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「明日の空の向こうに」

「Jutro bedzie leper」…aka「Tomorrow Will Be Better」 2011 ポーランド
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監督、脚本、編集に「木漏れ日の家で/2007」のドロタ・ケンジェジャフスカ。

子供が主人公の映画ってあまり観ないのだが、素晴らしい映画「木漏れ日の家で」のドロタ・ケンジェジャフスカの作品ということで観に行った。
映画の中で主人公のペチャ演じる6歳のオレガ・ルィバと、10歳の兄ヴァーシャ役のエウゲヌィ・ルイバ…二人は良く似ていると思ったら本当の兄弟だった。もう一人の少年リャパ役は11歳のアフメド・サルダロフ。オーディションで選ばれた3人は演技初体験だそう。
物語は現代。ポーランドの国境に位置する旧ソ連某国(ロシア)が舞台。この物語が現代とはとても信じられない。彼らには親も家もなく汚い駅舎で生活している。やがて隣国ポーランドに、より良い生活を求め冒険の旅に出る。

主演のオレガ・ルィバの幼気な姿が脳裏に焼き付く。それは演技とは思えないくらい真に迫っている。まるでドキュメンタリーのようにも映る。
3人はポーランドにたどり着き警察に保護される。ペチャは薄汚れたテディベアを抱きしめたり、警察官にすがりつかんばかりの態度を見せるあたりはまだまだ幼い子供。しかしながら旅の途中、市場のおばさんに“とても綺麗だよ!”と言ってパンをせしめたり、結婚式を挙げたばかりの花嫁にまたまた“とても綺麗!”なんて言ってコインをもらうのだ。6歳ながら口が上手いのに驚き。それも生きる手だてだったに違いない。
リャパが足手まといになる幼いペチャを何度か置いて行こうと考える。しかしたった一人の兄弟を置いていくなんて考えられない兄ヴァーシャ。彼すらまだ10歳なのに、たった一人の幼い弟を守ろうとする姿が胸にしみる。

11歳と10歳と6歳の子供だけで国境を越えるという事実はちょっと信じられない。映画だからと思いつつ、ラスト近く国境警備の監視人が見張る中、電気が通された国境のフェンスを超える彼らの姿に唖然とした。
とても身につまされる哀しいドラマだ。おまけにあの大ラスにはいたたまれない気持ちでいっぱいになる。
テーマは全く違うが、過去に「だれのものでもないチェレ/1976」というハンガリー映画を観た時と同じような、とてもとてもセツナイ気分になった。
Internationalタイトルについた“Be Better ”…子供たちが自らBetter Lifeを求め行動する現状が映画ながら身につまされる。

新宿シネマカリテにて
by margot2005 | 2013-02-12 23:07 | ヨーロッパ | Comments(0)