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「思秋期」

「Tyrannosaur」 2011 UK
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怒りをコントロール出来ない男と、ドメスティック・バイオレンスにおびえる女。UK俳優パディ・コンシダインの初長編監督デビュー作品。どこかのwebsiteに“この秋、いぶし銀の輝きに出会う…”と記されていたし、本作のwebsiteにも“この映画に世界は打ちのめされた!”とある。
各国の映画祭で注目を浴び、サンダンス映画祭(監督賞+審査員特別賞)や英国アカデミー賞(新人作品賞)などに輝いた佳作。
監督も素晴らしいが、主演のピーター・ミュランも素晴らしい。
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ジョゼフに「BOY A/2007」「戦火の馬/2011」のピーター・ミュラン。
ハンナに「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙/2011」のオリヴィア・コールマン。
ジェームズに「シャーロック・ホームズ/2009」「アリス・クリードの失踪/2009」「ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-/2010」のエディ・マーサン。
監督、脚本に「ボーン・アルティメイタム/2007」「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!/2007」「ブリッツ/2001」のパディ・コンシダイン。

妻が亡くなり自暴自棄で酒を飲みまくっているジョゼフ。ある日、怒りをコントロールできないジョゼフはバーでもめ事を起こした後一軒のリサイクル・ショップに逃げ込む。店にいたのは信心深い女性のハンナだった。ジョゼフの目から見れば何の不自由もなく幸せそうに映るハンナだが、彼女もまた深い苦しみを抱えていた…

映画のロケ地はイングランド、ヨークシャー。
いきなり店に飛び込んで来た男に“あなたの名前は?”と聞き“ロバート・デ・ニーロだ!”と答える彼に”お茶でもいかがロバート?”なんて粋な会話が出来るのはやはりUK人だなぁと感嘆する。
変なオヤジが突然やって来てロバート・デ・ニーロなんて名乗ったら放り出しても良いのに…
ハンナは敬虔なクリスチャンであり人を癒すことが出来る女性。ジョゼフに頼まれ彼の親友が死の床についた時、祈りを捧げたハンナ。しかしながらハンナを癒す人は誰もいない。ハンナはジョゼフに会うまで夫による虐待をひた隠しに、隠していたから…
ジョゼフとハンナが出会ったことで二人は幸せになれたのだろうか?それは映画のラストを見ればわかる。
ハンナの行為は決して許されることではないが、わたしがもしハンナと同じ立場だったら絶対に彼女と同じ行動を起こすだろうなと思った。絶対に!

「マグダレンの祈り/2002」を監督し脚本も書いたピーター・ミュランの主演映画は初めてみたように思える。ミュランはいつも脇役なのだ。記憶にある限り「マイネーム・イズ・ジョー/1998」意外...。
「BOY A」での職業を超越した人情家のソーシャルワーカー、テリーを演じたミュランを思い出した。
上にも書いたがピーター・ミュランが素晴らしい。最近のミュランはもの静かで温厚なイメージがあるため、自暴自棄の役柄は久しい気がする。でもジョゼフも基本的には善い人なわけ。隣に住む少年のため狂った犬まで殺したのだから...その前に八つ当たりして自分の愛犬も殺しているけど...。
とにかく、ただただ妻の死を受け入れられない…もうちょっと妻に優しくしていたら…なんて後悔ばかりしている男なのだ。
しかし彼が出会ったハンナは、自暴自棄になるなんて考え甘い!と思わせるほど悲惨な生活を送っていた。妻に暴力を振るう夫って最低である。とにかくその男は弱い、弱い人間だからこそ自身が威厳を保つため妻に服従を求めるのだ。最低の男を演じるエディ・マーサンがどんぴしゃの配役で最高。

原タイトルである”ティラノサウルス”についてジョゼフがハンナに説明するシーンがある。
いくら太っているからといっても妻に映画「ジュラシック・パーク」に出てくる恐竜”ティラノサウルス”とネーミングするなんてヒドい夫だ。でもそれって英国人のジョークなのかも知れない。残念なことにジョゼフの”ティラノサウルス”は若き日の写真のみの登場。

邦題の「思秋期」って言葉はあまり使わないので今一度どういった意味なのか調べてみた。“黄昏/晩年/中年”といった意味合いで邦題にかなり納得した次第。
いつもながらUK映画のMusicはナイスだ。The Leisure Societyの“We Were Wasted”なんかには泣けてくる。

新宿 武蔵野館にて(11月中旬まで上映予定)
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by margot2005 | 2012-11-04 21:13 | UK | Trackback(5) | Comments(6)
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「ティラノサウルス」って呼ぶのも愛情の裏返しなんですよね。
そこで素直になればもっと可愛いのにとも思うのですが(苦笑)、不器用なジョセフはそれしか愛情表現ができない。そしてそのことをとても後悔していると思いました。
ハンナと出会って、今度はそんな間違いはしないと思います。
Commented by 真紅 at 2012-11-06 07:49 x
margot2005さん、こんにちは。
この映画、よかったですよね、、今年のベストに入れてしまいそうです。
ピーター・ミュラン、大好きです。巧い俳優ですよね~。
痛々しい映画ですが、最後に希望を感じさせてくれて、後味は悪くなかったですね。
監督の初メガホンとは驚きです。素晴らしい。
Commented by kira at 2012-11-07 23:17 x
こんばんは~。
随分久しぶりのコメントになりましたが、TBを有難うございます。

まさか「ティラノサウルス」が妻のあだ名だとは予想できませんから
この邦題のおかげで見逃さずにすみました(笑)
人生の折り返し点を過ぎて、後悔とそれぞれの"カタチの違う恐怖"がひしと伝わってくる、
そんな作品でしたね!
Commented by margot2005 at 2012-11-11 20:31
rose_chocolatさん、こんばんは。
英国人は粋なジョークが上手いですね。「ティラノサウルス」も裏を返せばそう愛情表現だと感じます。
ハンナとの出会いはジョゼフに限りない癒しを運んだことでしょう。
Commented by margot2005 at 2012-11-11 20:33
真紅さん、こんばんは。
コメントありがとう!
さてピーター・ミュランのファンなのですね。彼はホント素晴らしいUK俳優の一人だと思います。
作ったパディ・コンシダインの豊かな才能と感性に脱帽です。
Commented by margot2005 at 2012-11-11 20:38
kiraさん、こちらこそお久しぶりです。TBだけ飛ばしてしまいました。
>この邦題のおかげで見逃さずにすみました...
そうだったのですか?わたしも予告は殆ど観てないので主演俳優に惹かれて観に行った次第ですが、ピーター・ミュランに圧倒されました。
>"カタチの違う恐怖"...
なるほどその通りです。とにかく素晴らしい作品でした。
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