2015-10-25 01:08
タイトル : 「汚れなき祈り」(2012年、ルーマニア)
「汚れなき祈り」(原題:Dupădealuri)は、2012年公開のルーマニアのドラマ映画です。2005年にルーマニアで起きた事件を元に、人里離れた質素なルーマニア正教会修道院で悪魔祓いの犠牲...... more
<< 「ベラミ 愛を弄ぶ男」 「野蛮なやつら/SAVAGES」 >>