「ヤコブへの手紙」

「Postia pappi Jaakobille」…aka「Letters to Father Jacob」 2009 フィンランド
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レイラにカリーナ・ハザード。
ヤコブ牧師にヘイッキ・ノウシアイネン。
郵便配達人にユッカ・ケノイネン。
監督はクラウス・ハロ。
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1970年代、フィンランドの片田舎。殺人事件を起こした後、12年間刑務所に収監されていたレイラは模範囚として恩赦を受け出所を許される。そしてある日、住み込みで働く牧師館にやって来る。深い森の中に建つ古い牧師館に暮すヤコブは盲目の牧師だった。ヤコブ牧師はレイラを温かく向かい入れるが、一人暮らしを望んでいた彼女はヤコブ牧師に対しひたすら冷たい態度を取るのだった。彼女に与えられたのは手紙を読んで、返事を書くという仕事だったが、それも面倒くさい。やがてレイラは毎日郵便を届けに来る配達人をもうっとうしく感じ追い払ってしまう...

フィンランド映画をシアターで観たのはおそらく初めてだと思う。アキ・カウリスマキの「街のあかり/2006」はDVDだった。「街のあかり」は鬼才と呼ばれるアキ・カウリスマキの独特の世界で暗いイメージ。こちらの作品はテーマが、テーマだけに、なお暗い地味な、地味な作品ながら秀作であった。

レイラ役のカリーナ・ハザードは多彩な才能を持つ才女らしいが、殺人罪で終身刑の身となり、荒削で無愛想で、感情のかけらも持ち合わせていなそうに見える孤独な女を演じていて上手い。そしてもう一人、孤独だが、温かく慈悲深いヤコブ牧師を演じるヘイッキ・ノウシアイネンも役になりきっている。

上映時間はきわめて短い(75分)。登場人物はレイラ、ヤコブ牧師、そして郵便配達人の3人。舞台は牧師の家と庭(一度だけ村の教会のシーンが入る)のみ。この限られた空間の中で展開される物語はまるで舞台劇を観ているようだった。

身よりもなく、人との接触を避け、世捨人のように生きるレイラに”隣人を自分のように愛しなさい”と諭すヤコブ牧師。長い間、誰にも愛されず、愛想を尽かされたと感じていた彼女が真実を知り、一筋の涙を流すラストは観ているものに限りない感動を与える。私的にはピンと来ない宗教映画ではあるが心動かされる。

舞台となったフィンランドの片田舎。古くて崩れ落ちそうな牧師館や荒れた庭、そして教会…それらが森の中にしっとりと溶け込み、バックに流れるショパンやベートーベンの旋律もよりいっそうストーリーに感動を与えている。
銀座テアトル・シネマにて
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by margot2005 | 2011-02-12 21:57 | スペイン | Trackback(12) | Comments(2)
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Commented by なな at 2011-11-13 15:40 x
こちらにもお邪魔します。

こちらは牧師をしている従兄弟のお勧めでDVDになってから見ました。
クリスチャンでなくても,ヒューマンドラマとしてみても
不思議な感動に癒される作品ですよね。
特にレイラが姉の手紙を読むシーンは涙が止まりませんでした。
それに音楽や映像や,俳優さんの演技や
よい意味でのシンプルさがとても秀逸な作品ですよね。
北欧の映画もなかなかいいなぁ・・・と
これとか,同じフィンランド映画の「4月の涙」とか
スウェーデン映画とか観て思いました。

Commented by margot2005 at 2011-11-23 22:36
ななさん、こちらにも書き込みありがとうございます。
宗教映画はピンと来ないことが多いのですが、この映画はかなり感動いたしました。
確かにヒューマンドラマとしてみても良いでしょうね。素晴らしい人間ドラマであったと感じますわ。

「4月の涙」も心揺さぶられましたね。
北欧の映画って、寒々とした景色の中で、身が引き締まるような、何か訴えるようなものが合って良いなぁ!といつも思います。
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